提督はBarにいる。
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ふわふわ!お好み焼き特集・4
さてさて、割りと腹に溜まるんだよな粉物は。ビールも大ジョッキで2~3杯飲んでるし、そろそろリミットか?
「どうする?も少し食うかお前ら。」
俺もビールを飲みつつお好み焼きを食べつつの作業だったので、大分腹が苦しい。
「う~ん、そうやなぁ。ウチらの注文やなくて、マスターのオススメが食べたいかなぁ?」
そう言い出したのは黒潮。生まれを考えると粉物には煩そうだが、今の所は満足してくれているのか文句はつけられていない。
「そうね、提督のオススメだったらアタシ達が思いつかないようなメニューが出てきそうだし。」
そう言って陽炎も同調する。ビールに飽きてきたのか、ボンベイサファイアをロックでチビチビやっている。……ってか、案外強いな陽炎も。※ボンベイサファイア:アルコール度数47°
「そうですね、私も異存ありません。」
そう言って浜風も口の回りについたソースと青海苔を舐め取っている。出したばかりだったモダン焼きは既に鉄板の上から消え失せている。早ぇよ。
「仕方ねぇなぁ。不味くても文句は言うなよ?」
「またまたぁ、そんなあからさまな前フリしたって、ウチはツッコミ入れへんで?」
「喧しい。」
さて、何を作った物か。海鮮がかなり残っているし、山芋も大量にすりおろしちまったから、これを消化できるメニューにするか。
《海鮮たっぷり!山芋焼き》分量2枚分
・山芋(とろろ):320g
・キャベツ(5mm幅の千切り):160g
・紅しょうが(みじん切り):適量
・万能ネギ(小口切り):適量
・揚げ玉:大さじ2
・海老、イカ、タコ、牡蠣等の海鮮:適量
※シーフードミックスでもOK!
・豚バラ:4枚くらい
・ブレンドソース、クリーミーマヨネーズを始めとする仕上げ用食材:適量
・卵:4個
まずは生地作り。これも1枚ずつ作っていくぞ。山芋を160gにキャベツを80g。削り粉を小さじ2杯、万能ネギと紅しょうがを適量加え、卵を1つ割り入れたら一旦混ぜる。コツは空気を含ませるようによく混ぜる。全体的に混ざったらそこに海鮮を加え、揚げ玉を大さじ2位……まぁ目分量でイイや、加えたらこぼさないようにしっかりと混ぜたら生地は完成。
さぁ、焼いていくぞ。鉄板の温度は200℃に設定。温まったらサラダ油を薄く塗り、生地を鉄板に落とす。鉄板に広げたら小麦粉の生地よりもかなり柔らかいのでスプーンで形を整えてやり、すぐに豚バラを敷き詰めて、そのまま4分焼く。問題は返しだ、何度も言っているが山芋のみの生地はとても柔らかい。慎重かつ大胆に、一気にひっくり返さないといけない。
「せーの……おりゃっ!」
「お~!」
上手くいった。カウンターの3人からは拍手が上がる。返したら豚バラを乗せた面も4分焼く。もう一度返したら少し端の方に寄せ、鉄板に卵を割って落としてやる。モダン焼きのようにこの山芋焼きも月見にしていくぞ。
黄身を崩したら山芋焼きをひっくり返して卵とドッキング。押さえつけないでそのまま1分焼いたらまた返して仕上げに移る。ソースと辛子を塗り、クリーミーマヨネーズをかけ、青海苔と花鰹を散らしたら出来上がり。
「お待ち。今日のオススメ『海鮮山芋焼き』だ。柔らかいから気を付けて食べろよ?」
3人が同時にコテを入れる。山芋焼きは断面からホロホロと崩れそうな位にトロトロだ。
「うわぁ!トロットロやんこれ!」
表面サクサク、中層はフワフワ、芯の部分は僅かにトロトロ。このトリプル食感が山芋焼きのウリだ。更にたっぷり入った海鮮から出汁が出て、絶妙な旨味を醸し出す。
「うまっ!これホントに美味しいわ!」
陽炎も美味そうに食べている。これがまた酒が進むんだよなぁ。
「ハムッ!ハフッ!ハフハフッ!ハムッ!」
浜風など言葉を発するのも億劫だと言わんばかりにがっついている。なんかフードファイターに見えてきたわ。
「う~ん……。」
「どうしたん?司令はん、ウンウン唸って。」
「いや、実は今ビス子に頼まれ事しててよぉ。どうしたモンかと思ってな?」
「ビスマルクさんに?珍しいわね。」
そう、ここ最近の悩みの種。ビス子に頼まれていた『ある企画』があるのだ。
「因みにですが、その頼まれ事とは何なんですか?」
「ホラ、大分前の話になっちまうがドイツの空母のグラーフ・ツェッペリンて居るだろ?」
「グラーフ……あぁ、グラやんか。それがどしたん?」
おい黒潮、グラやんてお前……まぁいいや、話を進めよう。
「実はな、バタバタしてて歓迎会出来てなかったんだが、そろそろ改装出来る位の錬度になるから、そのお祝いも兼ねて食事会を開きたいと言われててな。」
グラーフ・ツェッペリンが着任した後も大規模作戦は続いており、その後も後処理やら何やらでゴタついて、イタリア組の時には開催できた歓迎会がドイツ組に対しては出来ていなかった。これはいかんと思っていたんだが、中々機会に恵まれずに先伸ばしになっていた。
「ならいいタイミングじゃない、提督なら料理も美味しいし、何の問題も無いでしょ?」
「そこなんだよ、問題は。」
そう、俺が頭を悩ませていたのはメニューだ。ビス子からは
『あの娘ビール大好きだから、ビールジャンジャン出してくれれば文句ないわ!』
とは言われていたが、それでは面白味がない。
「ビールとちょっとした料理だけ、ってのも味気ねぇし。どうしたモンかと思ってなぁ。」
「ほんなら、色んなビール飲み比べにすればエエんと違う?」
黒潮からのアイディア。飲み比べか、いいかもしれん。そのビールに合わせた料理を俺が提供すれば万事解決ってワケだ。
「おぉ、それいいな。参考にさせてもらうわ。」
「せやろ~?だから今日の飲み代オマケしてぇな♪」
「それとこれとは話が別だ。」
「あぁん、司令はんのいけずぅ。」
そんなやり取りを見て笑う陽炎と浜風。ソースの焦げる香りに包まれながら、夜はとっぷりと暮れていった。
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