提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・3
~時雨:提督特製シャーベット盛り合わせ~
窓の外を眺めると、窓の外は5m先も見えない程のザーザー降りの雨。今日ばかりは航行すらも危険と判断して、出撃・遠征・演習も取り止め。完全なオフ日になってしまった。
「……雨、まだ降ってるね。」
「あぁ、この雨足だと丸一日は降り続くだろうなぁ。」
そんなのんびりとした会話をしながら、部屋の中にはザクザク、シャクシャクといった音が響いていた。
「けど、雨好きの時雨としてはこういう日の方が良いんじゃねぇのか?」
「……提督、それ僕が雨女だって言いたいのかい?失礼しちゃうなぁ。」
ジト目で頬を膨らませながら抗議の視線を送ってくる時雨。しかし俺特製のシャーベットを一口放り込むと、膨れていた頬が面白いように萎んでいく。姉妹の夕立も顔に出やすくて解りやすいが、時雨も大概だと思うのは俺だけか。
「いや、そうは言わねぇが。……まぁ、向こうもこの雨じゃあ仕掛けて来る事ぁねぇだろ。たまの休日と思ってゆっくりしてくれや。」
「……で、僕はそのたまの休日に提督特製のシャーベットを食べながら満喫してる、と。こんなご褒美があるなら、僕も雨女で良いかな?」
悪戯っぽくクスクス笑いながらシャーベットにパクつく時雨。
「おいおい、まだ言うのか?それにこの悪天候は偶々だろうに。」
「冗談だよ、提督。天気は女の子のと一緒で気紛れだからね。」
「それに甘い物が食べたいならプロがいるだろ、プロが。俺に頼むよりも間宮んトコとかに行くだろうよ。」
「まぁ、確かにそうかもしれないけどさ……。」
『休日に提督を独り占め出来る、っていうのが大きいんだよね……。』
時雨が何か小さくボソボソと何か言ったが聞き取れなかった。
「あん?何か言ったか?」
「なっ、何でもないよ提督!あー、シャーベット美味しいよ。」
焦った様子でシャーベットを食べ始める時雨。顔が赤くなっているが、そんなに恥ずかしい事を言ったのだろうか?
「ところで提督、提案なんだけど。」
「ん、なんだ?」
「このシャーベットなんだけどさ、これから暑くなるでしょ?暑くなってからの艦隊の帰投後に皆に配ったらどうかな?」
シャーベットをか?確かにそれほど手間のかかる代物じゃあないが。
「それに、間宮さんのアイスじゃないけど、皆の疲れも取れるし、喜ぶと思うんだ。」
「う~ん……このシャーベットをなぁ。出来ない事は無いが…アイスなら間宮だけじゃなく大和も作れるだろ?何もわざわざ俺が作らんでも……。」
それに、他の心配事もある。…寧ろ、そっちが不安材料なんだよなぁ。
「確かに大和さんのアイスも美味しいんだけどさ、このシャーベットのさっぱりした味が好きな娘もいると思うんだ。」
「まぁ正直に言っちゃうと僕の我が儘なんだけど……どうかな?」
ここまで目をウルウルさせて嘆願されると弱い。
「解った、毎日ってワケには行かないが用意するようにしてみるか。」
「本当かい!?ありがとう提督!」
よほど嬉しかったのかハグされてしまった。こういう所を見ると、やっぱり時雨も夕立と姉妹なんだなぁと思うわ、うん。
「暑い日に冷たい物で士気を高める、ってのも悪くねぇと思っただけだ。任務の合間に作るからな、あんまり期待はするなよ?」
「それでもとっても嬉しいよ。ありがとう提督!」
もしも犬の尻尾付いてたら物凄い勢いでブンブン振り回されてるんだろうな、っていう位のいい笑顔だ。
『さて……問題は飲兵衛連中と食い意地張った連中だな。食い尽くされちゃ敵わんぞ。』
シャーベットはカクテルをベースにしても作れるからな、シャーベットを作る事を駆逐艦のみのご褒美にしてしまうかどうか、それが俺の心配事だった。
この数ヵ月後、『真夏のシャーベット争奪戦争』が起きたのはまた別の話。
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