ガンダムビルドファイターズ ~orbit~
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レイ 後編
ーーー--
「………………」
行くアテもなく歩き、とにかく遠くに行きたかった。もう頭の中がグシャグシャになり、何も考えたくなかった。
「………………いっそ、このまま死にてぇよ」
そう呟くも、回りの騒音でかき消される。今になって騒音に気づき、路地裏を歩いていたようだ。だが、特に気にすることもなく歩みを進めていく。
すると、誰かと肩をぶつけたが、気にすることもなく歩く。だが、相手は気にしたのか俺の肩を掴んできた。
「おいおいおい兄ちゃんよぉ。人にぶつかっといて謝罪無しなんてどうかしてっぜ? 」
「…………悪い」
掴んだ手をほどき、再び歩き出す。
「そういうことじゃねぇんだよぉ。慰謝料ということで、持ち金を全部寄越せよ」
「…………あいにく、今は持ってねぇんだ」
振り返って、三人組の男に向かって言う。まあ、多分次はベタなセリフが来んだろうがよ。
「じゃあ、体で払ってもらうしかねぇなぁ。ちょっとこっち来いや」
今度は腕を掴まれ、引きずるように連れ出される。
……………なんなんだよ………どいつもこいつも……。
「あんまり反応ねぇなぁ。じゃあ合意ってことで、始めさせてもらうぜ! 」
一人の男が俺の腹に目掛けて殴ってきたが、寸前で腕を掴んで止める。
「なっ!? 」
「───んだよ…………」
「あ? 」
「なんなんだよ…………なんで、こんな目にばっか合わなきゃいけねぇんだよっ! 」
腕を放し、右手に力を込めて男を殴り飛ばした。
ーーー--
「聞いた奥さん?なんか路地裏で喧嘩があったそうよ」
「まあ奥さん?それは本当なんですか? 」
「物騒よねぇ」
「私達の子供にも、路地裏には行かないように伝えないとねぇ」
「子供は好奇心が旺盛だからねぇ」
そんな会話が耳に聞こえ、思わず足を止める。
喧嘩…………可能性はあるかもしれない。念のため向かってみよう。
そう思い、すぐに路地裏に向かう。何かあった時のために、すぐに誰かに連絡を出来るようにする。
路地裏に入り、辺りを見回しながら歩く。ゴミやパイプや猫などがあるイメージだったが、思ったよりも綺麗で通りやすい。まるで、人が出入り出来るようにしてあるかのようだ。
そのまま奥に進んでいくと、開けた所に出た。ちょうど車が三台ほど止められるぐらいの広さで、はじには気絶している男が三人いた。ボロボロの様子からして、喧嘩をしたのはコイツらだろう。
話を聞くために、一人の男の頬を叩いてみる。すると、うなされながらも目を覚ました。
「ひっ!すいませ───てあれ? 」
「話を聞かせてもらおう。ここで生意気そうな顔をした男を見なかったか? 」
「へ、へへ…………もしかして知り合いか?わりぃが教える気はな───」
男が何かを言い切る前に、顔面に向けて拳を突きつける。当たる寸前で止めたが、男は腰を抜かしたのか後ずさっていく。
「知っているようだな。ソイツはどこに行った?言わなければ次は当てるぞ」
「そ、それなら多分、その奥に向かってったと思います!俺も気を失いかけてたから、確かかはわかんねぇ! 」
「そうか。情報感謝する」
立ち上がって路地裏の奥を見据える。すると、第三者の声がこの場に聞こえた。
「あれ?もしかして、喧嘩してたのって…………サクラ? 」
「アキザワ セイヤか。私がそのような事をするはずがないだろう」
「いや、その人凄いビビってるけど…………まあいいか。それより、どうしてこんな所に? 」
「貴様こそ、こんな所でどうした?頭を冷やすため散歩すると言っていたが、散歩で来るような所ではないぞ? 」
「それはこっちのセリフだよ」
お互い暫しの間沈黙し、アキザワ セイヤはため息を吐く。
「多分目的は同じでしょ?その人から何か聞けた? 」
「奥に向かったと言っている。私は真実を確かめるために行くが、貴様はどうする? 」
「女の子一人じゃ危ないから、俺も同行するよ」
「ふん。貴様に守られるほどやわではない」
ーーー--
「くそっ!ここにもいねーか! 」
息を整えながら、公園全体を見回す。公園、広場、学校周辺、それなりに開けた所がある場所を目安に探し回るが、一向に見つからない。
「もうほとんど潰し回ったし、そろそろ見つかってもおかしくねーよな?下手な鉄砲も、数撃ちゃ当たるってな」
我ながら上手く例えたと思い、次の場所を考える。
「アマネとセシリアちゃんからも連絡は来ねーし、まだ見つかってねーんだろーな。サクラ先輩が探してるってことは、アキザワ先輩も探してるだろーしな」
カグラ…………こうして皆が、必死にオメーの事を探し回ってんだ。あとでなんか奢れよ?
「その前に、見つけなきゃいけねーけどな! 」
ーーー--
「…………」
ワンワンッ!
目の前には、一匹の野良犬がいた。
「イヌ…………じゃなく、レイをサガさないと」
ワンワンッ!
…………スコしサワってイコう……カナ。
ーーー--
「はあ……はあ……」
息を荒げながら、カグラ君を探し回る。私が倒れてからかなり時間は経ってるけど、そこまで遠くにいってないはず。
「はあ……はあ…………」
走り疲れたため、一度止まり呼吸を整える。
「どこに行ったのよ…………あの馬鹿」
日も完全に沈み、顔をあげると、雲一つない夜空が広がる。
「諦めないわよ…………だから、アンタも諦めるんじゃないわよ、カグラ君」
ーーー--
「痛ぇ…………くそっ。一発貰っちまった」
頬に出来た痣を擦りながら、歩いていく。人を殴ったおかげなのか、ごくわずかながら気が晴れた。
「…………ははっ。なんだよそれ。まるで不良じゃねぇかよ」
いや、不良よりタチが悪ぃか。実際に突っかかってきた奴等を痛めつけたしな。
「もう…………なんでもいいか」
そう呟くと、いつの間にか知らない場所に来ていた。孤児院から結構歩いてきたつもりだが、これじゃあ帰り道も分からない。
「まっ、今は帰るつもりはねぇけどな……」
孤児院があるであろう方向を一瞥し、前を向くと、河川敷が目に入る。
「少し歩き疲れたな…………ちょっと休むか」
河川敷は橋の下に川が流れ、ちょうどいい感じに芝生もある。 そこまで移動し、芝生の上に倒れる。
「…………星が見えんな」
夜空を見上げると、所々に星が見える。数は決して多くないが、今まで見てきた中でも一番多く見える。そのせいなのか、吸い込まれるように星空を見入る。
……………これからどうすっかな………。そういや、金どころか会場に荷物忘れてるじゃねぇかよ。あとで取りに行くか?いや、多分閉まって無理だろうな。
「はぁ……………」
大きくため息を吐くと、突然星空が遮られた。その代わりに、白銀の何かが視界に入った。
「ミツけた」
「うおっ!?セ、セシリアっ!? 」
目の前には、俺の顔を覗き込むセシリアがいた。
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