普通だった少年の憑依&転移転生物語
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
【ハリー・ポッター】編
177 〝分霊箱(ホークラックス)〟とは
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
「……やっぱり変だよなぁ…」
アニー、ハーマイオニーに〝日記〟を預けて二人と一旦別れた俺は、いつもの様に〝在ったり無かったり部屋〟に入るやいなや、地べたに〝それら〟を並べて〝とある〟事について思考を回らせる。
並べたのは“サラザール・スリザリンのロケット”“ロウェナ・レイブンクローの髪飾り”“ヘルガ・ハッフルパフのカップ”“マールヴォロ・ゴーントの指輪”の四つ。……考えるのは云うまでもなく〝分霊箱〟の事。
……まず疑問に思ったのが【ハリー・ポッターと秘密の部屋】の一幕。
「……【秘密の部屋】で〝ハリー・ポッター〟がバジリスクの牙に貫かれても、〝ハリー・ポッター〟の中に居たヴォルデモートの魂は死んでいなかった」
つまり、バジリスクの牙が〝分霊箱〟を絶対的に破壊出来る訳では無いと云う可能性があるのだ。……〝〝ハリー・ポッター〟が死ななかったから〟と云う可能性も無きしもあらずだが…。
俺は、【ハリー・ポッターと死の秘宝Part2】にて〝ハリー・ポッター〟の中に残っていた〝お辞儀さん〟の残滓が〝お辞儀さん〟自身の〝死の呪文〟によって破壊されたのを観ている。……その事からまた推論が出来る。
……それは〝〝分霊箱〟を破壊出来るのはバジリスクの毒だけじゃない〟と云うこと。
「重要なファクターは多分〝杖〟と〝呪文〟」
そこで俺は〝とある事〟を試してみたくなり、普段はトネリコの杖で充分なので──〝倉庫〟にしまっておいた赤い杖を取り出す。……今年オリバンダーさんの店で大枚を叩いて買ったウェールズの赤い龍の一部が用いられていると云うあの杖だ。
杖先を今もなお気味の悪い気配を醸し出しつつ地べたに置かれている〝髪飾り〟に向ける。……そして〝その呪文〟を口にする。
「……“息絶えよ(アバダ・ケダブラ)”」
俺の杖先から放たれた緑の閃光は〝髪飾り〟を貫き──感じていた気味の悪い気配を消し飛ばす。〝髪飾り〟からは〝カップ〟〝ロケット〟〝指輪〟から今もなお感じているヴォルデモートの気配はちっとも感じられなくなった。
(……うし、成功)
〝分霊箱〟は、それを造るシークエンスで、〝殺人〟を犯し、〝魂〟を分けている。
……それはつまり〝〝分霊箱〟ある意味〝生きて〟いるのではないだろうか?〟──そして〝〝生きて〟いるのであれば〝殺せる〟のではないだろうか?〟と云うのが俺の推論で、先ほど〝髪飾り〟に放った〝死の呪い〟が、俺のその推論が正しかった事を証明してくれた。
「……よし、これで無理にバジリスクの牙を入手しなくても済むな」
これから俺がバジリスクの牙を欲しがるなら、それはきっとその稀少性がゆえになるだろう。……尤も、バジリスクの邪眼に対して耐性のあるコンタクトで荒稼ぎ出来たので、お金には困ってないが…。
「さて、次は〝ロケット〟の破壊だな──いっちょ〝これ〟も試してみるか」
“サラザール・スリザリンのロケット”を破壊するには〝蛇語〟が必要なのだが、俺にはこの前──アニーやハーマイオニーと〝バジリスクの操り方〟について議論していた片隅で思い付いた推論があった。
――“蛇出でよ(サーペンソーティア)”!
蛇を呼び出し、そのまま流れる様に次の魔法を使う。
「“服従せよ(インペリオ)”。……その〝ロケット〟を開けろ」
蛇は〝ロケット〟に向かいシューシューと掠れた声(?)を掛けている──様に見える。そして肝心の〝ロケット〟は徐に開く。さっきの〝死の呪文〟に続き、俺の目論見がまたもや成功した結果だと云えるだろう。
「“息絶えよ(アバダ・ケダブラ)”」
そして流れ作業が如く放った〝死の閃光〟は、〝ロケット〟を寸分の狂いもなく貫き〝ロケット〟から──先ほどの〝髪飾り〟同様、〝ロケット〟から〝お辞儀さん〟の気配を消し飛ばす。
「実験終了。あと二つは死蔵しとくか一応」
改めてこうやって〝分霊箱〟壊していて判ったことだが、多分、〝お辞儀さん〟は〝分霊箱〟を作りすぎた弊害か〝分霊箱〟を壊されている事に気付いていない公算が高い。
……多分、今ここにある〝カップ〟と〝指輪〟を破壊したとしても大丈夫なのだろうが──今回の目的が〝〝分霊箱〟を破壊する方法の模索〟と云うのもあったから〝一応〟なのである。
それから〝カップ〟と〝指輪〟を〝倉庫〟に突っ込んで、こそこそしながらグリフィンドール寮に戻った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
〝お辞儀さん〟の〝分霊箱〟を破壊する方法を見つけてから数日が経過したが〝日記〟がダンブルドア校長の手元にあるので、ホグワーツでは割りと長閑な日々が訪れていた。
……〝割りと〟と云う註釈がついているのは長閑な日々を過ごしていない人々も中にはいるのだ。スリザリンの一部の生徒がその最たるもので──後はジニー・ウィーズリーその人だった。
ジニーはここ数日、日々憔悴さていっている様に見える。……無論俺も手をこまねいている訳ではなく──
