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Three Roses

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第二十七話 戦いのはじまりその十一

「長生きされて欲しいな」
「全くだ、もっとな」
「長生きしてもらいたいよ」
「折角王様になって頂くんだ」
「それならだ」
 是非にというのだ。
「長生きされて欲しい」
「本当にそうだな」
「もっともっと」
「長生きして欲しいよ」
「お若いというかまだ子供であられるんだろ」 
 新王の年齢の話にもなった。
「今度の王様は」
「ああ、そうらしいな」
「まだ子供らしいぞ」
「それも小さいな」
「そうした方らしいぞ」
「子供はな」
 例え王であってもというのだ。
「すぐに、だからな」
「おい、それは言うな」
「不吉だぞ」
 すぐにだ、他の者が言った者に注意した。
「長生きされてくれないと困る」
「今度の王様こそはな」
「わしもわかってるけれどな」 
 だがそれでもという返事だった。
「それでもな」
「だから言うな」
「言うと本当になりかねないだろ」
「言葉には出すな」
「絶対にだ」
「そこは気をつけろ」
「わかった」
 彼もこう返事するしかなかった。
「言葉はな」
「出したらだよ」
「それが実際になったりするんだよ」
「不思議なことにな」
「神様か悪魔の仕業か知らないが」
 それでもというのだ。
「なるからな」
「言うな」
「絶対にな」
 こうした話をするのだった、民達は。だがその話を自身の胸で聞いてもだった。太子は笑ってこう言った。
「そうかも知れないがな」
「常にですね」
「そうなるとも限らないですね」
「出した言葉が現実になる」
「そうかといいますと」
「そうだ、そうなる時もあればだ」
 太子は馬車の中にいた、その中で彼の側近達と話をしていた。馬車は帝国の太子のものでありその立場を思わせる見事なものだった。
「そうもならない時もある」
「そこは、ですね」
「わからない」
「神の思し召し故に」
「言葉は確かに力がある」
 太子もこのことは否定しない。
「それはな、しかしだ」
「常にですね」
「神がそれを受けられるとは限らない」
「悪魔にしても」
「置かれるかも知れないですね」
「そうだ、言葉を過度に恐れることもない」 
 それこそ特にというのだ。 
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