提督はBarにいる。
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変わりダネ!おにぎり特集④
「おにぎらず~?何ソレ。」
「私知ってるよ!最近流行ってるサンドイッチみたいな形のおにぎりだよね!」
勉強熱心だな、しおい。鈴谷はもう少し流行りの料理とかも勉強した方がいいぞ?
「いーんですぅー。鈴谷は知ってるメニューを更に美味しくして彼氏を満足させてるからぁー。」
ハイハイ、わかったわかった。そう言いつつも、頬を膨らませて拗ねている鈴谷である。そう、最近流行りの『握らないおにぎり』のおにぎらず。実は元祖は料理漫画の『クッキングパパ』なのだ。娘(だったかな?)の弁当に食べやすくて彩りよく、そして簡単に作れる物を、と主人公の荒岩が産み出した物だ。……個人的に似ていると言われているのは内緒にしておこう。
「でもあれって、難しいんじゃないの?四角くするの難しそうだし。」
「そうだよ~、それにそんな形じゃ切るときにグチャグチャになっちゃうんじゃないの?」
「そうならないような作り方も教えてやるから、安心しろ。とりあえず、具材の準備をしよう。」
おにぎらずはその見た目通り、あまり厚みが出る具材は向かない。その代わり、ご飯に合いそうな具材でなくとも、サンドイッチやハンバーガーに合いそうな具材でも合うという利点もある。まぁ、アレンジは人それぞれだから色々試してみるといいさ。その中でも今回は、俺が作ってウマイ!と思ったレシピ3つをご紹介しよう。まずは鮭フレークに一手間加えた簡単で豪勢に見えるおにぎらずから。
《鮭マヨチーズのおにぎらず!》
・鮭フレーク:大さじ3
・スライスチーズ:1枚
・サラダ菜:3~4枚
・ご飯:150g
・焼き海苔(全形):1枚
・マヨネーズ:小さじ2
・練りわさび:小さじ1/3
メインとなる鮭フレークはマヨネーズと練りわさびを混ぜ合わせておく。
「さぁ、こっからが重要だね!」
鈴谷の言う通り、ここからがおにぎらずの成形の手順だ。
①ラップを25cm四方にカットして敷いておく。
②ラップに対してひし形になるように焼き海苔を置き、ご飯の半分を10cm四方の正方形になるように、平らに均して敷く。※本来なら塩を振るのだが、今回は塩を混ぜてあるご飯を使っているので使わない
③ご飯の上にスライスチーズ、鮭マヨ、サラダ菜の順に載せ、その上に残りのご飯を載せる。
④海苔の角をご飯の中心に集めるように折り畳んで、少し引っ張るような感じでラップで包む。
⑤そのまましばらく放置。海苔がしんなりしてご飯に貼り付くのを待つ。(5~10分位が目安)
⑥ラップごとおにぎらずをカット。ラップで押さえ付けられているので型崩れせずにカットしやすい。
「……とまぁ、こんな感じかな?」
「「おぉ~!」」
2人は目をキラキラさせて完成したおにぎらずを眺めている。
「……食べるか?」
「「うん!」」
ずいぶんと味見と称して食べていると思うのだが、こいつらもよく食うなぁ。
「ん~!ちょこっと入ったわさびがいい感じだね!」
「鮭とチーズって合うんだねぇ~、意外!」
「そうか?スモークサーモンとチーズのサンドイッチってのは定番であるからなぁ。さほど意外でもねぇだろ。」
以前も言ったが魚介とチーズの組み合わせは絶妙だ。当然、鮭とチーズの相性もバッチリだ。さて、お次はボリュームたっぷりなおにぎらずを。
《カツサンド風おにぎらず!》
・一口ヒレカツ:1個
・千切りキャベツ:2枚分
・ソース:適量
・塩コショウ:少々
・ご飯:1/2合
・焼き海苔:1枚
まずは千切りキャベツを炒める。しんなりしてきたら軽く塩コショウをふる。
お次はヒレカツにソースを染み込ませる。両面にたっぷり染み込ませてやるとご飯にもソースが染み込んで一層美味いぞ。
あとはさっきの手順と同様、海苔を敷いてご飯を載せ、そこに炒めたキャベツ、ヒレカツを載せてご飯で蓋をして海苔で包む。
仕上げにラップを巻いてしんなりさせたらそのままカットして完成だ。
「お待ち、『カツサンド風おにぎらず』だ。」
