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日本のビールの底力!~キリン編~
さてさて、日本一売れてるビールであるアサヒの『スーパードライ』を味わって貰った。お次は……そうだな、日本のビール業界のパイオニア・キリンビールのNo.1、『キリン ラガービール』を紹介しようか。
けど、ぶっちゃけた話をすると俺個人的にはキリンのラガーは苦手だった。俺のキリンの商品のイメージは缶チューハイの氷結とか、午後〇紅茶とか、あまりビールのイメージではなかった。売上本数を見ても、他のメーカーの代表的なビールに比べて、出荷本数は9位と少ない(2014年度)。
「さぁ、今度の『キリン ラガー』は懐かしいと思うぜ?」
「まさかぁ。日本のビールで懐かしく感じるなんて……。」
そう言いながらジョッキを受け取り、プリンツが一口。瞬間、目を丸くして固まっている。他のドイツ艦達も同じ様なリアクションだ。
「どうだ?感想は。」
「確かに、日本のビールよ。エールやラガーにはない爽快感だもの。」
「けれど……」
「何か、こう……」
「懐かしい、ですって。」
鋭いねぇ、ろーちゃん。キリンのラガーはその名の通り、明治の初期にドイツから入ってきたラガーの醸造技術を今に残す『日本風ラガー』なのだ。
時は1885年、日本の三菱財閥と英国人商人・トーマス=グラバーらの協力で香港国籍のビール醸造所『ジャパン・ブルワリー』が開設。その3年後、小売り業者の明治屋と独占販売契約を締結。そうして日本人が作り出した初のビール『麒麟ビール』は産声を上げた。明治・大正・昭和と時代が移ろい行く中でもキリンビールは王座に座り続け、やがて昭和の終わり頃に訪れるドライビールブームによってスーパードライに王座を明け渡すまで、日本のビールの王者に居続けた。
俺もジョッキからよく冷えたキリンラガーを一口。……うん、昔はこの良さが解らなかった。今でこそ解る、キリンラガーは『バランス』がいいんだ。苦味・酸味・甘味・コク・キレ。ビールの味を評価する5項目を挙げるとしたらこんな所か。前述のアサヒのスーパードライはキレと苦味に特化したビールだ。その分、発酵による酸味や甘味は少なく感じる。だが、キリンのラガーは全てを感じるのだ。しかし、それらが争わずに絶妙なバランスをとっている。なんというか、『歴史』を感じさせる……そんな一杯だ。
「でも、不思議だ。味わいは日本のビールなのに、ドイツの息吹を感じる。これが『懐かしい』という感覚なのだろうな。」
しみじみと、味わうようにグラーフが再びジョッキを煽る。
「さぁ、ドイツっぽさに浸るのもいいが、キリンラガーは日本のビールだ。日本のビールは?」
「「「「「料理に合う!」」」」」
ノリが良くなってきたな、アルコールが入ってエンジンかかってきたか?しかしキリンラガーのウリはそのバランスの良さだ。裏を返せば何にでもピタリとはまってしまう。肉、魚、野菜。和、洋、中。なんなら、弁当のドリンク代わりに飲んでもマッチしてしまうから堪らない。
「アトミラール……出来ることなら魚介が食べたいのだが、出来るだろうか?」
今日の主賓であるグラーフからのリクエストだ。断る訳にはいかんだろう。……あ、そういや牡蠣で作っておいたアレがあったな。アレでいくか。
《濃厚!牡蠣のガーリックオイル漬け》
・生牡蠣(剥き身):300g
・オイスターソース:小さじ1/2
・塩、胡椒:適量
・オリーブオイル:大さじ2
・エクストラバージンオリーブオイル:200ml
・にんにく:1片
・黒粒胡椒:小さじ1
・ローリエ:1枚
・小ねぎ:1本
