この素晴らしいめぐみんに祝福を!
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この素晴らしい寝覚めに祝福を!
「…ズマ、…てください…」
どこかから声が聞こえる。夢の続きかもしれない。
俺はぼんやりそう思い、再び眠りの世界に身を委ねた。
すると、今度は体を何者かに揺すられる。
「・・・ズマ、カズマ!起きてください!」
・・・この声の主が俺の安眠を妨害する大罪人なのだろうか。場合によってはとっちめてやろう。
俺はそう決意してうっすら目を開けた。
まず視界に飛び込んで来たのは、さらさらの黒髪。艶がかったそれは、ショートに切り揃えられ、耳の前だけ少し垂れている。
次に目を引くのは、その真っ赤な瞳。ランランと光を放つそれは、見るものを惹き付けてやまない。
目鼻立ちも整ったその少女は、まさにゲームやアニメに出てくる二次元美少女のようだ。
ただの引きこもりニートゲーマーである俺が、こんな美少女に起こされる、だって?天地がひっくり返ってもあり得ない話だ。
残念だがこれは夢だろうと、俺はまた目を閉じる。
すると、今度は強く揺すられた。夢とはいえ役得役得。
俺が幸せを噛み締めていると、みたび声がする。
「まったく、カズマは遅起きですね!こんなんだからいつまでたっても貧弱なままなのです」
「貧弱とは失礼な。日々を健康に過ごせれば十分だろ?」
俺はムッとして、目を閉じたまま反論した。
「いえ、カズマは健康どころか何度も死んでるじゃないですか…」
「死んでる?いや、現に俺はこうしてピンピンと…」
そこで俺はハッとした。そうだよ、俺何度も死んでるじゃないか。
俺の脳裏を、冬将軍に斬られた瞬間やコボルトに撲殺された瞬間、そして会うたびに優しく声を掛けてくれるエリス様の姿が駆け巡る。
無性に懐かしい気持ちになりながら、俺は目を開けた。
「ん・・・おはよう、めぐみん」
俺は先程まで俺を起こそうとしていた少女に声を掛けた。
「あ、やっと起きましたね。まったく、寝ぼけるのも大概にして欲しいですよ」
めぐみんはそう答えた。
そう、この少女の名はめぐみん。愛称ではなく本名だというのがポイントである。
見た目は文句なしなのだが、少々厨ニ病なのと、爆裂狂なのが玉に傷である。
まぁ最近はそれも可愛く思えてくるから、慣れというのは恐ろしい。
そして、このめぐみんの所属するパーティーのリーダーは何を隠そうこの俺、佐藤和真である。
詳細は省くが、不幸にも若くして死んだ俺は駄女神の導きで異世界に転生。その地でモンスター退治やらで稼ぐ冒険者となる。
そしていろいろあって俺達のパーティーは数多の大物賞金首を葬り、街でも指折りの金持ちへと成り上がったのである。以上、雑な説明、終了!
俺が誰に向けてかよく分からない自己紹介にいそしんでいると、めぐみんがそわそわしながら口を開いた。
「カズマ、カズマ。今日は少し遠くまで行ってもいいですか?爆裂魔法を撃ち込みたい場所があるのです」
「ああ、別にいいけど・・・いや、ちょっと待て。また古城とかだったりしないだろうな?」
「大丈夫です。今回はちゃんとした場所ですよ」
デュラハンの一件を思い出した俺が念押しするが、めぐみんはしっかり否定した。
「うむ、なら良いだろう。着替えて朝の爆裂と洒落込むか!」
俺がそう言って右手をサムズアップすると、めぐみんも親指を立てた。
「カズマも大分爆裂道が分かってきましたね!」
「おうよ!誰が毎日お前の日課に付き合ってると思ってるんだ?」
「ですね!では行きますか!」
そう言うが早いか、めぐみんはスキップしながら部屋を出ていった。よほど爆裂魔法を撃つのが楽しみなのだろう。
俺は苦笑しながら、着替えようとジャージのファスナーに手をかけた。
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