「おっほ~ぅ♪これはまた男子が好きそうなメニューだねぃ♪」
彼氏に作ってやるつもりの鈴谷にはうってつけのメニューだろう。しかし、しおいは渋い顔をしている。
「どうした?しおい。」
「うーん、これも美味しいんだけどね?これで大鯨さん喜んでくれるかなぁ?」
あぁそうか、流石にこのおにぎらずだと大鯨には重いか。うーむ、何か良いものは……あ、昨日残ったグリーンサラダが確かあったっけな。あれ使って野菜たっぷりのサッパリしたおにぎらず作るか。
《ちょっとオトナなサラダおにぎらず》
・ご飯:150g位
・グリーンサラダ:ご飯の1/3位
・生ハム:2~3枚
・スライスチーズ(味の強いチェダー推奨):1枚
・焼き海苔:1枚
・バジルソルト:適量
手順は先に作ってたおにぎらずとほぼ一緒。海苔の上にご飯を敷き、そこに残り物のサラダ、ちぎった生ハムを載せ、更にスライスチーズもちぎって載せる。ご飯で蓋をして海苔で包み、後は切るだけ。生野菜入ってるから、濡れ包丁の方が切りやすいだろうな。……あ、後は作りたてのサラダ挟むと失敗するかもな。瑞々しすぎてご飯がベチャベチャになるかも。できれば残り物のサラダとかを使うのが無難か。
カットしてその断面にバジルソルト振ったら完成。この一手間がいい味出してくれるんだよな。
「味見してみな?さっきの2つよりはサッパリしてる筈だ。」
そう言ってしおいに出来立てのを手渡してやる。一口かじると野菜のパリパリ、シャキシャキという歯応えがいい感じだ。そこにバジルの良い香りと、生ハムとチーズの塩気と旨味が混じりあってちょっと高級なサンドイッチを食べてる気分だ。
「うん!これなら大鯨さんも喜んでくれるかも!」
「そいつぁ良かった。……ま、頑張って作れや。」
「「ありがとうございました!」」
2人は感謝の言葉を言うと、嬉しそうに出ていった。
~数日後・夜~
「……店長。」
「なんだ?」
「……暇ですね、珍しく。」
「たまにはいいさ。」
客のいない店内で、会話を交わす俺と早霜。俺は煙草に火を点け、ふかしながらキッチンを磨く。早霜も普段磨けていない棚の奥にあるグラス磨きに着手したようだ。……と、扉が開かれ、客が1人ヨロヨロと入ってきた。
「おぅいらっしゃ……ってどうした大鯨!?」
席に着いた大鯨の様子に驚いた。顔は涙と鼻水でグチャグチャで、酷い顔だ。しかもまだ泣き足りないのか、ヒックヒックとしゃくりあげている。
「て、提督~~!」
うわああぁぁぁぁん!とカウンターに突っ伏して泣き崩れる大鯨。一体どうしたと言うのだろう。
「まぁ落ち着け。何か飲むか?」
「じゃ、じゃあ梅酒ソーダを……。」
任せた、とに目配せをすると、わかりましたと無言で頷く早霜。早霜が支度している間に大鯨の隣の席に座る。
「一体どうしたってんだ?今日は確か潜水艦の連中とピクニックだったろ?」
そう、今日はしおいが企画していたピクニックの日だったのだ。日頃の感謝をこめてそれは美味い弁当を作ったのだろう。その席で喧嘩でもしたのだろうか?
「私、私嬉しくて……!」
「え、じゃあ何か?弁当を作って貰ったのが嬉しくて、感動のあまりにこんなに泣いてんのか?」
「そ、そうです……。」
呆れたぜ。ある程度は予想してたが、ここまで大泣きするとは思っても見なかった。
「なぁ大鯨、感動して泣きたくなるのは解るがよ、しおいを始め潜水艦の連中はお前に笑ってて欲しいんだ。」
「ふぇ?」
「それに、美人に涙は似合わねぇからな。……ほれ、ハンカチ貸してやるから顔拭きな?」
そう言ってハンカチを差し出してやると、早霜が梅酒ソーダのグラスを2つ、差し出してきた。
「店長は大鯨さんのお相手してください。お客様も他にいらっしゃいませんし。」
『ジゴロの腕の見せ所ですよ、提督。』
早霜は俺にだけ聞こえるように、ボソリとそう言った。ったく、誰が女誑しだっての。…まぁ、このままの状態の大鯨は放っておく訳にもいかんからな。今晩は早霜に従っておくさ。
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