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Blue Rose

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第三十七話 生まれた陰その九

「ここも佐世保市にあるけれど」
「港の方からは離れてるからな」
「そう、まだね」
「行くのが楽だな」
「まだね」
「そうだな、けれどな」
 自分が今度来た時はとだ、龍馬は言うのだ。
「佐世保にな」
「あえてなのね」
「行こうな」
「確かに。私もね」 
 優花自身もう行った。
「佐世保市には殆ど行ってないから」
「それじゃあ行こうな」
「その時はね」
「海自さんにアメリカ軍もいてな」
「アメリカ海軍ね」
「あの人達も観ような」
「佐世保の人達は紳士なのよね」
 佐世保にいるアメリカ軍の将兵達はというのだ。
「横須賀や厚木もそうらしいわね」
「海軍は穏やか人多いっていうな」
「礼儀正しくね」
「俺実際に佐世保に行った時にな」
 龍馬は以前行った時のことを話した、その佐世保の。
「アメリカ軍の水兵さん達に会ってハローって言ったら笑顔でおはようって言われたよ」
「そこジョーク入ってるわね」
「そうだよな、そういうの観る為にな」
「ええ、佐世保にね」
「行こうな」
「それじゃあ」
 二人で笑顔でこうしたことも話してだった、そして。
 手を振り合ってそうして別れた、優花はその後で駅の方に行って電車に乗った。だがその電車の同じ車両にだった。
 衝夫がいた、隣の席には山羊みたいな髭を生やした細長い顔で半分白髪になっている細い目の男がいた。
 男は衝夫にだ、こう言った。
「しかし佐世保は」
「全くですね」 
 衝夫も不機嫌な顔で応えた。
「自衛隊が偉そうにしていて」
「全くです」
「嫌な場所です」
「自衛隊なんてものはです」
 男は言う。
「いらないですか」
「軍隊なんてものは」
「憲法違反なんですよ」
「その憲法違反の連中がのさばる街とか」
「あってはならないですからね」
「米帝の軍隊もいて」
 衝夫の方も言う、汚物を語る言葉だった。
「あの街は何とかしないといけないですね」
「そうですね、しかし」
「しかし?」
「私が新聞に書いてやりますから」
 絶対にというのだった、衝夫に。
「安心して下さい」
「そうしてくれますか」
「長崎現代新聞はです」 
 それこそというのだ。
「市民の為の新聞ですから」
「自衛隊、そして米帝には」
「断固として向かいます」
「だから今日のデモもですね」
「報道します」
 絶対にという返事だった。
「彼等の立場に立って」
「鍛治元泰市郎の名前にかけてですね」
「そうします、何しろ俺はですよ」
「ええ、ずっとでしたよね」
「平和運動をしてきたんですよ、慰安婦の方々にも」
 その実在は確かであるが実態は『伝説』とは全く違うという。果たして彼女達を拉致していた赤い腕章で車に乗ってやって来た憲兵達とは何者であろうか。日本軍の憲兵の腕章は白地に黒で憲兵と書かれているのだが。 
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