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提督はBarにいる。

作者:ごません
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早霜の一番疲れた夜・1

 
前書き
  

 
 どうも。『Bar Admiral』代理店長、早霜です。本日司令はブルネイ所属の他の提督方々との一泊二日掛かりの会議と懇親会の為、朝からお留守です。私はあまり料理が得意ではないので、殆どのお客様は鳳翔さんのお店か間宮さんのお店に足を運んでおられるようです。まぁ、こんな静かな夜も私は嫌いでは無いのですが。

 そんな事を考えていたら、本日初めてのお客様がいらっしゃいました。

「いらっしゃいまs……こ、金剛さん?」

「good evening.ハヤシモ~♪」

 満面の笑みで入って来られたのは、司令の奥様であり艦隊のエースでもある金剛さん。出撃や訓練では何度かご一緒しましたが、お店でお会いするのは初めてです。いやが上にも緊張します。

「ンフフー、緊張してますネ、ハヤシモ~?安心するネー。今日はちょっと飲みに来ただけデース!」

 金剛さんはカウンターに座ると頬杖をつき、私の緊張を見透かして、それを解く為に頭を撫でてきた。司令にもたまに撫でられますが、金剛さんも同じような安心感を覚えます。司令が父親だとしたら、そう、母親のような。




「でも珍しいですね、金剛さんが飲みに出てくるなんて。」

 普段は定時に執務が終われば提督はお店、金剛さんはお二人の家に戻って家事をこなしていると司令から聞いていました。お酒はお強いらしいのですが、殆ど飲み歩き等で出歩く事はない……あってもお二人でのデートの時くらいだと。

「今日はdarlingが帰ってこないから、ちょっと一人寝が寂しかったネ。だから、今日くらいは楽しもうかと思ったんデスよ。」

「成る程、そういう訳でしたか。……では、早速ですがご注文を。」

 私がそういうと金剛さんは腕組みをして唸り始めました。

「Uh~……さっきdinnerは鳳翔さんの所で食べて来たんですよネー……。Oh!では、私の好きなスコッチでカクテルをお願いシマース!」

 カクテルですか。スコッチをベースとして、というご注文つき。

「畏まりました、では。」




 まずは爽やかな口当たりの、食前酒向きの一杯を。まずはシェイカーにスコッチを35ml。銘柄はお好きな物で構いません。次にスイートベルモットを15ml、ホワイトキュラソーを10ml加えたら、仕上げにレモンジュースを1tsp(ティースプーン)。これをシェイクします。

「凄く手際がいいネー、惚れ惚れするヨ。」

「あ、あまり褒めないで下さい……照れてしまいます。」

 思わず赤面しながらシェイカーの中身をカクテルグラスに注ぐ。

「出来ました、『チャーチル』です。」

「Oh、サー・ウィンストン・チャーチルが由来のカクテルですか。私達にはピッタリネ!」

「そうですね、チャーチル卿は首相の他にも戦争大臣や軍需大臣など、戦争関連の要職に多数就任しておられますが、首相以外に2度経験されたのは海軍大臣のみと、とても海軍に関連の深い方ですからね。」

 一気に煽るようにグラスを干した金剛さん。カクテルは本来チビチビと味わう物だと思うし、アルコール度数も高いハズなんですが……流石は司令の奥様。

「ン~♪レモンとキュラソーのフレーバーでとっても爽やかネー!ハヤシモぉ、他のも出来るデスか?」




 ではもう一杯、シトラス系の爽やかな風味の一杯を。まずはスコッチを40ml。更にドライベルモットを20ml加えたら香り付けにレモンジュースを2dashとオレンジビターズを1dash。これをステアしてカクテルグラスに注いだら出来上がり。

「お待たせしました、『ホール・イン・ワン』です。」

「ンー?サー・チャーチルのお次はゴルフですか……何だか懐かしい感じがしますネー。」

 そう、金剛さんには内緒だが折角スコッチを使うならイギリスに因んだ名前のカクテルを出そうと思いまして。まぁ、ちょっとした私の遊び心と思っていただければ。

「Oh!さっきのよりもちょっとビターですネ!こっちも美味しいデース!」

 やはり飲むのが早い。ほぼ一息で飲み干している。けれど顔が全く変わらない……相当お強いようです。

「ンー、流石はdarlingが認めただけありますネー。もっとお願いシマース!」

 さて、お次は何をお出ししましょうか。 
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