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真田十勇士

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巻ノ七十 破滅のはじまりその十三

 秀次を守りいざという時は救おうと決意し動こうとしはじめた、そして。
 その彼にだ、家臣の一人が伝えた。
「ご子息であるか」
「はい」
 その家臣は幸村に畏まって答えた。
「それも母子共にです」
「お元気か」
「随分大きな赤子とか」
 家臣は幸村にこのことも話した。
「お身体もお声も」
「お元気なのじゃな」
「それもかなり」
「そうか、危険なことになった」
 まさにとだ、幸村は述べた。
「これは」
「と、いいますと」
「関白様に何かあればじゃ」
 幸村は己の言葉にいぶかしむ家臣にさらに言った。
「その時は拙者にすぐに伝えてくれ」
「わかりました、では」
「その様にな」
 幸村は家臣に告げた、そしてだった。
 その夜星を見てだ、十勇士達に言った。
「ようやくわかった」
「星の動きが」
「それが」
「うむ、これまで凶兆を見てきたが」
 夜の空に出ていたそれをだ。
「わかった、そういうことであったのだ」
「太閤様のお子はご子息だとか」
「では、ですな」
「そのことが」
「まさに」
「凶兆となる、関白様にとってだけでなく天下にとっても」
 その夜空を見ての言葉だ。
「大変なことになる、だからな」
「はい、では」
「関白様をですな」
「何とかお護りせねば」
「天下泰平の為にも」
「ただ、父上から言われた」
 十勇士達にもこのことを話した。
「家のことを第一に考えよとの」
「真田家の」
「我等の家の」
「そう言われた、そのうえで全身全霊を使い」
 そしてというのだ。
「関白様をお護りしよう」
「お家も関白様も」
「どちらも」
「欲を張りたくなった」
 こうも言った幸村だった。
「必ずな」
「ではその殿の欲に」
「我等も共に進みます」
「無欲な殿が珍しく出された欲」
「それに」
「頼むぞ」 
 こう話すのだった、そしてだった。
 幸村はその話を聞いてあらためて誓った、秀次を護ることを。武士として己を認めてくれた相手に対して。


巻ノ七十   完


                            2016・8・22 
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