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狐の穴

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第四章

「何があった」
「実は」 
 二人は和尚の叱らないという保証を受けだ、そのうえでだった。
 寺の一室で事情を話した、話を聞いた和尚はまずはこう言った。
「だから言ったであろう」
「はい、本当にいるとは」
「化ける狐が」
「しかも穴に」
「いないと思っていたのですが」
「いるものじゃ」
 和尚は二人に冷静な声で話した。
「化ける狐もその居場所もな」
「まさかと思っていたのですが」
「本当にいてです」
「穴に来た人間を探して穴に入った落とし前をつけさせる為に来るとは」
「信じていませんでした」
「わしは嘘は言わぬ」
 和尚は二人に強い声で言った。
「あの山のことは昔から言われておってじゃ」
「実際にですか」
「今の我等の様に」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「逃げても見付けられてじゃ」
「殴られてきた」
「そうなのですか」
「だから忠告したのじゃ」
 狐達のことをというのだ。
「強くな」
「申し訳ありません」
 二人の小僧は和尚に頭を下げて謝った。
「お師匠様のお言葉を信じなかった為に」
「この様なことになり」
「謝ることはない、しかし御主達も殴られたくないであろう」
 和尚は頭を下げる二人に問うた。
「そうであろう」
「はい、それは」
「やはりです」
「何とか逃れたいものです」
「我等も」
「そうじゃな、狐達は間違いなくこの寺に来る」
 小僧達を穴に入った報いとして袋叩きにする為にだ。
「それもただ来るのではないで」
「ではやはり化けて」
「そのうえで」
「そうじゃ、化けてじゃ」
 まさにそうしてというのだ。
「来る」
「やはりそうですか」
「化ける狐だからこそ」
「人に化けて来る、しかも大勢でじゃ」
 一人ではなく、というのだ。
「ならやり方がある」
「と、いいますと」
「どうされるのですか」
「見ておれ、わしに考えがある」
 和尚は目を鋭く光らせて二人に答えた。
「見ておれ」
「はい、それでは」
「宜しくお願いします」
 二人は今は和尚にすがるしかなかった、そして実際にだった。
 数日後何十人もの尼僧達が寺にやって来た、何でも比叡山まで行きたいとのことだが。
 和尚から事情を聞いていた寺の僧侶達もだ、その尼僧達を見てすぐにわかった。
「来たか」
「うむ、来たな」
「いきなり尼僧が何十人も来るなぞ」
「一服を求めてとはいえ」
「あの尼僧達は狐じゃ」
「あの山の狐達じゃ」
「間違いないわ」
 見てすぐに察したのだった。
「ではな」
「お師匠様の言う通りにするか」
「既に用意してある」
「それでいくか」 
 僧侶達も二人以外の小僧達も彼等の間で話をしてだった、そのうえで。
 既に和尚が話していた用意をした、和尚は何も知らない顔で尼僧達を招いてだった。
 彼女達にだ、にこやかに言った。 
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