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真田十勇士

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巻ノ七十二 太閤乱心その六

「あの者達だけか」
「真田殿と」
「十勇士じゃ」
「あの御仁とですな」
「おらぬな、しかし真田殿はな」
「はい、伊勢に行かれ」
 これも秀吉の命であることはわかっている。
「今は」
「そうじゃ、どうしたものか」
「殿、ここはです」
 柳生がだった、家康に行ってきた。
「真田殿にお願いしてみますか」
「伊勢におる、か」
「関白様のお命だけでもというのなら」
「お救いしてじゃな」
「せめて何処かで人知れず」 
 生きてもらいたいというのだ、秀次に。
「そうされては」
「そうじゃな、では源次郎殿達に変装出来る者達をじゃな」
「伊勢にすぐに送り」
「そしてじゃな」
「はい、身代わりとなっている間にです」
 まさにその間にというのだ。
「そして真田殿と十勇士にです」
「高野山に行ってもらい」
「関白様を救って頂きましょう」
「それしかないか」
 家康は袖の中で腕を組み考え込んだ、そのうえでだった。
 考えつつ目を閉じていたがその目を開いてだ、家臣達に答えた。
「よし、決めた」
「では」
「すぐに」
「半蔵」
 即座に服部に声をかけた、彼に顔を向けて。
「伊賀者の中から十一人じゃ」
「真田殿と十勇士」
「変装の得意な者をすぐに伊勢に送れ」
「そしてですな」
「暫く入れ替わり源次郎殿達になってもらいな」
「真田殿に」
「関白様を救ってもらう」
 こう言うのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
「関白様のお立場は守れなかったが」
 それでもとだ、家康は言った。
「何とかな、お命だけは」
「お救いしますか」
「最早これしかない」 
 秀次を救うにはというのだ。
「ではな」
「その様に」
「では殿」
「関白様のお命をお救いし」
「そのうえで」
「後は静かに」
「そうじゃ」
 家康は四天王達にも答えた。
「そうして頂く」
「さすれば」
「その様に」
「これしかないとはな」
 家康はまたしても苦々しい顔になり言った。
「残念なことじゃ」
「全くです」
「しかしそれでもです」
「これしかないのなら」
「それならば」
「こうするだけじゃ」
 こうしてだった、家康はすぐに伊賀者から変装の得意な者達を十一人服部に選ばせ江戸から伊勢に向かわせた、それも風の如く。 
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