Blue Rose
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第三十八話 忍び寄る悪その六
「あの国は」
「そうですよね」
「もう誰でも知ってることだね」
北朝鮮がどういった国かはだ、最早日本で知らぬ者はいないと言っていいだろう。国民皆兵や独裁、粛清だけでなく拉致や核開発等悪い話にはこと欠かない。
「それこそ」
「はい、私でも知ってます」
「そうした国には一切言わないからね」
「あそこで自衛隊を批判している人達は」
「平和って言うならだよ」
岡島は眉を顰めさせて言った。
「それこそね」
「北朝鮮こそがですね」
「問題だよ、何しろいつも戦争だとか言ってるから」
無慈悲な、という冠詞が異常に好きであることも知られている。
「実際にしょっちゅう何かしてるし」
「自衛隊よりも遥かに危険ですね」
「あの国と比べたら」
岡島はこうも言った。
「戦前の日本なんて可愛いものだよ」
「全然違う位に」
「そう、あんなものじゃなかったよ」
戦前の第二次世界大戦を戦っていた頃の日本もというのだ。
「よく同じだって言うけれどね」
「あの人達がですね」
「言葉に困ったら」
批判を受けてその時にだ。
「そう言うけれど」
「どう考えても」
「そう、もうね」
「戦前の日本よりも遥かに酷い」
「あんな階級もなかったらあそこまでおかしな教育や主張をしていないし」
岡島はさらに言った。
「国民皆兵とまではいかなかったから」
「個人崇拝もですね」
「あんな漫画みたいなのはなかったよ」
「銅像やマスゲームも」
「なかったよ、全くね」
昭和帝ご自身が個人崇拝を好まれなかったこともあるという、また当時の日本人もそうした銅像やマスゲームを行う程品性下劣でも悪趣味でもなかったのだろう。
「軍歌を聴いてもわかると思うよ」
「軍歌ですか」
「そう、日本の軍歌をね」
「じゃあ戦前の日本は」
「問題はあったかも知れないよ」
岡島もこのことは否定しなかった。
「けれどね」
「それでも北朝鮮よりはですね」
「ずっとまともな、ましな国家だったよ」
「確かに。私もそう思います」
「そうだね、そしてあの人達はね」
口では平和や民主主義を叫ぶ彼等がだ。
「その北朝鮮が好きだから」
「日本よりもですか」
「元々シンパが多いんだ」
その北朝鮮のだ。
「よど号ハイジャック犯もあの国に亡命したしね」
「よど号って」
「うん、赤軍派か中核派かは覚えていないけれど」
この辺りの記憶は岡島も曖昧だ、もっとも彼はどちらも大して変わりがない馬鹿なテロリスト達だと考えている。
「彼等も共産圏って自称している北朝鮮に行ったし」
「その頃からですか」
「あの人達は北朝鮮が好きなんだ」
「あれっ、それじゃあ」
岡島の今の話から優花はあることに気付いた、そのあることはというと。
「あの人達は過激派ですか」
「赤軍派や中核派のね」
「実は」
「そうだよ、表向き市民団体って言ってるけれど」
「その正体は、ですか」
「そうした場合が多いんだ」
今だに共産主義革命という過去の遺物にしがみついているのだ、日本にはまだそうした者達が存在しているのだ。
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