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選挙

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第一章

                 選挙 
 かつて田中角栄は選挙に勝てなければ政治家として駄目だと言っていた、まず選挙に勝たねばならないとだ。
 このことを今県議員の西岡修平は実感していた、彼は事務所で選挙スタッフに対してその四角い顔で言った。
「いよいよだね」
「はい、選挙ですね」
「選挙がはじまりますね」
「いよいよ」
「この時が来ましたね」
「私はこれまで主張した政策を議会で通してきた」
 西岡は自分の功績を話した。
「このことは選挙でも訴えよう」
「実績ですね」
「それは確かにありますね」
「五期二十年の間で」
「先生はやってこられましたね」
「そうだ、教育に観光にインフラに」
 そうした県においての政策でというのだ。
「やってきた、このことを宣伝しよう」
「実際に市や町の上下水道も老巧化していましたが」
「新しくなりましたし」
「託児所も増やせました」
「観光のPRにもより力が入れられました」
「ご当地キャラやご当地ヒーローも増えました」
「それが観光につながっていますし」
 実際に西岡はこうした政策にも力を注いできて自らも積極的に乗り出していた。県内の市町村の長や役人達とも話をして。
「観光客も増えました」
「これは間違いなく先生の実績ですからね」
「選挙の時に宣伝出来ますね」
「間違いなく」
「やはりね」
 何といっても、というのだ。
「政治家は実績だからね」
「そうですよね」
「そうでなければ新鮮さですが」
「先生位の任期になりますと」
「やっぱり実績ですね」
「それがものを言いますよね」
「そうだよ」
 まさにというのだ。
「政治家は実績だよ」
「何もしていない政治家はアウトですね」
「それだけで」
「ましてや我々は組合とかのバックもないですし」
「余計に」
「そう、実績でね」
 まさにそれでというのだ。
「宣伝しないとね」
「いけないですからね」
「ですからまずは実績を宣伝して」
「それでやっていきますか」
「前回と一緒で」
「そうしよう、それとだけれど」
 岡島はさらに言った。
「もう一つあるね」
「はい、票田ですね」
「先生の地元は安心ですが」
「最近東の方で支持が落ちてますからね」
「あっちの野党の議員が人気があります」
「辻本水保さんだね」
 市民活動家あがりの女性議員だ、議会では環境だの福祉だのばかり言っている。その支持母体には労働組合がいる。
「彼女がね」
「はい、組合票をがっちり掴んでます」
「老人層や女性からの票も多いです」
「先生の支持がその分減っています」
「これが問題ですね」
「どっちも問題だね」
 老人票に女性票もというのだ。
「老人票も多いし」
「はい、先生の政策はちょっと違いますし」
「託児や水道や観光で」
「灌漑とかのことで」
「教育も学校で」
「そう、工場の誘致もね」
 これも西岡が勧めてきた政策の一つだ。 
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