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銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)

作者:azuraiiru
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第二百三十五話 辺境星域視察

帝国暦 489年 1月 5日  クラインゲルト子爵領 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


俺は今クラインゲルト子爵領に辺境視察のために来ている。このクラインゲルト子爵領はアムリッツア星系に有る。道理で原作では最初に同盟軍が攻め込んで来たわけだ。

メックリンガーは艦隊でお留守番だ。俺と一緒に地上に降りると言っていたが、俺がいない間の艦隊全体の責任者になって欲しいと言うと不承不承だが頷いてくれた。本当は先にオーディンに戻れと言いたかったのだが、言っても聴かないだろう。辺境とは言っても帝国領なのだから安全なんだが、それを言えばまた怒るだろう……。

「こんな事を言ってはなんですが余り豊かとは言えないところですね」
ヴァレリーが小声で俺に話しかけてきた。俺も小声で返事をする。
「辺境ですからね、仕方がありません」

思わず舌を噛みそうになった。軍の装甲地上車に乗っているがはっきり言って乗り心地は悪い、非常に悪い。士官学校でも乗ったはずだがこんなだったかな? 整備不良じゃないのかと言いたくなる酷さだ。いや、あの時は装甲服を着ていた、サイズが合わなくてブカブカだったが……。あまり乗り心地に不満を感じなかったのもその所為かもしれない。

クラインゲルト子爵領は決して豊かとは言えない。しかしこちらを見る領民の表情は決して暗くは無い、穏やかで安らかだ。クラインゲルト子爵の統治そのものは決して悪いものではないのだろう。

護衛も含めて六台の装甲地上車で行くのだが土埃が濛々あがる。頼むから舗装くらいしてくれ。段々気が滅入ってきた。フィーアに会えると楽しみにしてきたんだが今では後悔のほうが強くなってきている。俺は肉体的な耐久力は低いんだ、勘弁してくれ。子爵のところについたら気分転換に風呂、なんて事は無理だよな……。

リヒター、ブラッケ、お前ら俺に面倒事を押し付けたな。おそらくリヒテンラーデ侯もグルだろう。やたらと俺に辺境を見てきて欲しいなんて言っていたが、自分達で行きたくなかっただけに違いない。今頃俺の事を大声で笑っているだろう。爺様連中の性格の悪い事は分かっていたがお前達もか、全く碌でもない連中ばかり俺の周りに集まってくる、どういうわけだろう?

そんな事を思っているとようやくクラインゲルト子爵邸に着いた。いい加減疲れたがこれからが仕事だ。ヴァレリーと装甲地上車を降りると俺の傍に他の装甲地上車から降りた文官が三人近寄ってきた。

こいつらは自治、民生、財務から今回の視察のために付けられた官僚たちだ。ヴァレリーはお目付け役じゃないかと疑っているが、まあ当たらずとも遠からずだろう。官僚が軍人のやる事なんて信じるわけがない。俺だってお前らのやる事なんて信じない。国民の事より省の利益を優先するのが官僚だ。

子爵邸には老人が二人いた。そのうちの一人が近付いて来る。身なりは悪くない、おそらくクラインゲルト子爵だろう。となると残りは執事か。名前はなんだったかな、モンタード? 違うな、モンタルド?

「ようこそヴァレンシュタイン元帥。私がクラインゲルト子爵です。こんなところまで来ていただけるとは……」
「当然の事です、クラインゲルト子爵。辺境星域については皆が心配しています」
「そうですか、気にかけていただけるとは有難いことです」
いかんな、口調は感謝しているが眼は笑っていない。信用してないな。

「今回もリヒテンラーデ侯、リヒター自治尚書、ブラッケ民生尚書が来たがっていました。しかしオーディンのほうも手を抜く事は出来ません。そんな訳で私が代わりに来たのです」

少しは眼が和んだようだ。それにしても結構政府に対して不信感が強いな。こいつを何とかしないと辺境星域の経営は上手くいかんだろう。やれやれだ。
「こんなところで立ち話もなんですな、どうぞこちらへ。モンターク、先に行ってくれ」

