| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Three Roses

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十五話 最後の言葉その五

「王国とはだ」
「決してですね」
「手を結ばない」
「そうあるべきですね」
「若し手を結ぶ者がいれば」
 太子の目は鋭いままだった、その目のまま語る。
「わかるな」
「はい、国を売った者」
「その者としてですね」
「裏切り者として処断する」
「そうなりますね」
「その者は容赦しない」
 太子はこのことには厳しく言った。
「我々の敵なのだからな」
「紛れもなく、ですね」
「王国は」
「そうなりますね」
「そうだ、あの国はだ」
 彼等はというのだ。
「正真正銘のな、異教徒達とさえ手を組むのだ」
「神の信仰を口にしつつ」
「異教徒達の手引きまでしてですね」
「帝国を脅かしていますね」
「太子のお国を」
「帝国にもいる」
 他ならぬ彼の国にもというのだ。
「王国と結ぶ者がな」
「そしてそうした者はですね」
「帝国においてもですね」
「常にですね」
「処断されている」
「そうされていますか」
「内密に処理される場合もあればだ」
 暗殺である、この場合の処理とは。
「表立ってだ」
「処刑される場合もありますね」
「どうなるかはその都度違いますね」
「しかし国を売る者は許されない」
「このことは絶対ですね」
「そうだ」
 その通りという返事だった。
「だからだ」
「この国においても」
「許されることなくですね」
「探し出し見付ければ処断する」
「例外なく」
「あの国は蜘蛛だ」
 太子は王国をここでもこう例えた。
「あらゆる手段を尽くして策で絡め取ろうとしてくる」
「北の王国や島国にも手を回していましたし」
「そのうえで我が国とも戦わせていましたし」
「半島にもそうしていましたし」
「我が国に直接仕掛けてもきました」
「それならばですね」
「今も同じだ、この国いも帝国にもだ」
 双方にというのだ。
「策を弄してくる、それならばだ」
「王国の策にはですね」
「かからない様にする」
「通じる者は許さない」
「そういうことですね」
「異端や新教の者達はいいのだ」
 実のところというのだ。
「別にな。しかしだ」
「王国と結ぶ輩は、ですね」
「違いますね」
「真の癌はあの者達ですね」
「まさに」
「そうだ、我々はだ」
 まさにというのだ。
「王国と結ぶ者こそを警戒すべきなのだ」
「このことはマイラ様にも申し上げておきますので」
 司教の言葉だ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