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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  真剣で私に恋しなさい ~無理矢理に勝利を掻っ攫え~


「まさに、最初から最後までクライマックスだな。いや?この場合、最期か」

「奴」がゴロリと蒔風を俯せに転がし、頭を踏み付けて大和に言った。


「直江大和。来い」

「殺されると解ってて行くと思うか?」

「こいつが・・・・・死ぬぞ?」


コツコツと蒔風のこめかみに爪先当て、脅しにかかる。
だが、大和はシレッとした顔をして言った。


「は?なんで?別にその人今日会ったばっかだし、そんな人の為に自分の命懸けられるわけないじゃん。もうちょっと考えろよ」

大和の言葉はあまりにも現実的だ。
確かに、大和に蒔風を助ける必要性はない。
しかも、蒔風は大和を助けに来たのだから、ここで出て行っては元も子もない。

それに、大和には確信があった。



「手間を懸けさせるなよ、めんどくせぇ」

「奴」が蒔風を踏み付ける足に力を込める。
そして、踏み抜こうと足を少しあげた瞬間、その足に矢が突き刺さった。


「あん?」


「奴」が矢が飛んできた方向を見ると、京が弓を構えていた。
その前には大和たちが群がっており、京の姿は隙間からしか見えない。


つまり京は大和たちの影に隠れて弓を準備し、「奴」が足を振り上げた瞬間に構え、狙いを定め、仲間達の間を縫って矢を速射したのだ。

「奴」はその腕に些か感心し、だといってもやることは変わらず、矢を足から引き抜き修復させて蒔風に足を踏み下ろした。



ダゴンッ!!


「奴」の足が地面を踏み抜く。
パチャンと蒔風の血が跳ねた。


だが、そこに蒔風はいない。
血だまりだけが、踏まれて跳ねていた。


「お?」

「やっべ・・・・」


蒔風は「奴」の足から少し離れた場所にいた。

そこでは蒔風の脚を風間が掴んで引きずっているところだ。


「脚、速いのな」

「あ、はは~~~どうも~~~~」

「邪魔」

「うわっとぉ!?」

「奴」が剣を横に薙ぎ、風間の首を狙う。
だが蒔風がうつ伏せのまま腕だけを振るって「奴」の足首を払った。軌道が上に逸れ、風間がその場でしゃがみ込み、「奴」の剣をかわす。


「んぉあ?まだ動くかお前」

「後は任せたぜ、モモ先輩!!」


「任せろ!!」


ドゴォ!!ズガン!!