「[≪スリザリンの継承者≫さんへ。……T・M・リドルの日記はダンブルドア校長へと提出しました──R・W]。……大体こんなもんかね?」
「うん」
「良いと思うわ」
「後は──“防水せよ(インパービアス)”。……これで完璧」
〝ジニー(?)に〝日記〟がダンブルドア校長の手元に渡った事をどうやって伝えようか〟と云う話になり、〝ならそのまんま正直に女子トイレに書き置きでも残して置けばいいんじゃね?〟と云う──大して面白くもないところに落ち着いた。
「……じゃあマートル、しばらく俺達はここには来れないから。……誰かがこのトイレで、やたらとうろうろしてたらこの手紙を示唆してくれ。……ここに置いておくから」
そう──〝防水呪文〟を掛けた、先ほど認めた書き置きを、“トム・マールヴォロ・リドルの日記”を見付けた辺りに重しを忘れずに出来るだけ目立つ様に置いておき、マートルにそんな事を頼む。
<……判ったわ。……ロンには〝良い思い〟をさせてもらっちゃったしね。うふ、うふふ、うふふふふ…>
一方マートルは俺の頼みを断るでもなく普通に承諾する。……尤もマートルには〝良い思い〟──〝報酬〟は前払いにしてあるので書き置きの示唆くらいしてもらわなければ困るが。
……ちなみにマートルへの〝報酬〟とは〝マートルとデート〟だった。……だからか、その事でアニーとハーマイオニーがニヤニヤしながら──特にアニーが見てくるが、スルー。
閑話休題。
「……まぁ頼むよ──あ、くれぐれも…」
<あなた達がここに居たことは内緒──判ってるわよ>
〝継承者〟と目しているのが妹のジニーだから俺はそもそも論外。アニーとハーマイオニーもジニーとは割りと仲が良いので、やはり明かさない方が良いだろうと云う事となった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
三階の女子トイレに書き置きを置いてから二週間ほど経過していて、もうすぐバレンタインになろうとしていた。そして、〝継承者(?)〟のジニーの変調も顕著になってきた。
そのあたりから、フレッドやジョージに〝このテの問題〟に鈍い──とまで云わないが詳しくないパーシーですらもジニーの変調に気付き、フレッドとジョージは持ち前のイタズラグッズでパーシーは何かとジニーに気を掛ける様になったりと──二人と一人で各々に動きだした。
そうなれば俺にもその話が回って来るのもそう時間は掛かるわけでもなく。ある夜フレッドとジョージに〝話がある〟と肩を組まれながらパーシーの下に連れていかれた。
「……話ってジニーの事で良いんだよな?」
連れていかれた人気のない場所、開口一番に〝話は理解している〟と云う意味を籠めてそう訊けば、三人は揃って頷く。
「そうさ」
「石頭のパーシーじゃなくて」
「俺達の話も判ってくれるロンなら」
「良い案を出してくれるかと思ったんだ」
「五月蝿いぞ二人とも。……とは云っても、僕が言いたいのはフレッド、ジョージと一緒さ。……どうにかジニーの悩み事を解決できないかな?」
「……ああ、なるほど…」
苦笑しながら頷く。……と云うのも、パーシーはジニーに気を掛けてはいるが、恋人──レイブンクローの監督生のペネロピー・クリアウォーターの事があるのでいつもいつもジニーの事に気を回せないようでいて、フレッドとジョージのイタズラグッズはジニーを怒らすばかり。
……とどのつまり、八方塞がりになり、そのお鉢がジニーと兄弟の中で一番仲が良かった俺に回って来たと云うわけだ。
平素ならフレッドとジョージがここらで〝お堅いパースのせいさ〟と云う野次を入れてそれにパーシーが噛みついたりするのだが、それも無い辺り話の緊急性がうかがえる。
三人からのこのオーダーは、俺からした予想出来ていたことなのでかねてより決めていた〝それ〟を口にする。
「……1ヶ月でどうにかする。……だからあと1ヶ月俺にくれないか?」
俺のそんな提案三者は一瞬胡乱な表情を浮かべるが軈て頷く。……パーシーですらも頷いたのだから、俺の日頃の生活態度が身を結んだのだろう。
……そして、アニーとハーマイオニーから、〝ジニーに〝校長室〟への入り方を訊かれた〟と聞いているので、俺はもうすぐ──多分一週間もしないうちにジニーが校長室へと〝日記〟を探しに行くと予想している。〝一月〟と云うのはあくまでも保険だ。
その時、寮に誰かが入って来る。……マクゴナガル先生だった。
「ミスター・パーシー、ミスター・フレッド、ミスター・ジョージ、ミスター・ロナルドは居ますか?」
マクゴナガル先生は俺達を探しているらしい。その時一番マクゴナガル先生の近くに居たシェーマスが俺達が集まっているところを指差す。……そしてマクゴナガル先生はつかつか、とこちらに寄ってきて…。
「丁度良かった。今すぐ校長室まで着いて来て下さい。……ミス・ジネブラの事で話があります」
「マクゴナガル先生、ジニーが一体どうしたと云うんですか?」
そうパーシーはマクゴナガル先生へと喰ってかかり、マクゴナガル先生はいつもみたいに厳格な口調で続ける。
「……ミス・ジネブラが校長室に忍び入りました。あなた達を呼べというのは校長先生のご意向です」
それはここ最近で一番聞きたかった知らせだった。
SIDE END
ページ上へ戻る