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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  真剣で私に恋しなさい ~マジバトル、二回目~


「悪いが気を抜ける相手じゃないみたいだから少し、本気だ」


蒔風が剣を出す。
それは己のものではなく、合体剣。
漆黒の翼人のものだった。


「翼じゃなけりゃ大丈夫みたいだな・・・・・ハァッ!!」


ゴォウ!!


二人が構え、剣がキリキリと鳴っている。

荒々しい空気のまま、静かに時が流れ、そしてッッ


「ダァッ!!」
「ハァッ!!」



ギャァン!!


二人がぶつかり、閃光が走る。
その光に皆が目を瞑り、開けた頃には二人はすでに上空にいた。


ギンギン!!ギャウン・・・・ギン!ガッゴッ、バキィン!!


「「ハアォア!!」」


ブンブン、バゴォ!


二人が半分宙に浮いた形で幾重も幾重も剣を打ち合う。

由紀江は速く、蒔風は重い。
そんな攻撃をお互いに繰り出し、どちらも押し切ってはいない。



(ッ・・・・・この重量でこの速さ・・・・!!!気を抜いたら・・・・・・・ッッ!)

(速い上に重い!気をつけないと何回斬られるかわかったもんじゃない。おっと)



ギギン!!キャンキャンキャアン!!ゴッバッ!!


「!!せやァッ!!」


由紀江が蒔風の上に上がり刀に気をこめ、薄く輝いたその刃を、蒔風目掛けて叩き付ける!!


ゴッ、ガシュア!!


蒔風は無言でそれを大剣で受け、地面向かって弾き飛ばされる。
落ちていく蒔風を追って、由紀江が空中を蹴ったかのように飛びだし、気を込めた刀を構えて真下に突進する。

落下している蒔風は、その間も目をつぶり、心を静かに清ませていた。
そして地面まで残り8メートルのところで、その目が、ガッ!!と開かれる!!!



ドンッ!!と大地を揺るがし着地して、蒔風が着地した勢いを腕に送って、合体剣を頭上で回して由紀江に振り向ける。
無論、由紀江はまだ上空の域。その剣は届かない。

だが合体剣から飛び出していった剣は違う。
ファースト剣と呼ばれる大本を手元に残し、五本の剣が飛び出していく。

一本が由紀江の刀を弾き、四本と共に周囲に散った。
そして蒔風が剣を構えて、由紀江目掛け飛んで行く。


由紀江を斬っては周囲の一本を掴みに行って、それを掴んでまた斬り迫る。
それを繰り返し、蒔風が技の名を叫んだ。


「超 究 武 神 覇 斬!!」

ザギュッッ!!ドンッ!!

「の、バージョン何とかってね」


蒔風が地上に降り立ち、周囲に残りの剣が刺さって消えた。
そして上方から由紀江が落下し、それをフッ、とキャッチする蒔風。



「お゛あ゛~~~(ゴキゴキ)マぁ~~ジしんどい。で?次はぁ?」




「はっはっはっはっはっは!!!!ついにこの時が来たな!!!」

「めんどくせーー」

「別の世界とか、そんなことは今はいい!!お前が変な力を持っているのも、どうでもいい!!ただ、どちらが強いのか、それを確かめ合いたいッ!!!」

「世界最強決定戦か・・・だったら、負けるわけにはいかないよな?」


蒔風が力を借りることで、その手にベルトを握って装着する。




「モモにはさ・・・・・やっぱしモモだろ!」


ファン!カチッ、♪~~~~~


「オレのカッコイイ変身、見せてやるからよく見とけ。行くぜ?変身!!」

《Sword Form》


オーラアーマーが周囲に現れ、身体に装着。
赤い装甲は闘志の証。

全身からオーラを吹き出し、ポーズを決めて、見栄を切る!


「俺、参上!!」

「ほう?」


「今回は前座が何人かいたがな、こっからは・・・・・最後の最後まで徹底的にクライマックスだ!!!行くぜ行くぜ行くぜェ!!!」



なり切りながら、ソードを振り回して百代に切り掛かる蒔風。
百代は気を込めた腕でそれを受け止め、蹴りを放つがふざけた挙動でそれを蒔風がかわし、再び切り付ける。


ガキッ!!


「ははは!面白いな!」

「バトルマニアはいいけどよ、戦う為に戦う戦闘中毒は嫌いだよ!!」


ガンガン!ガゴッ!!


押収する蒔風の剣撃と百代の拳撃。


蒔風の剣撃はすべて防がれる。
だが、拳撃はそうではない。

確かな急所に拳が命中し、蒔風が少し下がる。
だが下がっただけで効いてなどいない。

押されたから後ろに下がった。
まるでそのような感じで、ゴキリと電王の姿の蒔風が首を鳴らす。


「よーしよし。じゃあこれはどうだ!?」

効いていないのを見て、むしろ喜びながら笑う百代。

そして、百代の姿が消える。
そして次の瞬間、蒔風の背後に現れ拳が振るわれ!!