なるほど、執事の名前はモンタークだったか、先を進む執事の後姿を見ながら思った。それにしてもフィーアは出てこなかったな、出来れば会いたかったんだが……。息子のカールは今年で六歳、いや七歳か、だとするとフィーアは三十歳前後だろう……。綺麗で優しそうなお母さんだったな。

浮気じゃないぞ、ケスラーのことをちょっと話したいだけだ。何気なくケスラーの事を話せば向こうから幼馴染だと言ってくるだろう。クラインゲルト子爵家にしてみれば中央との伝手は喉から手が出るほど欲しいに違いない、必ず食いついてくる。

あとでケスラーを冷やかしてやる。ケスラー上級大将の若き日の切なくて甘酸っぱい初恋物語だ。しばらくはゼーアドラー(海鷲)はその話で持ちきりだろう。俺とユスティーナの事を酒の肴にした罰だ。

屋敷に入ると応接室に通された。中には既に先客が居る。老人が一人、そして中年男性が二人だ。老人はクラインゲルト子爵と同年輩だろう、中年男性は二人とも長身だが一人は黒髪、もう一人は金髪だ。

どうやらこの地域の貴族らしい。はてね、どういうことだ、此処ではクラインゲルト子爵からこの地域の話を聞いて終わりだったはずだが……。

「元帥閣下、紹介しましょう。こちらはゲオルグ・フォン・バルトバッフェル男爵、アロイス・フォン・ミュンツァー男爵、アウグスト・フォン・リューデリッツ伯爵です」

子爵の言葉に三人の男が微かに目礼を送ってくる。どうやら老人がバルトバッフェル男爵、黒髪がミュンツァー男爵、金髪がリューデリッツ伯爵か。
「……宇宙艦隊司令長官エーリッヒ・ヴァレンシュタイン元帥です」

あのロクデナシども、知っていたな。それで俺に辺境視察を押し付けたか……。亡命者のヴァレリーは気付かんだろうが目の前にいる三人はそれぞれ銀河帝国では有名な人物の末裔だ。一緒に付いてきた三人の官僚は顔が強張っている。

「彼女は私の副官を務めるフィッツシモンズ大佐です」
俺の言葉にヴァレリーが敬礼をしようとしたが、それを遮って彼らを紹介した。

「大佐、バルトバッフェル男爵は帝国と同盟が最初に接触した時、戦争に反対したバルトバッフェル侯爵を御先祖に持たれる方です。バルトバッフェル侯は当時の皇帝、フリードリヒ三世陛下の異母弟でイゼルローン要塞の建設を最初に唱えた方ですよ」

ヴァレリーが驚いたような視線を男爵に向けた。男爵は何処と無くくすぐったそうな表情をしている。
「昔の事だ、しかもそれが原因で侯爵から男爵に爵位を下げられ領地も削られた。今のバルトバッフェル男爵家は辺境の一男爵に過ぎん」

「そして、そのイゼルローン要塞を実際に作ったのがリューデリッツ伯爵の御先祖です。あの要塞が帝国にもたらした利益は大きい。防衛の拠点、そして中継基地として大きな役割を果たしました」

「その割には我が家は報われなかった、残念な事ではあるがね。元帥、あの要塞を帝国に取り戻す事は可能かな」
「国内が安定すれば可能です」

我が家は報われなかった、その言葉を出した時の伯爵はほんの少し悲しげだった。無理も無い、当時のリューデリッツ伯爵はイゼルローン要塞建設費超過の責任を問われて自殺した。

ドケチ皇帝、オトフリート五世は建設費が嵩むのが我慢できなかったらしい。馬鹿な話だ、俺ならイゼルローン要塞を作って防衛戦を展開し安全となった辺境星域を開発しただろう。長期的に見れば十分元が取れたはずだ。オトフリート五世は金を貯めるだけで使い方を知らなかった。ドケチと言われても仕方が無いだろう。それとも上品に守銭奴とでも言われたかったか……。

