IS《インフィニット・ストラトス》~鉄と血と華と~
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第三話 忌むべきシステム
前書き
遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。ヘルニアで手術、絶賛入院している私でございます。みなさまもお体にはお気をつけて。
何気無く部屋から出た三日月だが、購買の場所等わかる筈がない。どうしたものかと悩んだ矢先
「ねぇ」
「はい?」
たまたま視界に入ったのは長い金髪にロールのかかった生徒だ。呼び止め振り向くと彼女は三日月を見て目元をひくっと動かし
「な、何故男が此処に!?」
「何処か菓子売ってるところ知らない?」
金髪の少女、『セシリア・オルコット』を無視しそう質問する三日月だが
「その前に私の質問に答えなさい!何故男が此処に居るのですか!?それにその制服!」
勢いよく指を指したのは三日月の制服だ。何処か可笑しいのだろうかと彼は首を傾げる。それから捲し立てるようにセシリアの言葉が続いたが、三日月は面倒くさくなりつつ
「……もういいよ、自分で探すから」
「ちょっ!まだ話は終わって――」
彼女を無視して歩き去っていく三日月であった。
「一体何なのですか!やはり男というのは――」
※
「阿頼耶識……だと……?」
千冬は知っている、その名称を……そしてその名称のなす意味を。
『ちーちゃんも知ってるよね、阿頼耶識システムの事は』
「……ああ。IS適正を持たせるために開発された……成長期の子供にしか施術できず、脊髄に直接特殊な金属端子を取り付ける……悪魔のようなシステムだ」
『流石の束さんも、あのシステムに関しては嫌悪感を覚えたよ』
「何れだけの子供達が犠牲になったか……既にシステムは凍結された筈、だが三夏に阿頼耶識が……」
『そうそう、びっくりだよね。しかもミーくん三回も施術されてたみたいだし』
「!?」
阿頼耶識は脊髄に埋め込まれる端子『ピアス』の数によってISの適正が変化する仕組みであるが、一度に受ける施術で身体と精神に掛かる負担は半端な物ではない。失敗すれば運が良くても再起不能、悪ければ死ぬ。そんな手術を三度も。とても千冬には想像もつかない、三夏は一体どれだけの苦痛を受けたのかと。
「……束、何故三夏を学園《ここ》へ寄越した」
『それはねーミーくんにはやってもらいたい事があるからだよ』
「やってもらいたいこと?……それは――」
何だ、そう言い切る前束が言葉を被せる。
『こればかりはちーちゃんには内緒♪それじゃそろそろ切るねーミーくんの事よろしく!』
ブツンと通話を切られ、胸にもやもやとした感覚が残ったままになった千冬。彼女は今後の事を考え始めるのであった。
「三夏……」
脳裏に過るのは自分の弟……しかし、いまの彼は三夏としてではなく“三日月・オーガス”として此処に居る。本当の事を言うべきか、お前は私の弟だと。しかしそんな都合よく記憶が戻る筈がない、今すぐにでも抱き締めて再会を喜びたい……それなのに。
「私はどうすれば良い……一夏、お前ならどう行動した……」
彼女の声が悲しくも誰の耳にも届かず、その場に響いた。
一方そのころ、千冬と話していた束はというと……
「阿頼耶式……阿頼耶式。ほんと嫌悪感を覚えるシステムだね、無理矢理男にISを使えるようにするなんてさ」
ラボにてコンソールの前で、何やら呟いている束。
「けどそのシステムのお陰でミーくんは力を手に入れた……皮肉なものだねー……」
ふぅと軽いため息を吐いて背もたれに寄りかかり、視線を前に向ける。束が見ているコンソールの画面には三日月のIS、バルバトスのデータが映されていた。
「ミーくんが無茶してバルバトスの“あれ”を外さないか心配だけど、まあ何とかなるよね!」
※
購買を探している三日月は現在、迷子であった。再びさてどうしたものか、と歩きながら考えていると
「きゃあ!」
何やら悲鳴が。声の方を向くと緑色の髪に眼鏡を駆けた女性が書類を落として慌てていた。三日月は自然と身体が動き
「大丈夫?」
「ふえ?」
しゃがみ、一緒に書類を拾い始め、一纏めにし女性に手渡す。
「ん」
「あ、ありがとうございます……えっと、貴方は……」
「俺は三日月・オーガス」
「……三日月・オーガス……あ!男子の新入生ですね!」
「うん」
こくりと頷く三日月。
「ねえ、あんた菓子とか売ってる所知らない?」
「えっと、購買ですか?よければ案内しますけど……」
「それじゃお願い」
心なしか三日月が笑みを浮かべているように見えた。すると女性は何かにはっと気づき、コホンと咳払い。
「それと、“あんた”ではありません。私は『山田真耶』れっきとしたIS学園の教師なんですよ」
「へぇ、先生だったんだ。えっと……ダヤマヤマだっけ」
「“やまだまや”です!」
「どっちでもいいや、それよりその購買に案内してほしいな」
変わった少年だと真耶はため息を吐き、仕方なく三日月を購買へと連れていくこと。道中会話が一切なく、真耶は非常に気まずい空気立ったのは別の話だ。
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