世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
11eyes ~避けられない戦いがある~
蒔風が何処かへと行ってしまったので、皆はいったん解散することになった。
その後、美鈴の家に集まり、事が終わるまで泊まりこむことになった。
「それにしてもさ、やーっぱでけぇよな、美鈴先輩の家」
「草壁家の別宅だったよな、たしか」
「でもまた皆でこうやって集まると、なんだかわくわくしますね!!!」
以前も赤い夜の騒動の時にみんなで集まったが、やはり大きい草壁邸。
その草壁邸へと続く道を、美鈴以外の6人が歩いていく。
ちなみにすでに敷地内だ。
門から建物までもまたそれなりの距離がある。
思わずため息をつくが、それが冷気で白く染まる。
「フゥゥウウ・・・さみぃなぁ・・・早く着かないかねぇ」
「そんなこと言ってもしょうがないだろ・・・ほら、見えてきた・・・・ぞ。おーい、美鈴せんぱ・・・い?」
駆たちが家の前に到着する。
だが、その場の状況に皆が口を開けて呆けてしまった。
ゴゴゴゴ・・・という雰囲気を満遍なくその場に表しているのは草壁美鈴さん、18歳。
そしてその眼の前にテント一式をまとめ上げられて正座している蒔風舜、19歳(肉体的に)
その状況に
「「何が起きたーーー!?」」
叫ぶしかない一同だった。
「おお、駆に賢久!!皆も来たか!!!」
美鈴が駆たちの方を見、蒔風もヒラヒラと手を振っている。
「美鈴先輩・・・これは一体?」
「この男がうちの林の中でテント張っていたから撤去させたんだ」
「それで事情をお話ししようとしたところさね」
「テント?あんた家無いのか?」
「オレは世界を回る者。家なき子なんですヨ!!で、世界に着くたび、テントの場所が情報として送られてきて、そこに着いたらあらびっくり」
「そうだったのか・・・・」
「だから許してください!」
「まぁ・・・そういう事情なら仕方ないね・・・・」
「ありがとう!!じゃあ早速・・・・」
「待て待て待て。なぜテントを組み立て始める?」
「え?だってお世話になるわけにはいかないしですよ」
その発言にはぁ~~~と額を押さえて呆れる一同。
菊理やゆかはあはは・・・と汗をたらして笑っている。
「わかった、部屋を用意するからそんなところで寝泊まらないでくれ」
「マジで!?ありがとうごぜーますだ!!!」
そんなこんなで蒔風の宿泊も決まり、夜がふける。
「はい、ここではじまりました「男湯、煩悩爆発!!!」の時間がやってきました!!!!!」
「「ワーーーー!!ドンドンパフーーー!!!!」」(一名棒読み)
そんなこんなで現在入浴中。
皆で晩御飯を食べ、そしてお風呂に入っているのだが・・・・
「おぉー。すげー!!!」
「一軒家にこれだけのお風呂があれば十分だよな」
「温泉温泉~~~♪」
この家は凄かった。
男湯、女湯に分かれた浴場まであったのだ。隅の方にはサウナもある。
ホテルなどの大浴場までとはいかないが、個人の家が持つには十分な広さだ。
「にしても・・・・」
「ん?」
「蒔風の傷、すげーな」
「それ、全部今までのか?」
「そうだね~~はぁ~~ヌクヌク」
身体を洗い終わってから湯船に浸かった二人が蒔風に質問する。
今まで何度も戦った「奴」とはどれだけ強いやつなのかと。
「うーん。あいつ強いからね~~・・・・ホント、俺なんて「勝った」って胸張って言えるのなんか三回くらいじゃね~~?」
「今までいくつ回ってきたんだ?」
「ん~~~とね、わかんなぃ。ひ~ふ~み~・・・・・」
蒔風がのんびりと指を曲げて数えて、指をパチンと鳴らして答えた。
「25個前後かねぇ~?二回行った世界もあるから大変なんだよな~」
「そんだけしか勝てないのかよ。「奴」が強すぎんのか?」
「んん~~~?そ~~だねぇ~~でもま、安心してに。オイラさん、世界最強だから~~~~」
「大変・・・なんだな」
「別に~~~こうやって楽しいこともあるし~~~別に後悔はしてないよ~~ただ~~~~」
「ただ?」
「そのきっかけだけは・・・残念だったけどね・・・・」
「「きっかけ?」」
「・・・・あーーーーのぼせそうだ!!サウナ行こうぜ!!我慢大会だ!!!!」
そう言って二人の手を取って湯船から上がる蒔風。
おっと、きちんとタオルは腰に巻いてますよ?