百代が「奴」の目の前に現れ、拳を叩き込む。
「奴」がそれに反応し、腕で受けて、地面がクレーターの様に陥没した。


「勝てるのか?最強」

「勝つんです!」


更に由紀江が刀を構えて切り掛かってきたのを剣で受け止めて百代に蹴りを放つ「奴」


二人が「奴」を引き付けている間に風間が蒔風を引きずりそこから離れ、そこにガクトとモロが駆け寄って蒔風を運んだ。


「おい、大丈夫か?」

「まぁだ・・・・・・死なな・・・・い」

「急いで救護室に運べ!!こやつを死なせるな!!」


鉄心が叫びながら「奴」に向かう。
百代と由紀江が二人掛かりで攻めているというのに、「奴」は微塵にも苦戦してないのだ。

鉄心は老体なれども、今だに世界に名を馳せる武人だ。
単純な力では百代が上だが、総合的な戦闘力は今だに鉄心の方がが高いほどに。



その間に蒔風を救護室に運び込み、手当てを始める川神院の救護官達。
気を送り込んで出血を止め、輸血パックを運び込む。


蒔風の上半身を左肩から右腰にかけて裂いている斬り口はどす黒く染まっており、もはやなにがなんだかわからない。


そこを消毒し、縫い止めようとした医師の腕を蒔風がガシッ、と掴んだ。


「あ、あなた!?」

「まて・・・・・・そのまま気を送り続けろ・・・・・・・」

「死んでしまいます!寝ていてください!」

「よ、翼人は・・・・・・この程・・・・度じゃ・・・・・・死なない・・・・・血を・・・・・・よこせ」

医師が絶句する。
蒔風のその言に、その異様にギラギラした目に、戦慄した。
そして言われるがままに輸血パックを手渡した。


「はぁ・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・グフッ、ガホッ・・・・・・」


蒔風が血を吐きながら輸血パックを破いた。
零れ出た血は落ちることなく、圧水の力で宙に浮き、蒔風がそれを自分の身体に流し入れる。


その瞬間、蒔風の絶叫が響いた。

無理矢理に血を身体に流し込んだのだ。
今の身体ではその激痛が訪れるのは当然だった。

身体が崩壊しなかったのは彼が翼人であることと、川神院の院生達が気を送り込んでいるからだろう。


クリスや一子、京もそこに混ざっていたし、大和達はもはや願うしかなかった。



「ぎッッ~~~~~~~~~~ッア!!そのまま送れ・・・・・・・・できれば・・・・・・・願え!!」



血を噴き出し、だがその血をかき集めて再び体内へ。
更に肉体の強制再生。


蒔風の絶叫が続く。




------------------------------------------------------------



「カァァァァ!!毘沙門天!!」


鉄心が己の気を巨大な毘沙門天の姿と成させ、その一撃が「奴」を襲う。


「・・・・・・・ッフッ!!」


だが「奴」が闘気を噴き出し、それを掻き消す。
踏み抜こうとした足から消滅した毘沙門天の衝撃が鉄心を襲い、その身体が吹っ飛んだ。


「鉄心さん!!」
「ジジイ!!」


二人の額に更なる汗が滲む。
天下の武道四天王。そのうちの二人に加えて川神院総帥が束になっても勝てない否、勝負にならない相手。

しかも鉄心はやられてしまった。
死んではいないだろうが、戦えないだろう。

現状、もはや勝ち目はない。
由紀江はもはや最初に見せていた速さは出ないし、所々から血も滲みだしている。
百代は身体に怪我はなくとも、体力は確実に削られていっている。


「さぁて、お前らは主要人物。しかもメインヒロインだ。とりあえず殺すか。楽しかった。新たな世界で、またやろうか」

「は!大事な弟殺す奴と、んな約束したかないわ!!」

「ざぁ~んねん」


両腕を開いて「奴」が突進し、ラリアットのように腕が二人の腹部に減り込み、そのまま押しつづけられる。


「ッッ!!まゆ・・・・・ず・・・・」


あまりの勢いと速度に呼吸すらままならない。
「奴」の左腕に「く」の字になってへばりついている由紀江に百代が息苦しそうに声をかけるが、気絶してしまったようで、ぐったりとしてしまっている。

そこから脱出しようとするも、あまりの風圧に身動きができない。
だが、百代は知っていた。このまま「奴」が進めば、壁にぶつかる事を。

そしてこの速度でぶつかれば、自分たちの身体は腰から二つにブチ切られてしまう。
由紀江だけでもとその手を必死に伸ばすが、どうあっても届かない。


終わりか、と百代が本気で考えた時、男の声が聞こえた。





「人の事置いといてクライマックスやってんじゃねぇよ」





メキッ!!!!


その男の足の裏が「奴」の顔面に突き刺さり、二人の身体が勢いで飛び出していく。
そのままいけば壁に激突、ミンチになるところを、青龍、獅子がキャッチした。



「なんとか戦線復帰だバカ野郎」


蒔風が上半身を包帯でぐるぐる巻きにされ、その上に上着を羽織った状態で出てきて立っていた。



「青龍、獅子。二人と鉄心さんを運び込め。あと、大和を連れて来い」

「了解」


そんな蒔風を「奴」は顔面を抑えながらその指の間から睨みつけていた。



「てめ、もう回復しやがったのか・・・・・だが・・・・・」



ゴスッ!!!!!



「万全じゃあ、ねえだろ!?」


「奴」の膝が蒔風の腹部にめり込む。
閉じられた蒔風の口から血が吹き出、包帯をじっとりとした赤が染めていく。



だが蒔風はそれを押し込め、「奴」の両肩に肘を叩き込む。
ゴキボキと音が鳴り、「奴」の両肩を破壊した蒔風が、腹部に蹴りを入れて浮き上がらせてから踵を振り上げて「奴」の頭部を踏み抜いた。

ズゴン!!!と轟音が響き、衝撃が周囲を襲う。
その衝撃に、蒔風自身も血を噴いた。
包帯にも赤いラインが浮き上がって、傷が開いてきているのがわかる。


「ッ・・・が・・・・おおおおおおおおおおおお!!!!!!」



「奴」の四肢を「風林火山」の四本で地面に止め、さらに腹部に拳を突き入れ、内臓を引きずり出す。
長々とした肉がズルズルと出てきて、その部分から「奴」の血が噴き出し、蒔風を染める。


