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オズのビリーナ

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第六幕その七

「リンチェンおじさんも好きだけれど」
「一番はだね」
「だってひいひいお祖母ちゃんとても頭がいいし勇気もあってしっかりしてるから」
 だからというのです。
「いつも皆のことを考えてくれているし」
「私は皆のお母さんでこの国の女王よ」 
 こうはっきり言ったビリーナでした。
「それなら皆のことを考えるのは当然でしょ」
「そうなんだ」
「そう、それに皆の為に考えて勇気を出してしっかりしないと」
 このことについても言うのでした。
「誰が王様を助けてこの国を守っていくのよ」
「だからなんだ」
「私はそうしているだけよ」
「当然のことなんだね」
「そうよ」
 ビリーナにとってはというのです。
「そんなことは普通よ」
「ひいひいお祖母ちゃんにとっては」
「だから言うまでもないわ」
「そうなんだね」
「そこで尊敬しろとか言わないのね」
 ガラスの猫はビリーナにこう聞きました。
「そうしたことは」
「誰かに自分を尊敬しろとか言うのは恥を知らない人のすることよ」
 ビリーナはガラスの猫にはっきりと言いました。
「あんた達もそれはしないでしょ」
「このガラスの身体を自慢はするわ」
 ガラスの猫は今もその透き通った身体を誇らしげに見せています。 
 ですがその彼女もです、こう言うのでした。
「けれど私誰かに尊敬してもらいとは思わないわ」
「そうでしょ」
「私は私よ」 
 エリカもこう言います。
「尊敬されたいとも人にどう思われても構わないわ」
「そうよね、あんたも」
「尊敬しろなんて誰にも言わないわよ」
「私もよ、そんな恥知らずなことは言わないから」
 間違ってもというのです。
「そういうことを言う人程駄目人間だしね」
「だからなんだ」
「そう、私はあんたにも誰にもね」 
 あらためてカミーユに言うのでした。
「尊敬しろとは言わないわ」
「当然のことをしているだけで」
「何もね」
 一切というのです。
「偉いこともしていないし偉いことをしていても」
「尊敬しろとは言わない」
「そんなことを言う人こそ」
 自分から、というのです。
「尊敬されないわよ」
「そういうものなんだね」
「そうよ、だからいいわね」
「わかったよ、じゃあね」
「私は尊敬しなくていいから」
「好きでもだね」
「そういうことよ、王様を尊敬しなさい」
 尊敬するのならというのです。
「いいわね」
「僕もそんなことは言わないから」
 ビリーナと同じく、というのです。王様もこう言います。
「恥を知っているつもりだからね、僕は」
「そうなんだ、ひいひいお祖父ちゃんも」
「そうだよ、言わないよ」
「ううん、尊敬される人は最初からそんなことを言わないんだね」
 カミーユはビリーナと王様のお話を聞いて考えるお顔になりました、そこに確かなものを見てそうしてなのです。
「そうなんだね」
「あんたは誰から尊敬されたいと思ってる?」
「いや、全然」
 カミーユはビリーナの今の問いにはっきりと答えました。 
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