湯船にタオルを入れるな!!と言われそうですが、この男、こういった面では恥ずかしがり屋なのである。
蒔風が二人と一緒にサウナに入ろうとその扉に手をかける。
その瞬間
彼らを脳髄から揺さぶるボイスが聞こえてきた。
「美鈴先輩おっきいですね!!!」
「や、やめてくれ・・・そんなにじろじろ見ないでくれ・・・・」
「うぅ~~ん。でもやっぱり女性として憧れちゃいますね~~」
「雪子君だってないわけじゃないだろう?」
「でも美鈴先輩には叶いませんよ~」
「これも結構肩が凝って大変だし鍛錬には邪魔だし・・・・・」
「「「襲え!!!」」」
「え?なに、うひゃぁぁああああ!!!!!」
ガシッ!!!!
今この時以上に心が一つになったことがあっただろうか?
おそらくは無いだろう。ああ、なぜ人はこんなにも愚かなのか・・・・・
「壁の高さは約三メートル」
「厚さは十五センチと言ったところか?」
「なぁ・・・いいのかこれ?」
訂正、一名冷静な男がいました。
「なあ駆、考えてみろ。普通浴場作ってさ、露天でもないのにこんなふうに上の部分が開いてるなんておかしいと思わないか?」
蒔風の言葉どおり、この浴場は女湯と男湯に分かれており、銭湯のようにそこを仕切る壁の上部は空いている。
「普通はあそこを塞ぐ。だが、あえて開けられてるのはなんでだ?」
「オレには見える・・・ここを立てた大工のおっちゃんの笑顔が!!そのサムズアップが!!!」
「お?おお?」
「これは行かねばならぬ。かの織田信長も、合戦と女湯、どちらを選ぶか本気で悩んだらしい(嘘です)」
「そうだぞ駆。目の前に牛がいて、それを喰わないライオンはいない。オレたちは・・・ライオンなんだ!!」
何かと言うと亀のような気がする。
出歯亀である。
「さて・・・いきますか?」
「おう!!」
「行くぞ!!!」
「まず桶を片っ端から集めろ。それから逃走経路の確保だ。この場の条件ではじっくり見ることは叶わない。おそらく!見た瞬間に見つかるだろう」
「へっ、そんなリスク、恐れるにあらずだぜ!!」
「だけど逃走先はどうする?屋敷の中は見つかるぞ?」
「こんなこともあろうかと!!あのテントちゃんと林の中に立ててきました!!!」
「つまり覗いた瞬間心のフィルムに焼きつけてから脱衣所に逃走」
「衣服を持って屋敷外に逃げ、テントに向かう」
「その通り。準備は怠るな。時間をかけ過ぎると彼女らが出て行ってしまう」
「蒔風!!準備はできた!!」
「逃走ルートに障害物は無い。劫の目で確認した」
「圧水でタイル、および全身の徐水終了。これで滑ることは無い」
三人がせっせと桶を積み上げ、覗けるほどの高さになり、その上に乗る。
「せーので行くぞ・・・」
「「「せーのッ」」」
バッ!!!!!
「おぉッ!?」
「これは・・・・」
「ばんなそかなッ!!」
「ラジカセ・・・だとっ!?」
女湯にあった物。それはラジカセだった。
そしてそれはいまもキャッキャウフフな桃源郷の音を流していた。
「この家は私の家だぞ?賢久が来るとわかっていた時点で、壁にモノを積み上げたらわかる術を仕込んでおいたのさ」
背後から声がした。
三人が桶の上から見下ろすと、そこには室内着に着換えた女性陣が。
「・・・・・・いや、なんとも熱いお風呂ダッタネ!!カケルクン、タカヒサクン!!!」
「そうだな。だがもう大丈夫だ。落ち着いた」
「逆に寒いくらいだけど、もう一度湯船につかろうか!!」
「「「あっはっはっはっは~~~・・・・・っは!!!!!」」」
三人が同時に駆けだす蒔風は脱衣所に、駆は窓から、賢久は女湯の方に飛び込み、それぞれ逃走を図った。
だが・・・・・
『ぎゃあああああ!!!ゆ、雪子!!なんでお前いつの間に!?』
『女の子には秘密がタクサァ~~~ン・・・・・』
『ぎゃあああああああああああああ!!!!!』
『駆く~ん?ニガサナイヨ?』
『な!?栄光の手(ハンズオブグローリー)!?』
『駆君はこの空間からは逃げられないんだよ~~?』
『まてゆか、落ち着け、落ち着くんだ』
『弁解、できるの?』
『できませんすみまぎゃああああああああああああ!!!!!!』
「・・・・・・なるほどな。駆が「目」で見たのは「覗いた場合」の未来。つまり、覗けなかった場合は想定外だったわけか」
「で?君はなにか言うことは?」
美鈴が草壁一族に伝わる5振りの宝刀、草壁五宝が一本、小烏丸天国をペシペシと手で叩きながら訊く。
その後ろでは菊理がにっこりとほほ笑み、さらにその背後に拘束具に身を包んだ天使、アブラクサスが鎖をジャラジャラと言わせていた。
正直、メッチャ怖い。