「フゥーーー、フゥーーー、フゥーーーーー・・・・・・・ヌゥアッ!!!!」


そしてそれを束にして引きちぎり、傷跡をぐちゃぐちゃに引っ掻き廻し始めた。


「この・・・・この・・・・・・このこのこのこのこの!!!!!」



「奴」の意識はもう無い。
ただ、ビクンビクンと不気味に体が痙攣し、未だに消滅しきらないことを表しているだけだった。


そこに大和がやってくる。
青龍と獅子に連れられてやってきた彼は、蒔風の戦いに多少なりの戦慄を覚えていた。

あれだけボロボロになった男が、なぜここまで最後に蹂躙しせめたのか。


この男は、想定されるようなまともな戦闘で勝利していない。
玉砕のように敵の攻撃を食らって反撃、そこから一気にエグイ戦いで勝利に持っていった。

つまり、これが土壇場の彼。彼の戦い方。
これが本来の、彼が持つ戦い方の本性。



それを考えての戦慄。
だが、そんな大和に蒔風が信頼を込めた声でこう言った。


「大和・・・・あとは・・・お前に任せる・・・・・オレには・・・・できん・・・・・グ・・・・バッ!!!!」


バッ!!!!ビシャッ!!!

青龍が連れてきた大和にそれを伝え、一気に血を噴き出し、蒔風がその場に倒れ込む。
それと同時に、音声が流れ、WORLD LINKが発動した。




【Maji de Watasi ni Koisinasai!】-WORLD LINK- ~WEPON~!!



蒔風の背に翼が現れ、それが移動し大和の背に銀白の翼が付与され、それが輝きを帯びていった。

「な、なんだよこれ!!!」

「主の力が一時的にあなたに移っただけです」

「早くやらねば、この世界にどんなものを残していくかわからん。やってしまえ」

「ど、どうすればいいんだよ!?」

「「さぁ?」」

「さぁっておい!!!」



大和がうろたえるが、そんなことは知らんとWORLD LINKが次の段階へと移る。



【Maji de Watasi ni Koisinasai!】-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~!!


その拳に蒔風の力のすべてが宿り、信じられないほどの光を放つ!!

「ち、チクショウ!!こうなりゃヤケだ!!!!おおオオオオオリャアアアアアアア!!!!!!」




ゴガッ!!!!ドゴォォッォォォォォォォォォォオオオオオオオ・・・・・・・




粉塵をあげ、エネルギーが「奴」の身体を中心にうずを巻いて、その体を吸い込んでいく。
そして圧縮されきったその渦が爆発を起こし、「奴」をこの世界から消滅させた。



「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」


大和が肩で息をしている。
そうしていると背から翼が蒔風の元へと戻って消えた。


ヨロヨロとした足取りの百代と由紀江を皆が支えながら歩いてくる。
それを見た大和は終わった、と思い、次の瞬間、蒔風の元へと駆け寄っていた。



「おい!!あんた、死ぬんじゃねえぞ!!!今すぐに病院に・・・ッ!?」



[Gate Open---Maji de Watasi ni Koisinasai]



大和が蒔風の身体を起こそうとしたと瞬間、ゲートが開き、強制的に蒔風の身体を呑みこんでいく。
大和にはどうすることもできなかった。


「大和!!蒔風はどうした!?」

「消えた・・・・」

「消えたって・・・・・どこにだ!?」

「多分、次の世界だ・・・・あんな状態で・・・・何をやらせるっていうんだよッ!!!!」



大和が憤慨する。
一体どこの誰だか知らないが、あいつを酷使しやがって、と。

礼の一つも言われぬままに、蒔風は次の世界へと向かった。







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人の命を食らう者。
それと人間との種族をかけた戦い。


それも終わり、今は共存の道を模索する現代。


共存する種族の名はファンガイア族と人間。



この世界の王に、危機が迫る。






to be continued
 
 

 
後書き

【真剣(マジ)で私に恋しなさい】

構成:"no Name"50%
   "フォルス"30%
   "ライクル"5%
   "LOND"15%

最主要人物:直江大和

-WORLD LINK- ~WEPON~:蒔風の力を大和に一時貸出

-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~:全力での正拳突き。今回は空間を捻じ曲げ、その中に消滅させるパターン



蒔風結局ボロボロの話です。

アリス
「大丈夫なんですかね?」

死にはしません。
ですが、大丈夫ってほどでもない。

アリス
「二週間の空白期間でなんとかできるモノなんですか?」

難しいね。
蒔風の身体は強靭だけど、決して再生能力が高いわけじゃない。
これが「賢者」や「聖人」タイプの人間だったらまだ何とかなったけど、彼は「戦士」だから。





アリス
「次回、出会いは血塗れに」

ではまた次回










覚醒(ウェイクアップ)! 運命(さだめ)の鎖を解き放て!!
 
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