その後ミュンツァー男爵を紹介した。ミュンツァーの名前はヴァレリーも知っていた。まあ当然だろうな、名君マクシミリアン・ヨーゼフ二世の下で国内の改革を指導したミュンツァー司法尚書の名前は有名だ。

ミュンツァーがその気になればオーディンの近くで領地を貰う事も出来ただろう。だがミュンツァーは国内改革を行った所為で周囲から恨まれている事を理解していたようだ。

妬みを必要以上に買うことを恐れたミュンツァーは辺境に領地を貰った。ミュンツァーが司法尚書を辞任し引退した後ミュンツァー男爵家が中央で活躍する事は無かった。多分、警戒されたのだろう。

挨拶が終わりソファーに座って話し始めた。クラインゲルト子爵邸に何故バルトバッフェル男爵達がいるのかはすぐ分かった。彼らは一種の共同体を形成しているようだ。辺境の貧しい領地を領有している彼らは単独で領地を経営するより協力して経営するほうが効率が良いと判断したらしい。

具体的には輸送船、警戒部隊の共有、そして輸出商品の共同開発、さらには領内の統治についても税率、福祉、教育等で協力し合っている。当然といえば当然だろう、領内統治に格差があれば領民達の間で不満が出るのは見えている。

クラインゲルト子爵領は決して豊かとはいえない、しかし領内が安定しているのは統治そのものは領民から見ても妥当だと思われているということだ。という事は他の三人の領地も同じだと見ていい。

「我々は改革には反対していません。むしろ賛成しています」
「今のままでは自分達の力でこれ以上領地を発展させる事は難しいと思っているのです」

ミュンツァー男爵、リューデリッツ伯爵が口々に改革に賛成すると言ってきた。彼らは中央にいた門閥貴族のように領地を搾取の対象とは見ていない。在地領主であり領民との関わりが深い。領地に対して強い愛着を持っているし領地を発展させる事が自分達のためだと理解している。

今でも領内の発展のためにかなりの資金を使っている。領民から信頼を得ている彼らを敵に回すのは得策ではない、むしろ味方に引き入れたほうが辺境星域の統治はスムーズに行くだろう。問題は彼らが何を要求してくるかだろう。

「税を払うのには反対しません、しかし我々の領地の発展にも力を貸して欲しいのです。税を払うだけというのは困ります。それでは我々は貧しくなる一方です」

つまり国の力で領地を発展させてもらったほうが得だと考えているわけか。多くの貴族がそう考えてくれれば今回の内乱は起きなかっただろうな……。
「バルトバッフェル男爵、具体的に政府に何を望んでいるのです?」

俺の言葉に四人は顔を見合わせ、クラインゲルト子爵が話し始めた。
「先ず、医療の充実です。病院、医師、薬局……。辺境に来たがる医師はいません。当然ですが医師がいなければ病院も造りようが無い。辺境星域の住民の平均寿命はオーディンに比べれば遥かに低いのです」

「教育も同様です。どうしてもオーディンに比べれば辺境の教育レベルは落ちる。そのことも辺境星域の発展を妨げています」
「同時に領内の開発もです。特にインフラ関係を御願いしたい。水道、電気、通信……。我々の力ではどうしても限界がある」

ミュンツァー、リューデリッツが口々に要求を出す。一緒についてきた官僚たちの顔が青褪めてきた。金かかるよな、おまけに此処だけじゃないし……。こいつらの顔色が悪くなるのも分かるよ。

「元帥閣下、如何でしょうか?」
クラインゲルト子爵が問いかけて来た。笑みを浮かべてはいるが眼は笑っていない。この爺さん、俺を試すつもりらしい。

「そちらの要求は分かりました。辺境星域の開発と発展は今回の改革でも重要視されている事です。最大限の協力をする様に政府に伝えましょう」
「閣下!」
そう青い顔をするなよ、官僚君。その様子をクラインゲルト子爵が胡散臭そうに見ている。