「では本当のことを言おう。正直、覗いた先に何があっても構わなかった。ラジカセでも満足だ。オレが求めたのは、「覗く」というシチュエーションと!!そのための経緯だったんだからな!!!」
「それで言い訳になるかぁ!!!!」
「ですよねーーーーー!!!!ってうごああああああああああ!?」
蒔風の悲鳴が響く。
こうして悪は滅びた。
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「フンフフ~~ン。ふっろっそうじ~~~~♪」
「なんでそんなに上機嫌なんだ?」
「この程度で済んだなら上々じゃね?」
「た、たしかに・・・・・」
蒔風たち三人は罰として風呂掃除を任された。
モップを手にゴシゴシと綺麗にしていく。
「蒔風はこういうのめんどくさいんじゃねえか?」
「やるまではめんどくさいよ?でもやり始めたら徹底的だから、俺」
「あーわかるわかる。やるまでが面倒なんだよな。やっちまえばあっという間なのに」
「そうそう!!!」
そう言いながら掃除して、終わるころに女性陣が飲み物を持ってやってきた。
「どうだ?終わったか?」
「「「終わりましたっす!!!(`・ω・)ゝ」」」
「よろしい」
「にしてもホントーにピカピカですね~~」
「フッ、オレにかかれば、この程度の掃除、簡単よ」
「何を威張ってるんだ」
「ごめんなさい」
それから皆で大広間に行き、そこでカードゲームやらボードゲームやらをやって遊んだ。
「ああ、そういえばさ」
「なんでしょう?」
蒔風が菊理に声をかけ、それに菊理が答える。
「なんでアブラクサスはオレが来ること知ってたんだ?」
「それは・・・・・えっと・・・・・」
「言えない事ならいいんだよ。ただちょいと気になってね」
「・・・・そんな聞きたそうな眼をしても、説得力無いですよ?」
「バレタか」
「わかりました、お教えしますよ」
この話は誰も知らない事らしいので、なるべく言いふらさないでくれと前置きしてから菊理が話を始める。
赤い夜での最終決戦。
皆が力を出し切り勝利したものの、ボロボロで、死者まで出ていた。
美鈴や駆は力の酷使で身体や魂が崩壊しかけていたし、ゆかと雪子は魔女、リーゼロッテに吸収され、賢久はすでに死亡していたのだ。
だが、戦いに勝利した皆の体内から力の源である「虚無の魔石の欠片」と、駆の「劫の目」を菊理は取り出し、アブラクサスに吸収させた。
それによりアブラクサスはデミウルゴスに覚醒し、真の姿となった。
その力は神に等しく、世界を修復するほどのものだった。
その力故に菊理は世界から孤立し、神の領域で一人世界を見守ろうとした。
だが、デミウルゴスには自我が宿っていた。
そのデミウルゴスが自らと菊理の関係を断ち、一つ高層の世界領域から皆を見守ると言って消えた。
こうして菊理は人の世に戻ってこれたのだ。
「なるほどね。それならこの世界に侵入者がいたことに気付いてもおかしくねぇや」
そう言いながら菊理の頭をくしゃくしゃと撫でる蒔風。
「よかったな。人間から外れなくてよ。オレとしてもうれしいよ」
「え?」
「オレは既に存在が人外だ。翼人とかそう言うのが無くても、死を理解した時点でオレは爪弾きもんだ。だからうれしい。あんたが、ちゃんと人間やってるとこを見ると、さ」
「・・・・はい。これも、皆さんのおかげです」
「うんうん、人生、楽しんでるかい?」
「もちろんです」
そう言って次のボードゲームを用意する蒔風。
その顔は、とても奇麗に笑っていた。
「次はこれだ!!!「レインボードリーム」!!!」
「また人生ゲーム!?」
「じゃあ・・・「ブラックアンドビター」!!!」
「そればっかかよ!?」
「また「エクストラ」やる?「関西版」もあるけど」
「もうなんでもいい・・・」
「「筋肉番付」と「ハローキティ」、どっちがいい?」
「「「「そんなのまであるのか!?」」」」
to be continued
後書き
アリス
「何やってんですかまったく」
蒔風は覗きたかったんじゃない。
「覗く」と言うその行動を楽しんだんだ!!!だから別にその先に何があっても構わない!!
アリス
「人生ゲーム・・・あれ大人数でやると面白いですよね」
作者が持ってるのは「エクストラ」「ブラックアンドビター」「レインボードリーム」です。
滅茶苦茶面白くていいんですが、なかなか仲間で集まる機会がなく・・・・
アリス
「次回、送られた刺客」
ではまた次回
千鳥や千鳥、伊勢の赤松を忘れたか―――
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