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真田十勇士

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巻ノ七十二 太閤乱心その五

 だからだ、忍の者達もというのだ。
「とてもな」
「入られぬ」
「どうしようもない」
「そうした場所じゃ」
「だから高野山に入られると」
「終わりじゃ」
 秀次、彼はというのだ。
「まだ高野山に向かわれる途中じゃ」
「何とか出来ぬか」
「我等は大坂から出るなと言われておるし」
「どうにもならぬ」
 彼等も秀次を助けたいがだ。
「どうしたらいいのじゃ」
「このままではまことに関白様は殺されてしまうぞ」
「叔父であられる太閤様に」
 大坂の者達も何とかしたい、だが。
 誰もどうにも出来ずにだ、急いでだった。
 秀次は高野山に入れられた。多くの者がこのことを知ったのは彼が高野山に入ってからだった。それでだった。
 家康もだ、江戸でその報を聞き驚愕して言った。
「終わったわ・・・・・・」
「関白様が」
「もうどうにもならぬ」
 こう言ったのだった。
「誰もな」
「高野山にはです」
 傍にいた天海も言う。
「それこそ太閤様でないと」
「自由にはな」
「入られませぬ」
「忍もな」
「あそこは忍び込むなぞ」
 服部も言ってきた。
「流石に」
「無理か」
「拙者と十二神将以外は」
「その御主達をじゃ」
 家康はここでも苦々しい顔で述べた。
「太閤様は動くなと言われた」
「はい、東国から」
「伊達家を見よな」
「確かにです」
 服部は家康に対して応えて言った。
「伊達殿は油断ならぬ方」
「東国平定の折太閤様に降られた」
 あえて死装束で出て来てだ、その傾奇っぷりに秀吉も惚れ込みそのうえで彼を笑って許している。切腹及び伊達家を取り潰されても不思議ではなかったが。
「しかしな」
「その御野心は」
「消えておらぬ」
「左様ですな」
「その抑えが蒲生殿じゃが」
 もっと言えば蒲生は家康の抑えでもある、会津で二人の間に楔を打ち込んでいるんだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「うむ、その蒲生殿が近頃な」
「お身体が優れませぬ故」
「御主達にその動きを見に行けとじゃ」
「言われ」
「間もなく行かねばならぬ」 
 伊達家の領地である仙台にだ、無論隠密として隠れてだ。
「だからな」
「はい、致し方ありませぬ」
「外から高野山に入られるのは」
 家康は考えた、服部及び十二神将の他にそれが為せる者は。 
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