「この場しのぎではないでしょうな」
「そんな事はしませんよ、クラインゲルト子爵。ただ一度に全てを実行するのは無理です。政府は帝国全土に対して改革を行わなければならない。辺境星域だけを特別視する事は出来ません」

「……ではどうされるのかな」
「こちらへの要望に対して優先順位をつけるか、あるいは複数を同時に進めるのであれば作業の工程を決めてください。その上でどの程度の費用がかかるのかを調べて政府に提出して欲しいのです」

「……なるほど」
クラインゲルト子爵が他の三人の顔を見た。お互いに視線を交わしていたがどうやら納得したようだ、皆が頷いている。

「分かりました、そうしましょう」
「御願いします」
その瞬間、官僚達がほっと安心するのが見えた。そしてクラインゲルト子爵の顔が皮肉な笑みを浮かべる。

「閣下、我等の要望書ですが閣下に提出しますが宜しいでしょうな」
「……結構です、問題はありません」

何で俺? そう思ったがこの時点で断われば彼らの信用を失うだけだろう。つまりこの地域の担当は俺ということか。いや、この地域だけじゃないな、これから他の地域を周るから結局は辺境星域は俺の担当ってことか……、どうやらオーディンの連中の狙いはこれか、俺はまんまと嵌められたらしい……。

官僚達の顔が強張るのが見えた。そしてクラインゲルト子爵がますます皮肉な笑みを大きくする。全くこいつら何考えてやがる、お前らがそんなだから俺に仕事が来るんだ、この馬鹿が! 後できっちり説教してやる!



帝国暦 489年 1月 10日  オーディン 帝国広域捜査局 アンスバッハ


「アンスバッハ課長、キスリング少将がお見えです」
「今何処に?」
「応接室です」
「有難う」

にこやかに話す女性職員に礼を言って、私は応接室に向かった。帝国広域捜査局第六課課長、それが今の私の肩書きだ。フェルナーは第六課の課長補佐、本来は管理職のはずなのだがどうにも身体を動かしたがり現場に行きたがる。今日も外に出かけている。或いはキスリング少将と顔を合わせるのを避けたのかもしれん。私の前で彼と親しくするのは良くないとでも考えたか……。

応接室に入るとソファーに座っていたキスリング少将が立ち上がり敬礼をしてきた。いかん、此処にいると敬礼をするのを忘れる、慌てて敬礼した。
「お呼びたてして申し訳ない」
「いや、構いませんよ、アンスバッハ准将。それで今日は一体何を」

「実はヴァレンシュタイン司令長官からある指示がありました。その件で少将の御協力を得たいのです」
「指示ですか……」
キスリング少将は訝しげな表情をした。理由は分かっている。

「アンスバッハ准将、広域捜査局は司法省の管轄下のはずです。司令長官からの指示とはどういうことです? 責めているのではありません、後々拙い事になりはしないかと心配しているのです」

やはり此処から入らなければならないか、まあ変則的だから仕方が無いんだが……。
「広域捜査局は星系間にまたがる犯罪を扱います。此処には六つの課が有り当然ですがそれぞれに役割がある。第一課は強行犯、第二課は知能犯、第三課は盗犯、第四課は鑑識、第五課は科学捜査、そして我々第六課……」

「……第六課の役割は何です?」
「テロ・スパイなど帝国の安全保障に係る公安事件です」
「……公安事件」
キスリング少将は呟くように言葉を出すと考え込んだ。第六課の正体が何なのか、大体は想像がついたのだろう。

「第一課から第五課まではルーゲ司法尚書が最終的な命令権を持ちます。しかし第六課に対してはヴァレンシュタイン司令長官が命令権を持つ……」
「しかし、それは」
キスリング少将が驚いたような声を出すがそれを遮った。

