SAO~円卓の騎士達~
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第八十三話 新世界に漂うラグナロクの気配
~和人 side~
三月特有の暖かい日と寒い日が交互に訪れる最近
俺達ALOプレイヤーはある事を楽しみにしていた。
それは大規模アップデート。
神の地アースガルズ、灼熱の地下帝国ムスプルヘイム、極寒の地下森林ニブルヘイム、死者の都ヘルヘイム。
これら四つの新マップが解放され、それに合わせて新モンスター、新装備、新アイテム、新クエストが実装される予定だ。
そしてその為のメンテナンスが昨日の夜から始まっており、今日の夕方に終わる予定なのだ。
直葉「楽しみだな~♪」
和人「その言葉、朝から聞きすぎてそろそろ耳にタコが出来そうなんだが。」
いや、結構マジメに。
今回のアップデート後、俺達『円卓の騎士団』はギルド全体でのマップ探索はしない。
それぞれがそれぞれで動く。
尤も、行く場所は全員が4マップの内、最も安全なアースガルズなので結局全員での行動になることは目に見えているのだが。
和人「っと、スグ! 急いで帰らないとメンテ終了に間に合わないぞ!」
直葉「えっ? あっ! ホントだ!」
和人「走るぞ!」
直葉「OK!」
スグと二人で全力疾走。
今なら百メートル、十秒台で走れる気がするぜ!
~side out~
~キリト side~
走ったお陰でALOにメンテ終了と同時にログイン出来た俺は何時ものギルドホーム、ではなく、二十二層の我が家で目を覚ました。
それと同時に隣にはアスナが現れており、ユイも俺達の間で笑顔を浮かべていた。
装備を整え、アースガルズへと向かう。
新エリアが一つ、アースガルズは世界樹の頂上のその上に現れた巨大な城壁+扉を入った先にあるらしい。
その為、世界樹の頂上へと向かうプレイヤー達の姿があちらこちらに見える。
因みにムスプルヘイム、ニブルヘイム、ヘルヘイムの地下エリアはヨツンヘイムの中央にある世界樹の根の街『ミズガルズ』の地下に出来た下り階段を降りた先にあるらしい。
そして世界樹の真上に雲の上に建つ巨大な城壁が見えてきた。
ユイ「わぁ~~、大きいですね~。」
キリト「新マップ一つで新サーバー群丸々一つ使ったらしいからな。 多分、中も凄いことになってるんだろうな。」
アスナ「楽しみだね。」
ユイ「はい!」
と、話していると肩に手を置かれ、後ろを振り向くと、
キリト「おっ、キバオウにディアベル。 久し振りだな。 やっぱり新マップに?」
キバオウ「せや。 Mトモに載せる為の撮影とクエスト探しや。」
アスナ「あれ? 何時もは私達のところにアルゴさん経由で依頼を出してたような。」
ディアベル「そうだね。 けど、ここのところ情報管理のデスクワークばかりだったからね。 仮想世界とは言えど、体を動かしたくなって。」
キリト「じゃあ、一緒に動くか? 久し振りで勘が鈍ってるかもしれないし。」
キバオウ「じゃ、お言葉に甘えさせて貰いますわ。」
そして、キバオウ、ディアベル、俺、アスナの五人で城壁の扉に向かっていく。
すると扉の所で一人の男性、と言ってもトールとくらいのサイズの人が立っていた。
キリト「こいつは、門番のヘイムダルか。」
ヘイムダル、北欧神話の光の神の一人でその目は昼夜問わず、百マイル先を見渡すことができ、僅かな音も聞き分け、さらに未来予知も出来たと言う。
