IS 輝き続ける光
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幕間 とある少女の独自
私は―――英雄に出会った。
突然、IS学園を襲撃した怪物。私はそのど真ん中に居た。
クラス別代表者戦。その4組の代表として3組の代表と戦っていた時にあの人は現れた。
出来る事なら私も力になりたかったけど、怪物に恐怖した私は足手まといになると悟った。
3組の子を引きずりようにピットに引き込むとモニターに映っていた戦いに心を奪われた。
まるで龍のような怪物に恐れることなく向かい、拳をふるい叩きつけられても怯む事無く進み続ける姿に
携えた剣の輝くは美しく、それの残光は流れ星。
「―――カ、カッコいい……」
心からの言葉が溢れだし口から漏れた。幼い頃に見たテレビの中で怪獣や侵略宇宙人を倒す光の巨人のように、鮮烈に、強烈に、凄まじく胸へと刻み込まれていくそれは次第に強い感情になっていく。
絶望に打ちひしがれていた自分を、そっと優しく希望と夢に溢れる世界に救い上げてくれた巨人の姿に酷く似ていた。
「霧雨 閃輝……っ私は…」
その後の言葉は中々でなかった、言葉にしたいが酷く烏滸がましい気がして言ってはいけない気がしていた。だから封じ込めて、唯々映し出されている英雄の姿を目に焼き付け続けていた……そして彼は振り返りながら剣を収め彼が飛び出したピット、即ち私が避難したピットへと戻って来た。如何したら良いのか解らず唯々慌てていた。
彼はあんな激闘をしたというのにまるで答えていない、準備運動でも終えたように息を吐きつつこちらを見た。慌てている私は見られている事が分かると更に頭がこんがらがったが感謝の意を示したかった為思いっきり頭を下げた、傍から見たら土下座にしか見えないような物だった、本当に見てくれているのかも解らない物を彼は私の肩を優しく叩いてその場を去って行った。その行為が私には酷くクールでイケていると感じられた。
「光の……剣士……」
その後は軽い事情聴取をされたのち解放され私は部屋に戻ると泥のように眠ってしまった。酷く緊張していたからだろう、目を覚ますと翌日になっていた。学内端末を確認してみると本日の授業は無しになっている事が解った、まああんなことがあったら調子にもなるかと納得して一先ずシャワーを浴びた。ご飯を食べに行きたかったが昨日はお風呂に入っていなかっただろうし流石に乙女としては気になる。
「昨日のあれ怖かったよねぇ……」
「本当本当……なんなんだったろうあの化け物……」
シャワーを浴びてから食堂へと入るとそこでも矢張り昨日の出来事で持ちきりになっていた。当然と言えば当然の事だろう、この科学絶頂の時代にあんな特撮に出て来そうな怪物が出てくるなんて誰もが予想なんてしない、しかし思い出してみると本当に光の巨人の敵として出て来そうなデザインだった。定食を受け取りながらそんなことを考えて席に着くと周囲の席からの声が聞こえてくる。
「あの怪物、霧雨君が倒してって本当なの?」
「本当本当!新聞部も写真を撮ってるし本当よ、怪物が出て来たのを見て飛び出して3組と4組の子を救い出したんだって!」
「へ~本当に物語みた~い!!」
何処か誇張表現されているが大体あっている。救い出したというか戦うのに邪魔だからどいたというのが正しいだろうが。そしてなんとなく私はこの話に巻き込まれると偉い事になると直感しさっさとご飯を掻き込んで食堂を飛び出した、後からクラスメイトの本音に聞いた話では食堂に居た3組の代表の子はもみくちゃにされながら話を聞かれたらしい、脱出して正解だった。
授業も休みという事でどうやって過ごそうかと思ったが以前にネット通販で買った小説全巻シリーズ、『竜の戦士』があった。丁度良いからあれを読破してやろうと思い部屋へと戻ろう廊下を歩いていた時その途中の曲がり角で向こう側から来た人とぶつかってしまった。
「キャッ!!」
「おっと」
倒れ込んだ……はずだったが気づけば自分は普通に立っていた、確かにぶつかって倒れたと思っていたのに。
「悪かったな、考え事をしてたもんでな」
「い、いえこっちこそっ……!?」
ぶつかったことを謝罪するとそこにいたのは先日怪物を倒した霧雨 閃輝その人だった。昨日事が鮮明にフラッシュバックし顔が熱くなっているのが解る、小さな声で大丈夫だというと彼はそうか、じゃあな腹減ってるで。と食堂へと向かって歩き出そうとするがここで食堂の事を思い出した。今食堂は先日の事で話題沸騰中だ、そんな所に彼が行ったら大変な事になる。伝えなければ……!ばっと伸ばした手は閃輝の上着の裾をきゅっと握った。それに彼は不機嫌そうにまだ何かと言った。
「あ、あの……い、今食堂は……行かない方が……良いですよ。昨日の、事で、凄い盛り上がってます……」
「何っ?……ちゃ~確かに考えてみれば当然か」
困ったように額に手を当ててどうするかと呟く。閃輝は本日は休みで食事が終わったら部屋で大人しく過ごそうと思っていたが食事が出来ないのは痛い。自分で作ろうにも食材など持ち合わせていない、咲夜は本社への連絡と報告で居ない……。
「あ、あのぉ!!わ、私の部屋にお、大きめのカップ麺ならありますけど……よ、良ければ食べますかっ!?」
「……良いのか?」
「は、はひゅい!!わ、私昨日助けて貰ったからその、そ、そのそのお礼って訳じゃないですけど……!!何かしたくて……!!」
真っ赤になりながらも必死に気持ちを伝えてみる、もう顔が高熱でも出している時のように熱い。閃輝は一瞬考えるようなそぶりをする、そして彼女に下心などは無く本心からそう思っている事と自分に対するあこがれの様な物も察した。純粋な思い、それを理解し可笑しな事はしないだろうと納得した。
「なら貰ってもいいか」
「は、はい!!!」
この後の事はよく覚えていない。部屋の外で待っている彼にカップ麺を渡すと、彼は笑いながらお礼を言って去っていくと私はベットに飛び込んでゴロゴロと転がりながら興奮と羞恥に燃えていた。
「……~~~ッ!!!!如何しちゃったの私……こ、これじゃあ―――
恋、しちゃったみたいじゃない……!?!??」
1年4組、更識 簪。それは、生まれた初めての恋心だった。
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