FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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ヤバイヤバイ
前書き
今回は久々に誰も戦っていないお話となりました。ただバトルするだけじゃなく、こういう間があると個人的にはストーリーっぽいと思うんですよね。でも思いつかないのが今の現状・・・難しいですね、考えるのって・・・(遠い目)
シリルside
「シリル先輩!!ただいま戻りました!!」
ウェンディの看護をしていると、遠くからシェリアたちを迎えに行ったサクラの声が聞こえたので一度そちらを向いて姿を確認する。
「あたしも勝ったよ!!」
「ギリギリだったけどね~」
サクラに肩を借りてゆっくりと向かってくるシェリアはガッツポーズをしており、意識を失っているシャルルを抱えたセシリーは苦笑いを浮かべていた。
「オオッ。皆さんご無事で」
よほどダメージを受けているのか、足を引き擦っているシェリアたちがやって来るのを待っていると、後ろから最初に出迎えてくれた白髪の老人が物音で気付いたらしくヨボヨボと歩いてくる。
「すみません。起こしてしまって」
実はすでに辺りは暗くなっており、もしかしたら眠っているくらいの時間なのかもしれない。今まで不安でほとんど寝ていなかったであろう村の人たちには早めに休んでもらい、俺がウェンディの治療兼監視係りを担当していたりする。
「いやいや、皆さんがいるからゆっくり眠らせてもらえたよ。どうもありがとう」
よほど眠れていなかったのか、こんな中途半端な時間に目覚めたにも関わらずその表情はすっきりしているように見える。
「皆さんもお休みください。今はあいつらも攻めてこないでしょうし」
「いや、でも・・・」
そう言われても、俺たち全員が眠ってしまったら襲撃された時に対処できない可能性がある。今までは大丈夫だったからと言われても、今日に限ってということもあるし・・・
「シリル、言われた通りにしておこう」
「今のままじゃもたないよ~」
渋る俺の肩に手を置きシェリアとセシリーがそう言う。彼女たちもボロボロだし、今攻められたらどっちにしろ対応できないのか。
「すみません。でも、何かあったらすぐに起こしてくださいね」
「うむ。その時はよろしく頼む」
お言葉に甘え、看病していたウェンディたちを連れて空いているテントの中へと転がり込む。その中には寝袋が敷かれており、それぞれその中へと入り込む。
「ウェンディはどんな具合なの?」
「傷は治ったと思うんだけど・・・」
微動だにせず寝息を立てている少女を心配して顔に手をやるシェリア。折れていたあばらも治したし、見える部位の傷も治療した。だけど、全然目を覚ます様子のない少女に不安を抱いてしまうのは仕方のないことだろう。
「きっと疲れちゃったんだと思いますよ。だってすごかったもん、ウェンディさん」
寝袋に隠れるようにしてそう言ったのは彼女とともに戦闘を繰り広げていた少女。こいつの言っていたのが本当なら、ウェンディはドラゴンフォースを発動したんだとか。もしそれが自由に使えるのだとすれば、俺よりも先にそのレベルまで到達したことになるのでなんか悔しい。
「あ、シェリアは治癒しなくて大丈夫なの?」
一人そんなことを考えていると、目の前の少女が傷だらけになっていることに気付く。よく考えたら帰ってきてすぐに休むことになったから、治療をするのを忘れていた。
「大丈夫だよ、明日には治ってるし」
「そ・・・そうなの?」
シェリアは俺やウェンディとは違って自己回復ができる。今は魔力が足りなくて出来ないらしいけど、寝ていれば自然に回復するらしい。それでも放っておくのは忍びないけど、こちらも魔力も体力も限界だ。
「そういうことなら、もう寝ちゃう」
明日には残りの二人とも戦わなければいけないし、本人がいいと言うのなら、言われた通りに休ませてもらおう。そう思い眠たい目を閉じて夢の中へと落ちていった。
戦いや移動での疲労により疲れきっていた俺は、翌日の朝日に照らされてようやく目覚めた。
「んん・・・あれ?朝?」
本来ならもう少しくるまっていたいところなんだけど、今の状況を思い出してすぐさま飛び起きる。
「おはよう、シリル」
その勢いのままテントからも出ていこうとしていたが、俺よりも早く赤紫髪の少女が入り口のところから外に出ていこうとしているところだった。
「おはよう、シェリア」
彼女に挨拶した後、他の仲間たちの方に視線を向ける。四人はまだ眠っているようで、スヤスヤと目を閉じたまま静かに寝息を立てていた。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはよう。ゆっくりできたかな?」
最初に出ていったシェリアがペコリと頭を下げ、それに続いて俺も頭を下げる。その先にいるのは昨日休むようにいってくれた老人で、彼は俺たちを見て微笑みかけるように声をかけてくれる。