「期間は五年間です。司令長官は今後二年の間にフェザーン、同盟を降すつもりです。つまり五年間というのは宇宙が帝国の覇権の下に安定するまでの期間だろうと自分は考えています」
私の言葉にキスリング少将は何度か頷いた。

「……なるほど、一時的なものと言うことですか、了解しました。それで司令長官の指示とは?」
「オーディンの地球教が宗教活動の中で薬物を使用している可能性は無いか確認して欲しいと」

私の言葉にキスリング少将が黙り込んだ。
「……サイオキシン麻薬ですね。地球教が布教の中でそれを使っているのではないかという事ですか……」
「ええ、これから地球教を調べるのですが、その前に四百八十三年の摘発時にそのような事が有ったのかどうかを確認したいと思ったのです」

キスリング少将は考えている。彼の黄玉色の瞳が細められた。過去を追いかけているのだろう。
「いや、そのような事は無かったと覚えています。あの時憲兵隊は徹底的にサイオキシン麻薬を摘発しました。地球教が使っていてそれに気付かなかったとは思えません。また疑いがあってそれを放置したとも思えない」

「となるとここ数年で使い出した?」
「……いや、それも難しいでしょう。サイオキシン麻薬は常習性が強い、安定した供給先が無ければ薬の切れた中毒患者が暴れだします。そうなれば当然事件になる。サイオキシン麻薬を布教に使っている事が外部に漏れたら大変な事になります。そんな危険を犯すとは思えない」

キスリング少将の言う事はもっともだ。自分もそう思う。あの事件以来サイオキシン麻薬に対する世間の目は厳しい。敢えて地球教がそれを使うだろうか?
「となると司令長官の考えすぎと言うことですか……」
「ウーム、或いは供給ルートが別だったのか……」
「供給ルート?」

私の疑問にキスリング少将は考えながら答えてくれた。あの事件は最初に辺境基地に在ったサイオキシン麻薬の製造基地を叩いた。そして販売ルートをたどりサイオキシン麻薬の売人を押さえ購入者を捕らえることで製造者、販売者、利用者の全てを撲滅した。

「最初に軍のルートを叩きました。その後に売人、常用者から他のルートでサイオキシン麻薬を手に入れていないかを聞き出し、あればそのルートを叩いた。その繰り返しです」
……なるほど。徹底的に叩いた、というのはそういう事か。しかしそうであれば供給先が別ルートでも摘発を逃れたとは思えない。

「有り得るとすれば、供給先が別で売人も購入者も自分達で用意した場合でしょう。一切他の売人、利用者と接触させなかった。会員制のクラブのようなものです……。しかしそのような事が有り得たのか……。安全かもしれませんが、利益はあまり出ない、採算が取れるとも思えない……」
「会員制のクラブ……、つまり閉鎖的ということですか?」

私の問いかけにキスリング少将が頷いた。閉鎖的か……、となれば……。
「キスリング少将、少将は我々第六課の前身が何か、お気付きでしょう?」
キスリング少将は一瞬躊躇った後答えた。
「……社会秩序維持局、ですね」
「そうです」

社会秩序維持局、帝国内でこれほど評判の悪い組織は無いだろう。帝国臣民を弾圧し監視し続けた。前年の内乱ではクーデターを起そうとし、憲兵隊に潰されている。内乱終結後に組織は取り潰された。多くの人間が喝采を挙げたはずだ。

しかし国家が有る以上、国家を危うくする存在を監視する組織は必要とされる。社会秩序維持局は潰されたが消滅したわけではなかった。名前を変え、権限は遥かに縮小されたが帝国広域捜査局第六課として存在している。

「社会秩序維持局は一度地球教について調査をしています」
「それで」
「大した事は分かりませんでした。調査と言っても形式的でおざなりなものだったようです。ただ、その中で気になる事が書かれていました」

「気になる事ですか……」
「ええ、地球教は極めて閉鎖的な宗教であると。宗教なら採算は度外視するかもしれません。そうは思いませんか?」
「……」

 
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