世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
キバ ~コン・ズランチョ♩出逢い~
一台のバイクが都心の道を行く。
乗っているのは20歳の青年、紅渡である。
「なあ渡。どこに向かっているんだ?」
「どことなく・・・・・かな?なんだか走りたくなったというか、外に出たいと思ったというか」
「ふぅ~ん。ま、最近はファンガイアとの戦いはもうないだろうしな。のんびりすんのも悪くないよな」
渡が話しているのは、手の平に乗りそうなサイズをしたコウモリ型モンスター、キバットバットⅢ世だ。
渡のバイクに何の苦もなく着いて行っているのは流石というしかない。
彼等の言うファンガイア。
それは人間の命のエネルギー、ライフエナジーを喰らうモンスターだ。
最近まではファンガイアと人間は敵対関係にあったが、ファンガイアの王との和解により、共存への道を進んでいる。
「それでよ、渡・・・・・・渡、そこ、人が倒れてんぞ??」
「え?」
渡がブレーキをかけてバイクを止める。
キバットが指摘した場所。
歩道によくあるベンチが一定間隔で置かれており、その一つに一人の青年が倒れて眠っていた。
「キバット・・・・・彼は寝ているだけだよ」
「なんだよ渡。オレを疑うのか~?オレにはわかる。こいつ、血の臭いがするぜ。多分、スゲエ怪我してる」
「え?」
確かに、よく見ると顔は血の気が薄く、ほんの少しだが苦しそうな顔をしているようにも見えた。
「じゃあこの人、寝てるんじゃなくて・・・・」
「気絶してんだよ。ほら」
キバットが翼を使って歩道の先を差した。
そこには点々と黒い水玉模様が残っていた。
いや、黒い水玉模様ではない。おそらく出来たばかりの時はまたあれは赤い水玉模様だったはずだ。
渡が青年の上半身の服を破いて見た。
そこには真っ黒になった包帯があった。
それしかなかった。
「こ、こいつ一体・・・・」
「それよりも早く病院に・・・・・」
そこまで言った渡の腕を青年――――蒔風が掴んだ。
「病院は・・・・・・よせ・・・・・・退院とか・・・・・・すぐにできないだろ・・・・」
「じゃあどこに運びゃいいんだよ!?」
「ダメです。キバット、彼を兄さんの病院に運ぼう!」
「病院は・・・・・ゴブァ」
「わー!わー!わー!キ、キバット、早く行こう!」
「おっし!!」
「世界め・・・・こういう出会いかクソッタレぇ・・・・・・」
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蒔風が運ばれたのはある病院。
この病院を経営している会社のトップが彼、紅渡の兄なのだそうだ。
「渡!!どうした!?急に連絡をよこすだなんて」
「兄さん!!この人拾ったんだけど、酷い怪我なんだ。見てみてくれる?」
「わかった。少し待ってろ」
渡が病院に蒔風を預け、検査結果を待つ。
そしてほどなくして医師と共に兄、登太牙が出てきた。
そして医師に二言三言伝えてから、渡の元へとやってきた。
「もう検査終わったの!?」
「ああ・・・渡、こっちへ」
どうやら人には聞かせられないような内容だったららしく、応接室に招かれ、そこで話を受ける。
「なにがあったの?」
「・・・・何処から話そうか・・・・・」
太牙は話の切り出しに困っているようだ。
二、三分考えて、それから口を開いた。
「彼だが・・・・・本来人間があれだけの傷を負って生きていられることはないそうだ」
太牙が蒔風のレントゲン写真を渡に見せる。
そこには斜めに切り裂かれた傷、切断された肋骨、そしてそれらを強引に何らかの力で接着した跡があった。
「ッ!!・・・・じゃあ・・・彼はファンガイアだったの?」
「それも違うんだ。あの男はファンガイアではなかった。それでいて人間でもあり得ない。これを見てくれ」
太牙がさらにカルテを見せる。
そこに書かれているのはほとんどがドイツ語でわからなかったが、ズラリと書かれた文字がなんのものか、渡は何となくわかった。
「これは・・・・まさか」
「彼の肉体に残っていた傷跡のすべてだ。その内の六割が致命傷、三割が重傷だ。致命傷一発でも死んでしまうような怪我をしている。医師もなぜファンガイアでもない彼がここまで生きてこれたのか首をかしげていたよ」
渡はそのカルテに絶句する。
自分も今まで多くの敵と戦ってきた。死にかけたことも多い。
だが、これほどの死を一身に受ける彼はいったい何者なのか。