「特に何もありませんでしたか?」
「うむ。評議院が皆さんが捕まえてくれた山賊たちを引き取りに来た以外は何も」
どうやら俺たちが寝ていた隙に退治した奴等を評議院が連れていってくれたらしい。これで残すところはあと二人になったんだな。
「ただ、シリルさんが倒した山賊は言われた場所にいなかったと・・・」
その瞬間隣からものすごい視線を感じたので顔を背ける。まさかあの野郎逃げやがったのか、傷治してやったのに、恩を仇で返しやがって・・・
「でも、シリルは一度倒してるんだし大丈夫でしょ?」
「う・・・うん!!もちろん!!」
何を言われるのかとビクビクしていると、意外にも彼女はフォローしてくれてひと安心。確かに一度倒した相手ならやり方はわかってるし、何度でも倒してやるだけだよね。
「シリル?シェリア?」
昨日の夜のことを確認していると、テントから俺たちの名前を呼ぶ声がするのでそちらを振り向く。そこには昨日なかなか回復せずに眠っていたウェンディが、眠たげな目を擦りながら顔を覗かせている姿が見えた。
「ウェンディ!!よかった!!」
それを見て今までの会話などすべて吹っ飛び彼女の元へとかけていく。相当ヤバイ状態なのかとも思ったけど、ひとまず大丈夫だったことに安堵し、テントから出てきたばかりの彼女を抱き締める。
「ちょっと!!痛いよシリル!!」
「あ・・・ごめんごめん」
急に飛びついたものだから少女は何事かとびっくりしており、抱きついてきた俺を引き剥がしている。つい興奮してしまっただけに、相手が寝起きだということを考えていなかったよ。
「シリル先輩!!朝から熱いですね!!」
「出口の前でそんなことしないで頂戴」
「僕たちが通れないよ~」
その後ろにはキラキラした目でこちらを見ているサクラとジト目をしているシャルルとセシリーがいた。
「お前らも起きてたんだ」
「もちろんです!!」
「何残念そうな顔してるのよ」
「そんな顔してないよ!!」
シャルルの指摘に思わず頬を押さえる。無意識にそんな顔をしていたのか?全然気付かなかったよ。
「そんなこといいから~、これからどうするか決めようよ~」
先程の行動についての話からセシリーが意外にも真面目な話を切り出してきてちょっとびっくり。そういうのはシャルルの役割だと思っていたから、彼女がそんなことを言うのは珍しい気がする。
「あと二人・・・いや、シリルが逃がしたらしいから三人か」
「え?シリル逃がしちゃったの?」
シェリアが悪者を吊し上げるように話題を振ってくるので顔を反らしてほとぼりが冷めるのを待つ。俺が黙秘したため話が進まなくなり、諦めた少女たちは話題を元に戻した。
「みんなは傷は大丈夫?」
「うん!!」
「おかげで問題なく動けるわ」
ドラゴンフォースを解放したことで疲労が大きかったウェンディも大ケガをしていたシャルルも一晩寝たことで元気になったようで、シェリアの問いに声高らかに答えていた。
「みんな万全なら三人くらいすぐ倒せちゃうんじゃない~?」
「私もそう思います!!」
こっちは六人、向こうは三人。実力は互角だろうから、人数的に優位なこちらの方が強いと思う。
「なら早速いっちゃおっか!!」
「善は急げってことだね」
村の人たちが早く自分の家に帰れるようにするためには、村を占領している山賊たちを倒すことが最重要項目だから、出来るだけ早くしたい気持ちがある。今ならこっちが勝つだろうし、攻めることができる時に攻めないとな。
「じゃあ村長さん!!あたしたち村を奪還して来ますので!!」
「もう行くのかい?もっとゆっくりしてからでも・・・」
シェリアが老人にそう伝えると、彼はのんびりとした正確なのかそんなことを言い始める。でも、思い立ったらすぐ実行って感じの性格のシェリアはその意見を押し退け俺たちを引き連れ村へと向かっていく。てかこの人村長さんだったんだと今初めて知ったよ。いや、そんな気は何となくしてたけど、名乗る機会もなかったから知るタイミングがなかっただけだけど。
「あと二人ってどんな人なのかわかってるの?」
村へと向かっている最中、俺の隣を歩く少女から素朴な疑問が投げられる。
「あれ?そういえば・・・」
「どんな人なのかな?」
俺が戦ったバカっぽい巨大ヌンチャクを使う奴と、ウェンディが戦ったというエルフマンさんを彷彿とさせる大男で大鎌使い。そしてシェリアが戦った坊主頭の毒爪使い。これと同格の存在をイメージすると・・・
「エルザさん?」
「カグラとか?」
「ミネルバとかも合いそうよね」
出てきたのは各ギルドを代表する女性魔導士たち。今までが男だっただけに、姉御肌のリーダーがいるとバランスが取れる気がする。関係的にも、絵面的にも。
「それだとあと一人は~?」
「イケメン!!」
