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真田十勇士

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巻ノ七十 破滅のはじまりその六

「だから政のこともさらに学びな」
「そのうえで」
「わしが天下の政を見る時になれば」
「助けにですか」
「なってもらいたい」
「わかり申した、では及ばずながら」
「頼むな」
 こう幸村に話す、そしてだった。
 幸村も秀次に誓った、そのうえで政のことも学んでいった。そして来たるべきに備えていた。
 世は唐入りの戦があり名護屋に多くの兵が集まっていてもおおむね穏やかであった。だがその中でだった。
 ある夜幸村は屋敷に戻っていた十勇士達と共にまた外で酒を飲んで宴としていた。だがそこで星達の状況を見てだ。
 前の様に蒼白になりだ、こう言ったのだった。
「将星が落ちた」
「将星が」
「あれが」
「うむ、見るのじゃ」
 空から大きな星が落ちていた、その動きを見ての言葉なのだ。
「あの星をな」
「では」
「天下の将のどなたかがですか」
「近いうちにお亡くなりになられる」
「そうなのですか」
「しかも他の星達の動きがじゃ」 
 それも見て言う幸村だった。
「禍々しい、天下に凶兆が幾つか起こる」
「幾つかとは」
「それは一体」
「何じゃ、この星の動きは」
 さらに言う幸村だった。
「これまでにない、恐ろしいことになるか」
「そこまで、ですか」
「凶兆が幾つも起こる」
「そうなるのですか」
「その様じゃ、これは大事に備えねば」
 そうしなければならないとも言うのだった。
「真田家も、そして天下に凶兆を起こさせぬ為にも」
「必ず」
「そうしなければ」
「ならない」
 こう言うのだった、そしてだった。
 幸村は秀次に星のことを話した、すると秀次も真剣な顔で応えた。
「わかった、ではな」
「関白様も」
「将星ということは天下の柱ともいうべき方が亡くなられる」
「そしてです」
「凶兆は何かわからぬが」
 それでもというのだ。
「謀反や地震、野分や火事とな」
「色々考えられまする」
「何があってもよい様に銭や兵を動かす用意をしておこう」
「常に」
「備えあれば憂いなしじゃ」
 だからこそというのだ。
「備えておこう」
「天下に異変があった時に」
「いつもな、そして治部や刑部にも話し」
「天下の急には」
「すぐに動ける様にしておこう」
「それでは」
「よく伝えてくれた」
 秀次は微笑み幸村に礼も述べた。
「ではな」
「銭や兵を備え」
「そしてじゃ」
「いざという時は」
「そうしたものを使い」
「危機を乗り切るとしよう」
「わかりました」
 幸村はまた頷いて答えた、そして。
 秀次にだ、こうも言った。
「このことはです」
「うむ、太閤様にもな」
「お話をしておきましょう」
「何故兵や銭を用意しておくか」
「そのことをお話しておきますと」
「いらぬ噂が出てもな」
「太閤様が事情をご存知なので」
「問題はない」
「ですから」
 それでというのだ。 
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