Ｂｌｕｅ　Ｒｏｓｅ

「それは」
「それは気にするなよ」
　龍馬も彼が持っているよい資質の一つを出した、おおらかさを。
「御前はいつもそう言うけれどな」
「それでもなの」
「長い付き合いだろ」　
　深いともだ、龍馬は言葉の中に入れていた。出してはいないが。
「それじゃあな」
「いいのね」
「友達だったらな」
「そうした時に助けることは」
「当然だよ、御前も俺を助けてくれただろ」　
　それこそ幼い頃からだ。
「何度もな」
「だからなのね」
「いいんだよ」
　微笑みのままでの言葉だった。
「お互い様だからな」
「じゃあ」
「まあそんな時が来なかったらいいな」
「大変な時は」
「ああ、ないに限るさ」
　今度は明るく笑って言った。
「やっぱりそうだろ」
「ええ、どうしてもね」
「本当にな」
「世の中何もないことが一番ね」
「絶対にあるけれどな」
　何かしらのアクシデントやトラブルがとだ、龍馬はこのこともわかっていた。世界はそうしたものでも満ちていることがわかってくる年齢ということか。
「大事な事態はな」
「出来るだけね」
「ないに限るな」
「本当にそうよね」　
　優花もこう言った。
「そうしたことは」
「そうだよな、けれどな」
「何かあったら」
「その時はな」
　龍馬はまた優花に言った。
「俺も優子さんもな」
「すぐになのね」
「駆け付けてくるな」
「私も。龍馬達に何かあったら」　
　優花も龍馬に言う。
「すぐにでもね」
「悪いな」
「だからそれは」
「お互い様だったな」
「そうよ、言わないでね」
　笑って応えた優花だった、二人はハウステンボスの中にいてそうしたことも話して楽しんだ。そしてだった。
　別れの時になってだ、龍馬はそのハウステンボスの出入り口のところで優花を見送ってこう言った。
「じゃあな」
「ええ、またな」
「また来るな」
「待ってるわね」
「今度は佐世保に行かないか？」
「長崎じゃなくて？」
「ああ、あそこにな」
　こう優花に言うのだった。
「行こうな」
「長崎はいいの」
「ちょっと海自さんの基地も観ないか？」
　二人でというのだ。
「御前は長崎はいつも観てるだろ」
「住んでいるしね」
　現在系でだ、優花の場合は。
「もういつもね、休日も時間があったら」
「長崎を回ってるんだな」
「そうしてるわ、グラバー園とか中華街とかめがね橋とか」
「だったらな」
「佐世保なのね」
「そこに行こうな、佐世保はあまり行ってないだろ」
「ええ、遠いから」
　長崎と佐世保は同じ長崎県にあるが離れている、北と南で。その行き来には同じ県にしては結構な時間がかかるのだ。