提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・8
~加古:餅~
「うーん、やっぱり餅はつきたてが一番だよね~……。」
少し肌寒くなってきた頃、チケットを持ってやって来たのは加古。執務室を畳張りにして炬燵を出し、そこで加古に餅を振る舞っている。味付けのタレも黒ごまダレにきな粉、胡桃ダレにあんこ、ずんだに大根おろしと様々揃えた。中でもお気に入りは磯辺巻きらしく、さっきからつきたてのおかわりを持っていく度に海苔を巻いて頬張っている。
「けど残念だな~、年末に食べた提督のついた餅が食べられると思ったのに。」
「しょうがねぇだろ?臼と杵使うにゃ俺一人じゃ餅つき出来ねぇんだからよ。」
今回は捏ねたりひっくり返したりしてくれる人がいなかった為に餅つき機を使用した。水に浸けてふやかした餅米さえ用意すれば、蒸す事は勿論つく、捏ねるもスイッチ1つでやってくれる優れものだ。
「はぁ~、この胡桃ダレも美味しいねぇ~。」
「ホントは保存用の角餅出そうかとも思ったんだがな。どうせならつきたての餅を食わせてやろうと思ってな。」
「にしてもよくやるよ、提督もさ。普通アタシがお餅食べたい!ってリクエストしても普通つきたてを食べさせようなんて考えないよ?」
「俺は半端がきらいでね。いつも椅子にふんぞり返ってるだけなのに、肉体労働任せっきりのお前らの為なら尚更な。」
『だからそういう発言が天然ジゴロ扱いされる原因なんだってぇ……!』
加古は顔を真っ赤にして俯いて、何やらボソボソと呟いている。
「あん?何か言ったか。」
「なっ、何でもないって!あー、餅美味い。提督、おかわり!」
「ところでさぁ提督、さっきから何包んで食べてんの?」
「え、チョコだけど。」
バレンタインデーに貰ったチョコ、実は大量に余っていた。貰った娘には申し訳ないが冷凍して、形を変えて店などで提供させて貰っていた。今回はいい機会だと思って、つきたてアツアツの餅にチョコをくるんで、その熱でとろけさせて食べている。餅の熱で程よく溶けたチョコの甘味が柔らかい餅によく絡んで美味い。
「あ、それ美味そう。ちょーだい。」
炬燵の天板に顎を載せ、あーんと口を開けている。別に新しく作るのも面倒だったので、俺の食べかけを押し込んでやる。すると加古は目を白黒させてアワアワしている。
「なっ、なんで食べかけ押し込むんだよっ!」
「あ?新しく作るの面倒だったから。……あ、嫌だったか?」
「い、いや、別に……嫌とかじゃあ…ないけど。」
ならいいんだが。何をそんなに慌ててるんだ?加古は。
餅を食べ始めて約2時間。加古は休む事なく食べ続けていた。
「にしてもよく食うなぁ。今何個目だ?」
「えー?数えてないよぉ。めんどいし。」
改二になって凛々しくなったと思っていたが、中身はお気楽・寝坊助な加古と大して変わっていなかったらしい。
「……まぁ、幾つ食おうがお前の勝手だが、この後の仕事に差し支えないようにしろよ?」
「大丈夫でーす、今日は非番なんでー。」
「それに、対策も準備してあるから大丈夫!」
対策?なんの事だ。
「何だ?胃薬でも準備してあるのか?」
「違う違う。…もっとこう、自然にさぁ……ふあぁ」
加古の目がトロンとしてきて、欠伸を噛み殺している。おいまさか。
「というワケで、おやすみなさーい……グゥ。」
「おい、食べた後すぐ寝ると牛になるぞ……じゃなくって」
「寝るなら自分の部屋で寝ろ、ここは執務室だぞオイ!」
揺さぶっても加古は起きる気配がない。の〇太かお前は。まぁ、これもある意味満足してくれた結果だし良かった……のか?この後、古鷹に連絡入れて引き取りに来て貰った。物凄い謝られて逆に申し訳ない気持ちになった。
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