Blue Rose
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第三十五話 欧州の美その三
「いいか悪いかは別にして」
「そうよね」
「これ俺が買うとしたら」
サファイアにルビー、エメラルドの三色の宝石で眩く飾られたブローチを見てだ、龍馬はしみじみとした口調で言った。
「就職して何年働かないと駄目なんだ」
「百万じゃ効かないわよね」
「一千万はいかないよな」
「多分そこまではいかないけれど」
「相当な値段だよな」
「信じられない位のね」
優花も言う。
「本当に日本だと漆器や陶器だけれど」
「ここまではとてもいかないな」
「将軍様もお殿様もね」
地位のある者達でもだ。
「とてもね」
「あと今の皇室なんてな」
「もっと質素だから」
「こういう贅沢はな」
「龍馬も言ったけれどいいか悪いかは別にして」
優花もこう言った。
「日本にはないわね」
「そうだよな」
「けれど。奇麗ね」
優花は今度は観た率直な感想を述べた。
「どの宝石細工も」
「一つ一つ、宝石一つまでもがな」
それこそとだ、龍馬も言う。
「芸術だよな」
「そうよね」
二人で宝石達を観ながら話をした、それから昼食まで少し時間があったので美術館にも行った。美術館の中で。
優花は宮殿の様な建築様式、先程二人が入ったそこに似ているその中の絵達を見回りつつだ、龍馬に言った。
「何か私もね」
「こうした絵を描きたいか」
「そう思うわ、ただね」
「ただ?」
「この人の絵は」
シャガールの絵もあったがこの画家の絵についてはこう言うのだった。
「真似出来ないわね」
「ああ、確かこの絵は」
「シャガールの絵よ」
優花は龍馬に顔を向けて話した。
「ユダヤ系の人でね」
「確かナチスから逃げた人か」
「それでアメリカに亡命してそこで活動していたの」
歴史に翻弄されたと言える、幸いにして命を奪われることはなかったが。
「ニューヨークのメトロポリタン歌劇場にも描いてるわ」
「絵をか」
「壁画をね」
「そうなんだな」
「不思議な絵よ」
シャガールの絵はというのだ。
「幻想的というかね」
「そんな絵か」
「あっ、これよ」
ここでだ、優花はシャガールの絵を見付けて龍馬に指差して話した。龍馬もその絵を見てそのうえでこう言ったのだった。
「この絵を」
「これがシャガールの絵か」
「どうかしら」
「何か子供の絵に見えてな」
龍馬は優花に率直に絵の感想を述べた。
「何か違うな」
「そうでしょ」
「色使いが独特で」
「それが幻想的にさせてるのよね」
「そうだな、こんな絵はな」
腕を組み考える顔でだ、優花に話した。
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