ラグナロクの時にはロキと戦い、相討ちになって死ぬ。
そして、扉を通って奥に進んでいく。
しばらくは雲の中を進んでいるような感じだったが、突如雲が晴れ、見えてきたのは、
アスナ「わぁ~、凄い景色。」
谷の間にある巨大な街だ。
ユイ「手前の巨大な街がアースガルズの主要都市ユーダリル、奥に見える小高い丘がイザヴェルです。 街の彼方此方に見える大きな建物は神々が住む神殿と思われます。」
キリト「ってことは街の周りにある森の木は全てイチイの樹か。」
アスナ「キリト君、NPCが妖精じゃなくて人間だよ。」
キリト「本当だ。」
よく見ると、見える範囲だけでも人間のNPCがかなり居る。
キリト「さて、そこの記者二人、街に行くか? それとも丘に行く?」
ディアベル「取り敢えずは街かな。 街にある施設の情報も欲しいし。」
そして五人で街に降りていく。
そこまでは良かった。
あぁ。 実に適切な判断だった。
「では、皆様ここで暫くお待ちください。」
キリト「何で、何で俺達がヴァルハラに来なくちゃいけないんだ!?」
アーサー「諦めろ、キリト。 主神オーディン直轄のワルキューレ部隊に囲まれたんだ。 逃げる事はおろか、戦えば最悪の場合、神々と敵対関係になる可能性だって有ったんだ。 仕方が無い。 あぁ。 仕方が無いんだ。」
半ば自分に言い聞かせるように言うアーサー。
何故か『円卓の騎士団』全員集合である。
理由は十数分前に遡る。
街に降りた俺達五人はあちこちを回り、武器屋や宿屋等の施設を見ていた。
と、その時。
アスナ「キリト君。」
キリト「あぁ。 分かってる。」
キバオウ「ん? どないしたん?」
キリト「囲まれた。」
ディアベル「っ!? 囲まれたって、プレイヤー?」
アスナ「いえ、NPCの様です。 けど、ただのNPCではありません。」
キリト「来るぞ。」
俺がそう言うと同時に俺達の前に何者かが舞い降りた。
綺麗な女性だが、武器と盾を持つ文字通りの『戦乙女』
キリト「ワルキューレ?」
「キリト様にアスナ様ですね? オーディン様がお呼びです。 私がご案内します。 付いてきてくれますか?」
キリト「断る、と言ったら?」
「オーディン様の命令により武力を用いてでも連れていきます。」
アスナ「拒否権は、無いのね。」
「ご理解がお早いようで助かります。」
キリト「キバオウ、ディアベル。 悪いが二人は別で行動してくれ。」
キバオウ「こっちは構わへんけど、平気なん?」
キリト「あぁ。 神々に喧嘩売った覚えは無いし、恨まれる覚えも無い。」
いや、有った。
神々の不死の源、『黄金林檎』の守り主である大鷲を倒しかけてしまった事だ。
けど、それならアスナは関係無いはず。
だとしたら、後は、、、、スリュムの件か?
「こちらです。 私に付いてきてください。」
そう言って歩き出すワルキューレ。
俺とアスナはそれを追いかけて歩き始める。
そして着いたのが、オーディンの居城ヴァルハラ、死んだ英雄達の魂が集う場所でもある。
俺達がそこに着いたときには既にアーサー達が居た。
そして現在に至る。
アーサー「アップル。」
キリト「ルール。」
アーサー「ルーブル。」
キリト「くっそ! また『る』かよ!」
アーサー「ハッハッハ! 俺にしりとりで勝とうなど百万年早いわ!」
リズ「いや、何してんのよ。 あんた達。」
アーサー、キリト「「何って、、暇潰し。」」
それ以外に何の理由が?