ドゴォ!!


粉塵が上がり、二人の姿が隠された。
だがすぐに風が吹き、それを取り払って二人が姿を現す。

そこにいたのは


《Ax Form》


すでにアックスフォームに変身した蒔風が、百代の拳を捕まえていた。


「ふ、ふははははは!!これを見抜くか!最高に面白い!」

「そうか。だったらその顔、今すぐ泣き顔にしたる。俺の強さは、泣けるからなぁ!!どすこいィ!!」


張り手で百代を押し出し、悠々と歩いて迫る蒔風。
それに、百代が腕に気を込めて


「かーわーかーみー・・・・」

「ムッ?」

「波ーーーーーーッッ!!」


気を放出し、かの有名な攻撃に酷似した砲撃を打ち出してきた。


「おぉあ!!」


蒔風がそれを前転でかわし、パスをベルトにセタッチする。


《Full Charge》


「フヌァッッ!!」


金に輝くアックスを振り上げる形で振るい、その砲撃を斬り砕く。


「うぉッ!?」

「ダイナミックチョップ、振り上げ」


そこから真っすぐ百代に向き、ベルトのボタンを押して、パスを通す。



《Rod Form》



「ふぅ・・・・でもま、相手は女の子。思いっきりやるのは趣味じゃないけど」


《Full Charge》


「暴れる魚は強引に引き上げないと。時に厳しくやるのも、優しさだよね?ハァッ!!」


エネルギーをロッド先端に集中させ、それで切り掛かる電王ロッドフォームの蒔風。

百代は薙がれたロッドを上半身を反らして避け、続いてきた廻し蹴りをしゃがんでかわす。
だが更にきた踵廻し蹴りは避け切れず、腕で捕まえ、振り回した。


その状況から百代が蒔風を投げ飛ばし、蒔風は強引に百代目掛けてロッドを投げつけた。


無論、それに反応できない百代ではない。
向かって来るそれを掴んで蒔風に投げ飛ばそうとした。


しかし、百代は知らなかった。
この投げられたロッドは、決して攻撃ではなく、攻撃の為の布石であることを!!


「取っ、なに!?」


ロッドが身体に入って消え、それが百代の眼前で六角形のエネルギーの板となり、百代の動きを束縛する。


地面に落ちた蒔風がフゥ、と立ち上がり、百代に向かって駆け出した。


「こんなものっ!」


ピキィ!!


六角形にヒビが入る。
蒔風によって本来のものよりも強度が跳ね上げられているそれに、力技で壊しにかかっている!


その百代に蒔風が一言言った。


「それ、壊すと全身の筋肉が断裂して使い物にならなくなるよ?」

「ッッ!?」

「嘘だけどね。ハアァ!!」


蒔風の言葉に一瞬動きが緩み、蒔風のデンライダーキックが炸裂し、六角形を砕き、爆発を起こす。
爆発はあくまでも蒔風が演出で起こさせたもので大したことはないが、確実にダメージは通っている。


「ま、こんなものかな?」


そう言って蒔風が変身を解いて背を向ける。
だが、いっこうに鉄心が勝者の名を告げない。


「??どうした?」

「まだ終わっておらんからじゃ」

「は?」

「まぁだ・・・・・終わってないぞぉ!!!」


百代が立ち上がって飛び出してきて、蒔風の首根っこを押さえこんだ。
地面で一旦跳ねた蒔風は、跳ねた瞬間一瞬緩んだ腕をつかみ、力づくでそれを押しのけた。


「ゲほッ・・・・な・・・ダメージは確実に入ったはず」

「ああ!!確かに効いたなぁ!!凄い衝撃だった!!だけど私には川神流瞬間回復がある!!」

「気を巡らせて身体の再生を促したのか・・・なんて速度だよ」

「さぁ!!まだまだまだぁ!!!!」

「まじかよ・・・」

蒔風がうんざりした顔をして、百代がそんなことは知らんと拳を握りしめて突っ込む。
そして蒔風まで残り五メートルのところで、その姿が消える。

だが蒔風はむすっとした顔をしながら目を閉じ、次の瞬間、背後にハイキックを叩き込んだ。



「ガァッ!?」


ドォン!!!!


地面にとんでもない勢いで叩きつけられた百代が、今まで受けたこともない衝撃に目を見開く。


(い、今まで多くの強者と戦ってきた・・・その中には確かに痛いと感じたモノもあった・・・・だが・・・これは・・・・・・そのどれとも違う・・・・ジジイとも、揚羽さんとも違うッ!?)



「・・・・ふん」


蒔風がそこからさらに足を振り上げ、踏みつぶしにかかる。
それを百代が転がって避け、そこから跳び、一気に距離をとった。


「すでに回復したのか・・・・・この世界において、お前はあまりにも強かった。だから、お前に戦いしかない人生以外の事を教えられる者がいなかった。それは弱者の物だと一蹴してな。だからこそ、君に・・・・」


フッ・・・・・ゴォッ!!!!!



