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Three Roses

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第二十八話 再会した薔薇達その三

「もう少しです」
「時間はあります」 
 ここでだ、セーラはマリーにこう言った。
「ですから」
「時間をかけて」
「これまで以上にです」
「距離を縮めていくべきですね」
「お会いしてお話は出来ますね」
「はい」
 その通りだとだ、マリーはセーラに答えた。
「それは」
「ならです」
「今以上に時間をかけて」
「そのうえで」
「近付いていけばいいです」 
 これがセーラの考えだった。
「徐々に」
「少しずつでも」
「はい」
「ではこのまま」
「そうされて下さい」
「私もそう思うわ。ただ」
 ここでだ、マリアはマリーに囁いた。三人にしか聞こえない様にして。
「旧教にはね」
「気をつけてですね」
「そうしていてね」 
 こう言うのだった。
「ここは」
「はい」
 マリーもマリアのその言葉に頷いた。
「このことについては」
「そう、充分以上にね」
「さもなければ」
「太子はどうされているかしら」
「今は」
 ここでだ、マリーは目だけでだ。マリアだけでなくセーラにも話した。
「その様に」
「そうですか、どうもです」
「あの方は思った以上の方ね」
 セーラにしてもマリアにしてもというのだ。
「ではこの国は油断していると」
「帝国に」
「そうなるかも知れません」
 マリーはこのことは真剣に危惧していた、それを顔にも微かにであるが出している。それはどうしても出てしまうものだった。
「ですから」
「気をつけてね」
 マリアはマリーにこれまで以上に小さな声で囁いた。
「あの方については」
「敵となったなら」
「非常に厄介な方なのは間違いないわ」
「そう思っています」
「貴女も気付いていたのね」
「旧教の巻き返しとです」
 そしてというのだ。
「この国をロートリンゲン家のものとする」
「その二つを共に」
「狙っておられます」
「そう、やはりね」
「そしてです」
「四つの国全てを」
「その様に」
 このこともだ、マリアだけでなくセーラにも話した。
「お考えです」
「やはりそうね」
「ですから」
 それで、とだ。マリーは二人にさらに言った。
「私も気をつけています」
「あの、何かありましたら」
「その時は」
 セーラもマリアもだ、マリーにすぐに言った。それも彼女を気遣う顔で。 
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