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真田十勇士

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巻ノ七十一 危惧その十二

「太閤様にも申し上げる」
「何処となく」
「あの方がお聞きになられる様にな」
「そうですな、やはり人の道を考えますと」
「それが一番よいな」
「拙僧も否定出来ませぬ」
 僧侶でありながら含むものも多く正純の様に陰謀を得意とする崇伝にしてもだ、そうした行いがよいことは事実と述べた。
「やはり」
「ではな」
「関白様もですか」
「わしは運命を変えたい」
「若し関白様の運命が危ういのなら」
「そうしたい」
 是非にと言うのだった。
「あの方の運命を変えよう」
「何としても」
「やはりあの方は天下に必要じゃからな」
 そう思うからこそとだ、家康もまた秀次を何とかして助けようと決意した、このことは秀次の耳にも入っていたが。
 彼は近い者達にだ、こう漏らしていた。
「わしは何か悪いことをしたのか」
「巷で言う殺生関白ですか」
「あのお言葉ですか」
「それもあるが」
 浮かない顔での言葉だった。
「何か太閤様に悪いことをしたのか」
「いえ、それはないかと」
「誓って言えます」
「関白様は何も悪くありませぬ」
「何も悪いことはしておられませぬ」
「断じてです」
「それはありませぬ」
「ならばどうしてじゃ」
 難しい顔での問いだった。
「わしもわかる、太閤様は今はわしを邪魔に思われている」
「それはやはり」
 一人が言った。
「お拾様がお生まれになったので」
「やはりそれか」
「あの方を世継ぎにされたいので」
「ならそうすればよかろう」
 それもよいとだ、秀次は言った。
「お拾様が天下人でもな」
「それでもですな」
「関白様はよいのですか」
「天下人の座も」
「そちらも」
「太閤様がそうされたいのならな」
 達観さえ見せてだ、秀次は語った。
「わしは喜んでお拾様に天下を明け渡す」
「しかしです」
「その場合は関白様はお拾様の後見となられ」
「やはりお拾様の上にあります」
「そうした方になられますので」
「摂政でもか」
 ここでも残念な顔になった秀次だった。
「わしが邪魔か」
「お拾様の為には」
「太閤様はそう思われています」
「ですから」
「ここはどうにかしてです」
「治部殿と刑部殿はお味方です」
 まずは二人の名が挙げられた。 
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