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ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜

作者:黒 蓮
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第四話

「よぉ、古城」荒々しく部屋に入ってきたのは牙城だ。
「なんで、お前がいるんだ。クソ親父」
「古城くーん?あれ?あなた達こないだの可愛い娘達じゃなーい」古城の前に座る雪菜と紗矢華を見て深森が興奮する。
「ったくあんたは…」
「で、どっちが本命なの?もうヤった?もしかして家族が増えちゃう?私もうすぐおばあちゃんになっちゃうのぉ?」
「増えねーし、ならねーよ!毎回そのノリするなアンタは!」突然の両親の訪問で体力を奪われる古城。
「お2人は…いえ、先輩のご両親はどうしてここに?」放っておいては埒が明かないと雪菜が話を切り出す。
「もう、前も言ったけど私のことはお義母さんと呼んでくれていいのよ?」
「それなんだけどな、古城にお見合いの話が来てるんでな」そう言って牙城は分厚い紙の束を古城に投げつける。
「「「お見合い!?」」」古城本人だけでなく雪菜と紗矢華までもが大きな声を出す。
「なんでいきなりそんな話になってるんだよ。うちはそんな大層な家系でもないだろ?」
「バカか、お前は。国を持ってる第四真祖だぞ?結婚したいやつはその辺にたくさんいる。とりあえずその中から自分の好きそうなやつを探してそいつとお見合いしてこい」
古城が第四真祖だということを世間に公表し絃神島が夜の帝国となってからというもの、この手の話が連日連夜牙城と深森のところに来ているのだ。
「そんないきなり言われても決めれるわけないだろ!?」
「古城くんはそう言うと思ったからちゃんといい人とお見合い組んでるわよ。最後のページの子なんだけど」
「最後…って、浅葱じゃねーか!」最後のページを見て驚いた古城がまたもや両親にツッコミを入れる。
「藍羽先輩!?」
「暁 古城の浮気相手!?」今まで黙っていた雪菜と紗矢華がまたしても大声をあげる。
「そんな怖い顔してどうした?そこの中学生ちゃんと高校生ちゃんは。もしかしてジェラシってるのか?」
「「ジェラシってません!!」」声を合わせて反論する2人。
「ムキになるところが怪しいねー。いいねー、恋愛。青春だよねー。やっべぇ、甘酸っぺぇー!うわぁぁぁ」スイッチの入った牙城は叫びながらよく分からないことを言っている。
「牙城くん、話が済んだならうるさいし恥ずかしいから帰ってよー」見かねた凪沙が怒り出し牙城を玄関の方へと押していく。
「あ、そうだ。私達当日は用事があって行けないから誰か代役を立てて言ってね?じゃあ、私達帰るわねー」
「ちょっ!待てよ!!」古城の呼びかけも虚しく騒がしい両親は帰って行った
「最悪だ…なんで浅葱と…あいつ絶対嫌がってるだろ…」
「暁 古城、やっぱりあなたはダメ真祖ね」
「そうですね、先輩はダメな人です」女心が分からないところを責められているとは知らずにただ項垂れる古城であった──

━━浅葱とのお見合い当日━━
「なんか公務とかでバタバタしてて結局浅葱のやつに連絡出来ずじまいだったな、会ったときにどんな顔されるんだか…」
「先輩?早くしないと先方を待たせてしまいますよ?」
「ああ、悪いって、なんでお前らはそんな綺麗な格好してるんだ?」
「なんでって、アナタのお見合いに代理人としてついて行くからに決まってるでしょう?」当然のように紗矢華が答える。
「代理人って姫柊と煌坂なのか!?」
「当たり前です。先輩の監視役ですから」
「ほら、モタモタしないでさっさと行きなさいよ」
「マジかよ…」反論することよりも前途多難な自分のお見合いをどう乗り切るか必死に考える古城だった。
そうやって悩んでいる間に時間は過ぎてしまい気づけば約束の時間になっていた。
「先輩?そろそろ席につかないと」
「ああ、分かった。行くから先に行っておいてくれ」
「すぐに来てくださいね?」少し時間を開けて、覚悟を決めた古城は普段絶対に使わないほど豪勢なレストランに入っていく。
「こ、こんばんは。あ、暁 古城です。」
「そんなに堅くならなくてもいいんだよ、古城くん」
「お久しぶりです古城さん」ガチガチに緊張した古城を迎えたのは浅葱の両親の菫と仙斎だ。
「あれ、浅葱…浅葱さんはいらっしゃらないんですか?」
「呼び捨てで構わないよ。多分外にいるだろうから呼んできてくれるかい?」緊張する古城とは裏腹に仙斎は落ち着いている。
「わかりました、じゃあオレ呼んできます」
「ありがとう。古城くん、以前私が言ったことを覚えているかい?」
「前にですか。なんのことですか?」
「いや、覚えていないならいいんだよ」
外に出た古城は1通り浅葱を探したが近くにはおらず、ふと案内板を見ると屋上にテラスのようなものがあるようだった。

