提督はBarにいる。
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ふわふわ!お好み焼き特集・2
「マスター、コテくれるか?」
待ちきれない、といった具合で黒潮がコテを要求してくる。恐らくは切って食べやすくするのだろう。
「ほらよ。」
そう言って3人それぞれにコテを渡し、自分の分のエビタコミックスを焼き始めた。
「え~!?黒潮、その切り方おかしくない!?」
「どこが?お好み焼き言うたら四角く切るモンやろ?」
「いや、丸いんですからピザのように放射状に切った方が合理的ですよ。」
そう、関東と関西ではお好み焼きの切り方が違う。関東ではピザやケーキのような大きさが等分になる切り方、関西では格子状または短冊形と四角く切る事が多い。
「だって四角く切ったら大きさバラバラでしょ!?交換して食べられないでしょ!」
これはよく聞くピザ切り派の主張だ。お好み焼き屋や自宅で、且つ複数人数でお好み焼きを食べる時は、それぞれに違う物を頼む事が多い。色々な味を楽しむ為にシェアして食べたい……それならば、大きさにバラつきのないピザ切りがいいと言うのが言い分だ。
「はぁ!?なんで交換せなアカンの。他の味が食べたいならまた別のを後で頼めばエエやん!それにちっちゃく切った方が食べやすいやろ!」
逆に格子切り派の主張、これも解らなくもない。そもそも関西では1人1枚、交換したりしないで食べるのが常識だ。それに一口サイズにカットした方が食べやすい。この背景にはお好み焼きの料理としての捉え方の差が大きのだが、ここでは割愛しておく。
「まぁまぁ、喧嘩すんじゃねぇよ。喧嘩すんならほっぽり出すぞコノヤロウ。」
この間の唐揚げ論争以来、店内での喧嘩はご法度にした。どうしてもヒートアップして止めない場合には、店から放り出すか説得(物理)するだけだ。
「まぁ、今日はお腹空いてるから一杯食べられそうだし?喧嘩は止めとくわ。」
先に折れたのは陽炎だ。喧嘩して放り出される方がバカらしいと考えての判断だろう。
「マスター、とんぺい焼きって出来る?私食べた事無いのよね。」
イカ玉を食べ終えた陽炎が、ビールのお代わりをしつつそんな注文をしてきた。
「とんぺい焼きか、懐かしいな。」
とんぺい焼きってのはお好み焼きではないが、大阪発祥の鉄板焼きメニューだ。
「よっしゃ、作ってやるからちょっと待ってな。」
《提督流とんぺい焼き!》
・薄力粉:30g
・鰹だし:100cc
・キャベツ:200g
・豚バラ:2~3枚
・削り粉:少々
・卵:2個
・ソース、マヨネーズ、青のり:適量
まずは薄力粉を鰹だしで溶く。お好み焼きの生地よりも薄焼きにするので卵も山芋も要らない。生地を作っている間にキャベツを炒める。このレシピのメインはキャベツだからな、思いきってたっぷりと。キャベツを炒め始めたら先程の生地をクレープのように広げてその上に削り粉を散らす。キャベツがしんなりしてきたら生地の上に乗せ、生地の中央に長方形に寄せる。そこに豚バラを襷掛けに乗せてやり、そこからひっくり返して豚バラに焼き目を付ける。
お次に卵。溶いたりせずに鉄板の上に直接2つ落とす。黄身をコテで切るように崩し、片方のコテで形を整えつつ、もう片方で卵を押し広げる。この時、たまごに隙間が出来ないように注意。
仕上げは先程焼いていた豚バラとキャベツと生地を卵に巻き込むのだが、一番端に置かずに少し余裕を持たせて置く。少し余った部分の卵を折り返し、キャベツをはみ出させないようにクルリと巻く。一気にパタパタと巻かないで、一回ずつ丁寧に巻いた方が綺麗に巻けるぞ。巻き終わったら上からソースをかける。とんぺい焼きは甘口のオタフクソースの方が合うぞ。更にマヨネーズをかけ、最後に青のりを横一線に振りかけたら完成だ。
「ハイお待ち、『とんぺい焼き』だ。」
「へーぇ、初めて見たけどオムレツみたいな感じじゃないのね……。」
陽炎はコテで一切れ掬うと、フーフーしながらかじりついた。
「ん~、思ったよりもさっぱりしてるのね。」
「まぁな、お好み焼きよりも粉は少ないから腹にもたまらんしな。」
キャベツのかわりにモヤシを使ってもいいし、キャベツとモヤシを半々にしても良い。シンプルなようで意外とアレンジはしやすい。
とんぺい焼きを作っている間に、黒潮・浜風両名も1枚目のお好み焼きを食べ終えていた。
「お代わりは?どうするよ。」
「ん~、じゃあウチはすじねぎやな。」
すじねぎ焼き、折角作ったすじこんの出番が来たか。
「あ、では私はモダン焼きを。」
さっきからヘビーなのばっかだな浜風!その駆逐艦らしからぬ豊満な身体の秘密はその食欲か!……まぁ、ちゃんと食えるのは健康の証拠だからいい事だが。
「あいよ。んじゃ順番に焼いてくからよ、ビール飲んで待っててくれや。」
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