そう渡と太牙が考え込んでいると、コンコン、と扉がノックされ、医師が血相を変えて飛び込んできた。
「た、大変です!!さっき搬送されてきた若者が、逃げました!!!」
「な!?」
「なんだと!?」
「本人は「もう大丈夫だから」と言いながら立ちあがっていたのですが、当然我々が認められるわけもなく・・・・止めたのですがすでに病院の外に!!!」
「これだけの怪我で・・・・・」
渡がカルテを握り潰して部屋を飛び出す。
太牙がそれを止めようとするが、医師に一枚のメモ用紙を渡されて携帯を取り出した。
「・・・・・あ、太牙です。多分、そろそろそちらに大怪我をした若者が行くと思うので、はい、はい・・・・お願いします、嶋さん。では」
そののちに渡の携帯にも連絡を入れ、戻るように促す。
渡は納得しなかったが、理由―――メモ紙に書かれた行先を話したらあっさり了承した。
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「む、むごーーーーー!!!むふごごごごご!!!!!ふ・ぬ・へ!!!!ふごーーーーー!!!!」
二十分後
包帯でぐるぐる巻きにされ、病室に叩きこまれた蒔風がベットの上で唸っていた。
無論、顔までグルグル巻きだ。ミイラである。巻いかぜである。
「まったく・・・・嶋さんに言われてきてみればカフェ・マル・ダムールで人は倒れるわ、それを運ぶわで・・・・彼はいったい何者だ?説明しなさい」
軽い命令口調がデフォであるこの男は名護啓介。
人間に敵対するファンガイアと戦った戦士のバウンティハンターだ。
「それはまだわからないんです」
「だからあなたに連れてきてもらった。これから話を聞くところなんですよ」
「そういう事なら任せなさい。私の交渉術があれば、なにも隠し事はできない」
そう言って蒔風の頭を包帯から解放する名護。
蒔風はいったん暴れるのをやめ、言った。
「もう逃げないから放して?」
「嘘をつくのは止めなさい。丸見えだぞ」
「チッ!!」
本気で舌打ちした。こいつ完全に拗ねている。
舌打ちした時の顔はとてもじゃないが主人公の物とは思えないものだった。
「では・・・君の名前、職業、その怪我の事、尊敬する人の事、今まで何をやっていたかを答えなさい。そうすれば君に素晴らしい物を上げよう。そして私に着いてきなさい」
「名護さん・・・・」
「今日日そんな「素晴らしい物」なんて簡単な手に子どもだって・・・・・」
「素晴らしいモノか」
「「食い付いた!?」」
「ああ、そうだ。だから答えなさい。君の事を、教えなさい。そして私を尊敬しなさい」
「何をくれるの?」
「そうだな・・・・ではこの・・(ゴゾゴゾ)・・753Tシャツをあげよう。そして私を称えなさい」
「まさかそんなんで「名前は蒔風舜」ぇぇぇぇえええええ!?」
「職業は・・・なんだろうな。世界を守ってます・・・かな?尊敬する人は自分にできない事が出来る人。あと・・・今までの事と怪我の事はだな・・・・」
蒔風が説明を始めた。
それは世界の事と「奴」の事。
おそらくこのタイミングで集まるということは、きっと彼らは最主要、もしくは主要であるという蒔風の考えだった。
「なるほど・・・突拍子もない話だな」
「でもオレのこと、すべて説明するにはこれが一番だよ?」
「・・・・・わかりました、信じます」
「お?サンキュー。で、時にキバって言うのは・・・・・」
「僕です。僕は紅渡」
「オレはファンガイアの王たるキング、登大牙」
「私は名護啓介だ。覚えておきなさい」
一応の自己紹介がすみ、渡達の話も始まる。
今回、蒔風は傷を癒やしきれるのか・・・・・
to be continued
後書き
キバの世界!!!
アリス
「キバっていくぜのところですね?」
名護さんは最高です。
あれほど面白いネタキャラはいない。
ああ、ちなみにコン・ズランチョは「衝動的に、性急に」という意味です。
切羽詰まってます、今回。
アリス
「そういえば今回は22年前のキャラは出せるんですか?」
そうですね。この際はっきり言っておきましょう。
出ません
アリス
「それはなぜ?」
それは次回の後書きで話しましょう。
アリス
「次回、どうするタイムリミット?」
ではまた次回
その命、神に返しなさい!!
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