今回は作り置きしてあるから作り方をご紹介。まずは牡蠣の剥き身を流水でよく洗う。市販の剥き身でも汚れや殻の破片が残ってる事があるから念入りにな。洗い終わったら鍋に湯を沸かして牡蠣をサッと湯通しする。これをやる事で滑りと生臭さを取り除く。湯通ししたらよく水気を切って塩、胡椒で下味を付ける。
お次は牡蠣を炒めていくぞ。フライパンにオリーブオイルを入れて中火にかけ、下味を付けた牡蠣をここに入れる。加熱すると牡蠣が縮んで水分が出てくるので、焦がさないように水分を飛ばしていく。
ほぼ水分が出てこなくなったら、ここにオイスターソースを加えて更に炒める。ソースを加えた後でも水分が無くなるまで炒めて、その後皿などに広げて粗熱を取る。
粗熱を取った牡蠣を保存容器にいれ、エクストラバージンオリーブオイル、薄切りにしたにんにく、黒粒胡椒、ローリエを入れる。後は1晩漬け込んでやれば濃縮された牡蠣の旨味とにんにくの風味、そして胡椒のピリリとした辛味を楽しめるツマミの完成だ。食べる時には小ねぎと粒胡椒を散らして食べると美味いぞ。
「うん、これは……美味いな。」
オイル漬けの牡蠣を、指が汚れるのも気にせずに摘まみ上げ、チュルリ、チュルリと口に運んだらそこにラガー。牡蠣の濃厚な旨味に負けずに引き立てる。まさにキリンラガーの真骨頂だろう。……あぁ、もしもオイルが残ってしまったら、パスタや炒め物、サラダのドレッシングなんかに使うと良いぞ。牡蠣のエキスが染み出してるからオイル単体でも美味い。
さて、牡蠣を堪能して貰っている間に、俺のオススメを一品。中華の四川料理から……思い出すだけで涎が止まらなくなる、その名もよだれ鶏!安直なネーミングだが、素晴らしく美味いしビールに合うんだ、これが。
《本格!よだれ鶏》
・鶏むね肉:1枚
・もやし:1/2袋
・香菜:1/2束
・万能ねぎ:2本
・薄皮付き落花生:適量
・塩:小さじ1
・酒:大さじ1
・生姜(薄切り):1枚
・長ねぎ(青い部分):2本分
『ピリ辛ソース』
・花椒(ホアジャオ):3g
・下ろし生姜:小さじ1
・下ろしにんにく:小さじ1/2
・鶏肉のゆで汁:50cc
・醤油:大さじ3
・黒酢:大さじ2
・ラー油:大さじ1~2
・砂糖:小さじ2
・ごま油:小さじ1
まずは鶏肉を茹でるぞ。鍋に水600ccと塩、酒を入れて中火にかけ、沸騰したら鶏肉とスライスした生姜、長ねぎの青い部分を入れて1分ほど茹でる。その後火を止めて蓋をして、30分置いておく。
その間に付け合わせの準備。鶏肉とは別の鍋に湯を沸かし、もやしをサッと茹でてザルに空け、冷ましておく。香菜は2cmの長さに切り揃え、万能ねぎは小口切り、落花生は袋などに入れて砕いておく。
厚手のビニール袋に花椒を入れ、麺棒などで叩いて細かくしてボウルに入れる。タレの材料を混ぜてピリ辛ダレが出来たら盛り付けていこう。茹でたもやしを皿に敷き詰め、食べやすく切った鶏肉をその上に乗せる。タレをかけ、香菜と万能ねぎ、砕いた落花生を散らせば完成だ。
「辛~い!」
少し涙目になりながらもプリンツが食べ進めている。タレをたっぷり絡めた鶏を口に放り込んでやれば、ビリビリと痺れるような花椒の辛味が襲ってくる。この辛味でまたビールが進む進む。鶏、ビール。鶏、ビール。この繰り返しで舌が痺れてくるが、嫌な感覚ではない。
「どうだ、美味いだろ?」
「えぇ、唐辛子とか胡椒の辛さとは違うけれど、ビールによく合うわ。」
ビス子はそう言いながら、僅かに額に汗を滲ませながらよだれ鶏を食べて、キリンラガーを煽っている。ま、嫁さんが喜んでるならそれでいいさ(仮だけど)。
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