「それではここでお待ちください。」
クライン「道案内ご苦労様です。 ワルキューレさん。」
デレッデレの顔したそろそろいい年になる大人と仮想世界の開発者がやってきた。
クライン「おお! お前らもか!」
サクマ「あぁ。 実に不本意ながらだがな。」
ランスロット「そう毒を吐くことも無いだろう。 他のプレイヤーよりも先にヴァルハラの中に入れただけでも相当の幸運と喜んでも良いと思うがね。」
アルゴ「そーそー。 情報屋としては情報の宝庫なんだからナ。 不貞腐れることも無いだロ。」
アーサー「面倒事に巻き込まれそうな予感がしまくってるのを嘆いてるんだよ!」
アーサーの言う通りだ。
何故俺達だけこうも面倒事に巻き込まれるのか。
どうやら運命の神様は俺達の事が嫌いらしい。
「お待たせしました。 オーディン様が奥でお待ちです。 どうぞ、奥へ進んでください。」
ストレア「主神オーディンかぁ。 どんなキャラなんだろ?」
フィリア「お宝貰えるかなぁ?」
シリカ「楽しみだね、ピナ!」
雑談をしつつ奥へと進む。
そして巨大な扉をくぐった先にオーディンは居た。
右眼が無いようでその部分には眼帯を付けており、逆に左眼は黄金色に輝いている。
顔の下部には白く長い髭を蓄えているものの、皺が一つもなく若々しい雰囲気を感じ取れる。
つばの広い帽子を被っており、体が黒いローブで覆い、右手には非常に長い杖を持っている。
オーディンの周りには二羽のカラス、二匹の狼、そして六本足の馬がいた。
二羽のガラスの名はフギンとムニン、二匹の狼の名はゲリとフレキ、そして愛馬であるスレイプニル、どれも聞いた事のある名前で、特にスレイプニルは有名どころだ。
オーディン「よく来てくれた。 妖精の騎士達よ。 まずは少しばかり強引な手を用いて招いたことを詫びよう。 この度、貴公等を招いたのは一つの感謝と二つの警告をするためだ。」
アーサー「感謝に、警告?」
オーディン「まずは霜の巨人族からノルン三姉妹と彼女らの湖を守り、霜の巨人族の侵攻を阻止したことを感謝する。」
アリス「あれはアルヴヘイム崩壊の危険性があって、」
オーディン「霜の巨人族の狙いは黄金林檎。 あれを取られては我らアース神族の存続にも影響した。 目的は違えど我らアース神族は貴公等に助けられたのだ。」
ユージオ「そういうことなら。」
オーディン「そして、警告だが、まず、黒騎士と騎士王、無知故の過ちとは言え、黄金林檎の近くまで近付いた事。 無視できるものでは無かった為、この場で警告する。」
アーサー「いや、もうホントに二度とやらないんで。」
オーディン「なら良いが。 そして二つ目の警告は『ラグナロク』についてだ。 アレは必ず起こる。 地下にいるロキ一族、霜の巨人族、炎の巨人族、死者の魂は我等の持てる勢力とほぼ同等の勢力を持つ。 我等アース神族は奴等と相討ちでも構わない。 だが、その場合、倒せなかった勢力、残った勢力を倒すための力が居る。」
シンタロー「つまり俺達とアンタ達で『ラグナロク』の戦いの同盟を組む、と?」
オーディン「簡潔に言えばその通りだ。 出来ることなら他の妖精達とも手を組みたい。」
アーサー「分かった。 こっちからも何か手を打つ。」
オーディン「そうしてくれると幸いだ。 ではまた会おう。」
そう言うとオーディンは消え去った。
「出口までご案内します。 こちらへどうぞ。」
それと同時にワルキューレが現れ、俺達を案内する。
シンタロー「まさかラグナロクについて話すとは。」
アーサー「こうなると、そう簡単に避けて通れる物ではなさそうだな。」
ランスロット「オーディンの口調からしてプレイヤー全員参加型の大型イベントの可能性が高い。」
キリト「となると、早い内から戦力をかき集めないとマズイかもな。」
アーサー「かといって、他のプレイヤーに話しても、ALOの崩壊なんて突拍子もない話、信じて貰えるわけがない。」
シンタロー「ラグナロクについて発表されたと同時に他の奴を引き入れるのが最善か。」
その後結局全員でアースガルズを散策することになった。
~side out~
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