「敗北を贈ろう!!」



ドゴォン!!!!



蒔風の姿が消え、気付いたときには百代の懐に入り込んでいた。
足を払われ、宙に仰向けに浮いたところに裏拳が腹部にめり込んで地面を陥没させて落ちる。

百代は強靭な肉体の持ち主だ。
生まれてこのかた、体を襲う痛みに恐怖したことはなかった。

誰の攻撃も効かなかったし、ヤバそうなのは技を以って避けてきた。

どんな奴でも相手にできると思っていた。
だが、この男は違う。

もはやこれはヒトの域ではない。
自分も存外化け物と言われるが、この男は、次元が違うッ!!!!


蒔風が百代の肩を片手でつかみ、持ち上げる。
そしてそんな百代の思考を読んだかのように、一言言った。


「言ったろ?オレは別世界の人間だって」


「ッ!?瞬間回ふ・・・」

「(バチン!!)瞬間回復解除」


ドンンッ!!!!


蒔風がその体に雷旺を走らせる。
気を巡らせて身体の組織を活性化させる瞬間回復はその力を乱され、暴走する。


いらないところに回復が向かい、身体の細胞を異常促進させる。
それはもはや回復ではない。ただの拷問だ。


「ガッは・・・・」

「はい、終わり」


蒔風が百代をドサリと降ろし、鉄心の方へと歩く。
その間に百代はすでに瞬間回復を終わらせ、立ち上がろうとしていた。


だが



「やめろ」



ズンッ・・・・!!!!



周囲の空気、否、世界の毛色が変わる。
いまだに未完成ながらも、固有結界(それ)が百代の身体を縛る。

どす黒い何かに押しつぶされるかのように、百代の身体が何倍にも重く感じられた。



それでも百代は立ち上がろうとした。
ゆっくりと、確実に、その膝が伸びて行く。上半身が上がっていく。

そして立ち上がりきった。


「負けたくない・・・・・こんな気持ちは初めてだ!!戦いたいんじゃなくて、負けたくない!!!」

「それに気付けば上々だ(パン!!)」


蒔風が両手を鳴らして元に戻す。

すると、緊張が解けたのか百代がひざから崩れ落ち、大和達が駆け寄った。



「姉さん!!大丈夫か!?」

「弟~~初めて負けたよ~~~~・・・・・あはははははははっ!!!!」

「も、モモ先輩が・・・・・」

「負けて笑ってる!?」





「どうやらお主には礼を言わねばならないようじゃのう」

「なんのこと?」

「あれはの、いつまでも戦いの事ばかり考えて追って、力のみを求めておった。どうにかせんといかんかったんじゃが、なにぶんあの強さじゃ誰も言い聞かせられなくてのう」

「違いますよ。気付いたのは彼女自身だ。オレはきっかけ。オレが誰かの「芯」の元にはならないですよ」



そう言って蒔風と鉄心が大和達を眺め、皆を運んでけがの手当てをしに行こう歩きだす。


蒔風がその瞬間、背後に何か感じて振り返る。
だが、そこには綺麗な夕日があるだけで、特には何もなかった。

そして再び前を向いたとき







「よお」






「ッ!?」


ズッ・・・・・・・ブパッ、バシャァァアアアアアア!!!!!!

「おっ・・・・・ガッ・・・・・・・」


蒔風の上半身が斜めに切り裂かれ、血が噴水のように噴きだし、地面を夕日以外の赤で染め上げた。




「あ・・・・・あ゛ぁ・・・・・・あ、ごぁ・・・・・・・・・」


ガクン、と膝から崩れ落ち、仰向けに倒れる蒔風。
その前には血の滴る剣を握った一人の男が


夕日の中でも、影を身にまとった男が、そこにいた。



「!!!! 蒔風ぇ!!!!!!」

「ちょぉ~~~~どいいよなぁ?こういうタイミングゥ♪余裕ぶってる蒔風見てたら、殺りたくなっちゃったよ」



「な・・・・・そんな・・・・・・」

「テメェ・・・・・誰だ!!!!!」



大和が男に叫ぶ。
すると男は自慢げに、こう答えて見せた。



「蒔風から聞いてなかったか?おれが、お前を殺しに来た男だよ、直江大和」

「お前が・・・ッ」

「蒔風に勝てなかったお前らがオレに勝てるとか思ってんじゃねぇぞ?」





剣を消し、その場に立つのは「奴」
足元には血まみれの蒔風が転がっている。



「主人公、殺しに来ました、覚悟しろ。字余り、ってね」



圧倒的優位な立場に、立った「奴」が大和に指を差し、宣言するように言った。





「終わってんじゃねえぞ?こっから始まるんだ」





to be continued
 
 

 
後書き
アリス
「蒔風、超重傷」

上半身に重い一太刀。さて、大丈夫かな?


アリス
「次回、そして最後はどうなるの?」

ではまた次回










いつの間にか友の背中 押し合ってたgreen days 
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