一人は女性ということが多数決の結果決まったため、話題は残された一人に話題が移る。しかし、その瞬間思わぬ人物からまさかの発言が出たので足を止めてそちらを向いてしまう。
「え?サクラ、もう一回言って」
「だから!!エルザさんとかならイケメンが横にいるといいと思います!!」
まだ10歳だからそんな感情は芽生えていないのかとも思っていたが、サクラもちゃんとそういう人物が好みらしく目をキラキラとさせながら明らかに彼女自身の願望が全面に出ている推測を言っていた。
「あんまり期待しない方がいいと思うわよ」
「今までのが今までだったからね~」
呆れたような声を出す猫少女二名。確かにエルザさんやカグラさんの横にジェラールやリオンさんみたいな人がいれば絵になるけど、世の中そううまくはできていない。きっと期待を裏切られて終わるのがオチだろう。
「バカな話してないで、もうすぐ着くよ」
様々な憶測が飛び交う中、目的地が近付いてきたため姿勢を低くして前に進んでいく。敵は少なくなっているといっても、いつどこから襲われるかわからない。身を隠しておくに越したことはないだろう。
「ところで、どうやって攻めるつもりなの?」
「う~ん・・・」
先頭をズンズン進んでいくシェリアに待ったをかけるように質問をぶつける。だってシェリア、たぶん勢いで進んでただけだもん。せめて何かしら策を考えてからじゃないと、ただ戦うだけじゃナツさんやエルザさんと一緒だ。
「でも考える必要もないんじゃないの?」
「たった三人なんだもん~」
「楽勝ですよ楽勝!!」
ちゃんと作戦を考えてから行動しようとする俺たちとは違い、シャルルたちは真っ正面から戦っても大丈夫だと考えているらしい。ぶっちゃけ負ける気はしないけど、念には念を押しておかないと・・・って思うのは、俺が心配性なだけか?
「油断しちゃダメだよ。昨日戦った人たち見たらわかるけど、みんなすごい強かったもん」
「それもそうだね」
しかし、彼女たちの意見をウェンディが正論で論破してくれた。よかった、てっきり俺だけ作戦を考えようと思っているのかと内心不安だったから。
「でも、やるにしたってどんなことをするのよ」
「分散して四方から攻めるとかですか?」
作戦といっても基本的にはフォーメーションやら戦い方やらを決めておいて優位性を得るということになるだろうけど、その中でも種類はいくつもあるだろうからね。どんな攻め方をするのが理想な形なんだろうか・・・
「ね・・・ね~」
「ん?どうしたの?」
「あれ、聞いてた話と違うんだけど~」
いかなる攻め方をすべきか頭の中で構想を練っていると、話し合いから抜け出して村の様子を見ていたセシリーが青ざめているのに気が付き、全員で彼女が見ていた方角を覗いてみる。
「え!?」
「何あれ!?」
そちらを見た瞬間、全員が驚きのあまり硬直する。なぜなら、人がほとんどいないはずの村にたくさんの武具を持った男たちがいるからだ。
「どういうこと?」
「もしかして昨日評議院が来たって言ってたから・・・」
もしかして、評議院が先に制圧しちゃったとか?それだとこれだけ人がいるのも納得できるけど。
「それはないよ。だって評議院は今人手不足で困ってるって話だったもん」
しかし、その話をシェリアが即座に否定する。そういえば、以前ジュラさんが来た際にそんなことを言っていたような・・・だからレオンを連れていこうとしていたわけだし。
「あ!!」
「どうした?」
「あいつじゃないですか?シリル先輩が言ってたの」
サクラが指さす人物を見ると、そこには俺が倒したカラスが周りの男たちと会話をしており、シェリアの言葉が正しいことを物語っていた。
「つまりあの人たちって・・・」
「敵の増援ってこと?」
その瞬間、全員の顔から血の気が引いていくのかわかった。見た感じ明らかに敵は30人は軽くいる・・・数的優位に立っていることがこちらの利点だったのに、それがなくなってしまったのは非常に痛手である。
「ヤバイ・・・これはヤバイ・・・」
そういえばカラスが昨日何かあるって言ってたような・・・もしかしてそれはこのことだったのか。あの時尋問しておけばよかったな。
「とりあえず・・・」
「うん」
もうこうなったらどうするかは決まりきっている。全員に目配りをすると、みんなその意図を読み取ったらしく静かにうなずく。
「撤収!!」
「「「「「オオーッ」」」」」
敵に聞こえないように小声で意志疎通を行うと、すぐさま撤退していく。でも、これは本格的にまずい展開かも。何か策を考えないとどうしようもないかもしれないな。
後書き
いかがだったでしょうか。
敵が少ないと見せ掛けておいてここに来て増えるというね。でも別に全員と戦う訳じゃないのでご安心ください。
それと、前回忘れたと言っていたもう一つのやりたいことを思い出しました。おかげで今後のストーリーもちゃんと構成していけそうです(笑)
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