「浅葱?」
「古城?よくここにいるって分かったわね」
「まあ、なんとなくな」絃神島の景色を眺める浅葱には薄い色の着物がよく似合っていた。
「早く行かないと、親父さん達が待ってるぞ?」
「ねぇ、古城」古城の言葉は浅葱の耳には届いていないようだった。
「どうかしたか?」
「ごめんね、私のせいで」絃神島の遠くの水平線を見てそう言う浅葱に、古城は浅葱の言いたいことがなんとなく分かった気がした。
「いいんだよ、別に。色んな人のおかげで不自由はしてないしな」
浅葱は言わないだけで、自分のせいで古城が第四真祖であることを世の中にバラすことになったことを今でも後悔しているのだ。
「私、古城のために戦おうって思ったのに結局古城は普通の生活を送れなくなっちゃって…」泣きそうになりながら浅葱が言う。
「だからいいって、この体質になったときから普通になんて無理な話だったんだよ。それにあの時はああするしかなかった」
「でも…」
「オレは浅葱の気持ちだけで十分嬉しいし、泣いてるお前より笑ってるお前の方がいいと思うぞ?」無意識に浅葱の顔を覗き込む古城。

暫く沈黙が続いたあと──
浅葱はいきなり古城の唇に自分の唇を重ねた。
それはキスと言うにはあまりにも不格好で唇を押し付けただけだったが、浅葱の精一杯のアプローチだった。
「浅葱…」古城は驚きに目を見開く。
「ねぇ、古城。私ね、古城と初めて会ったときから古城のことが好きなの」
「病院で泣いてた知らない私に声をかけてくれて、不器用な私に友達が出来るようになったのも古城のおかげ。私、色々助けてもらってる古城の力になりたいの」
「浅葱…」いきなりの浅葱の告白にどうしていいのかわからない古城だが、仙斎と初めて会ったときの会話を思い出していた。
──浅葱が望んだとき、彼女の傍にいてやって欲しい──
古城が何を言おうか迷っていると
「はぁ…いいわ、とりあえずレストランに戻りましょ。(古城のヘタレ…)」
「え、なんか言ったか?」最後になにか重要なことを言われた気がして聞き直す古城。
「別に、ほら行くわよ」そさくさと先を歩いていく浅葱。
「なあ、浅葱」このままでは彼女を傷つけることになると呼び止める古城。
「オレ、まだ自分のこともまともに出来ないし浅葱の気持ちに答えれるだけの権利がないと思うんだ。近い将来自分に自信が出来たらちゃんと返事をする。だから、少しの間待っててくれないか?」
「分かった、今はそれでよしとしといてあげるわ」浅葱は満足そうに笑うとレストランに入っていった。
その後6人で談笑しながら食事をした帰り際
「仙斎さん、まだこんな口を聞くのは早いかもしれないですけど浅葱のことは任せてください」
「そうか、期待しておくとするよ古城くん」仙斎は満足そうに笑うと菫の運転する車に乗り込んでいった。
後部座席の窓が開き浅葱が顔を出した。
「古城、あんたそろそろ学校来ないと凪沙ちゃんや姫柊さんと同じ学年になるわよ?」
「マジか…それだけは勘弁だな、明日は行くよ」
「じゃあ、また明日ね」
「ああ」そう言って各々帰路についた。
「先輩、藍羽先輩となにかあったんですか?」
「そうよ、なかなか帰ってこなかったから心配したのよ?」空気を読んで黙っていた2人が口を開く。
「まあ、ちょっとな」
「ちょっとってなんなのよ、言いなさいよ暁 古城!」はぐらかす古城に食ってかかる紗矢華。
「紗矢華さん、こんな所で暴れないでください」


「第四真祖、暁 古城か」そんないつも通りの3人を遠くのビルから眺めるものが一人いた── 
 

 
後書き
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