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ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜

作者:黒 蓮
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第3話

「熱い…」2月も終わろうとしている、普通なら真冬と言っていい時期だがここは常夏の島だ。平均気温は20度を下回ることはない。
第四真祖になったこの数年で吸血鬼の生活には慣れてきたものの、昼間の日光だけはまだ古城を悩ませている。
「………」
「で、今日はこれから何の予定だった?」
「………」
「おい、煌坂」
「………」
「煌坂!」反応のない紗矢華の肩をいきなり持ち身体を大きく揺する古城。
「はいっ!ってえぇぇぇっ!?」ぼうっとしていた所をいきなり掴まれて真っ赤になる紗矢華。
「心ここにあらずって感じだったけど、大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ!そんなことより早く離しなさいよ、この変態真祖!」興奮した紗矢華の叫びが街に谺響する。
「変態?」
「真祖?」周りの人が口々に紗矢華の台詞を繰り返す。
「やばい…逃げるぞ」紗矢華の手を握り走り出す古城。
「ちょっと!なに……」

「これだけ離れれば大丈夫か、それにしても理不尽だろ。オレはお前を心配してだな」
「……」
「煌坂?」紗矢華は古城が握っている自分の手を見ているだけで返事をしない。
「い、いつまで握ってるつもりなのよ!暁 古城!死にたいの?殺されたいの!?」
「ああ、悪かったよ」また紗矢華が物騒なことを言い出しても困るので素直に離す古城。
「で、予定は?」
「二時間後に3つの国との面会があるわ、どこも今は小さな国だけど実力はある国よ」
「3つか、まだマシな方だな。そのあとは?」
「そのあとは、なにもないわよ?」
「え、なんかいつもみたいにわけが分からない書類の山と向き合ったりしなくていいのか?」
「それは、もう私が終わらせておいてあげたわよ」
「助かった…」古城は心の底から安堵し感謝を述べる。
「別にあなたのためじゃないんだけど!?ゆ、雪菜が少しでも休めればと思って!」
「そっか、姫柊のためか」
「そうよ」
「お前、やっぱりいいやつだな。でも無理しすぎるなよ?お前に倒れられたら困るしな」
「暁 古城…」古城の何気ない一言で紗矢華の顔は真っ赤になった。
「じゃあ、行くか」そんなことは露知らず公務に向かう古城だった──


「お疲れ様、暁 古城」
「あぁ、ありがとう煌坂。といってもまた座ってただけなんだけどな」
「雪菜も凪沙ちゃんも待ってるだろうし帰る?」弱気になる古城を察してか話題を変える紗矢華。
「そうだな。連絡…っていっても携帯まだ買ってなかったな、まあいいか」
「連絡する暇があるなら、すぐに帰ってあげた方がいいんじゃない?」
「それもそうか。行こう煌坂」
それから特に会話もなく2人は微妙な距離感で街に紛れていった。

「ただいまー、凪沙ー?」
「お、お邪魔します」
「あれ、留守か?」
「雪菜もいないみたい」丁寧に靴を揃えていた紗矢華が言う。
「まあ、夕飯の買い出しにでも行ったんだろ。オレは風呂に入るけど煌坂はどうする?」
「どうする?い、一緒に入れってこと!?」
「あのなぁ、そんな訳あるか!普通に煌坂はなにするのかって聞いただけだよ」呆れた様子な古城。
「私は荷物の整理をするわ、今日からここに住むことになるし。」
「そっか。何か分からないことがあったら呼んでくれ」
「わかったわ」

「はぁ…」古城は風呂で束の間の静かな時間を過ごし、ここ1週間を思い出していた。
「オレも色々勉強しないといけないんだろうけど、なにをすればいいんだ?とりあえず那月ちゃんかラ・フォリアにでも聞いてみるか」
身体を洗いのぼせそうになったところで風呂場を出た古城は上の着替えを忘れてきたことに気づいた。
「煌坂ー?」
「なにか呼んだ?」意外にも近くにいたらしい紗矢華の足音がする。
「あのさ、悪いんだ が…」
「ふぇぇぇぇっ!?」古城が言い終わらないうちに紗矢華が風呂場の扉を開けた。
「ちょっ!煌坂!普通いきなり風呂場のドア開けるか?」そこには腰にタオルを巻いただけの古城が立っていた。
「あ、その、えっと、、、い、いつまでそのままでいるつもりなの!この第四性犯罪者!」紗矢華が暴れようとする。
「待て煌坂!こんな狭いところで暴れたら!」古城の不安通りに濡れた床に足を滑らせ前に転ける古城。
「うわぁっ!」
「きゃっ!」


「大丈夫か?煌坂…」目を開けると倒れた紗矢華の上に覆い被さるような体勢になっている古城。
「え…あ…」
「わ、悪い!すぐどくから!」
「あ、暁 古城?」慌てて立とうとする古城の首に手を回し立たせず自分に引き寄せる紗矢華。
「き、煌坂?」
「その…もしよかったらなんだけど…私の血を吸わせてあげてもいいわよ…」そう言われて初めて古城は自分が鼻から鼻血を出していたことに気づいた。
古城がどうすればいいか迷っている間に紗矢華の手の力はどんどん強くなり2人の距離は縮まっていく。
「煌坂」我慢の限界がきた古城が確認のために紗矢華の名前を呼ぶ。
紗矢華は肯定の意を示すかのように何も言わずに首元を古城の方に向けた──



「先輩?」
「古城くん?」聞き慣れた声に名前を呼ばれ頭をあげる古城。
「ひ、姫柊に凪沙!?」
「雪菜!?」
「お2人ともなに、してるんですか?」冷ややかな目で雪菜が二人を見つめる。
「違うんだ姫柊!これは事故で」
「そ、そうよ雪菜。暁 古城が転んだから」
「凪沙ちゃん、晩御飯の支度をお願いします。先輩と紗矢華さんはこちらに」必死に言い訳をする2人には目もくれず雪菜は2人を古城の部屋に連れていく。
「とりあえず、2人ともそこに正座してください」
「「はい」」こうなったら雪菜が止まらないことを知っている2人は諦めて正座するのであった──

その後暁家の食卓は凪沙も一言も話せないほど険悪なムードだった。

ピンポーン♪

「なにかな、私行ってくるね」雰囲気に耐えきれなくなった凪沙が逃げるように玄関に出ていく。
「凪沙、久しぶりだな。元気にしてたか?」
「牙城くんに深森ちゃん!?」
「古城のやつはいるか?」そう言うと牙城は部屋に入っていった── 
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