ガンダムビルドファイターズ ~orbit~
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孤独の戦い 後編
「よし。打ち合わせ通り、カグラとサクラで先制して、その後ヒメラギとセシリアちゃんで前衛を抑えるように。その間、二人は二機を突破して戦艦を撃破。いいね? 」
「問題ない」
「りょーかいッス」
「ワカッタ……」
「ああ──『先制攻撃はするな。相手からの攻撃が来るまでまっすぐ進め』…………くそっ」
返事をした直後、男から指示を出される。作戦ならここで砲撃をするところだが、することはしなかった。
「カグラ レイ!何をしている!?さっさと撃て! 」
「っ────! 」
結局砲撃をすることはなく、ヤークトアルケーガンダムとカバカーリー。そして、ダブルオーライザーの砲撃が向かってきた。
「馬鹿者め……! 」
ティグリスガンダムはアルケオニスガンダムから飛び降り、向かってくる攻撃に備える。
「カグラ!どうしたの!? 」
「くっ───! 」
スザクモードのまま回避していくが、所々着弾していく。それでも致命傷とまではいかず、ヤークトアルケーガンダムとカバカーリーへと接近する。
MS形態に変形し、バスターライフル改からビームサーベルを発生させ、ヤークトアルケーガンダムに向けて水平に斬り払う。
ヤークトアルケーガンダムはGNバスターソードを二刀を構え、片方で攻撃を防ぎ、もう片方で反撃をしてきた。バスターライフル改で攻撃を防ぐと、背後からカバカーリーがビームセイバーを手甲から展開して攻撃してくる。
「カグラっ! 」
「…………! 」
シールドやバスターライフル改で防ごうとせず、そのままビームセイバーを見つめる。ビームセイバーが胴体を斬ろうと右翼を切断した瞬間、ティグリスガンダムの飛び蹴りによりカバカーリーは吹き飛ばされる。
「ふん! 」
蹴った反動でMA形態に変形し、がら空きのヤークトアルケーガンダムに突撃して吹き飛ばす。
「邪魔だカグラ レイ。貴様は後衛にでも下がるがいい」
地面に着地をするとMS形態に戻り、こちらを見ずに言われる。
「アキザワ セイヤ。カグラ レイの代わりにセシリアちゃんを前衛に回す。あとはそちらでなんとかしろ」
「……分かった。セシリアちゃん。サクラの所に向かって」
「?ワカッタ」
「そう言うわけだ。貴様は戦艦の護衛のみをしていろ。足手まといはいらん」
ティグリスガンダムはアルケオニスガンダムを遠くへと蹴り飛ばし、先程ぶっ飛ばした二機へと向かっていく。
「…………くそ」
立ち上がりながら呟くと、またイヤホンから声が流れる。
『惜しかったな。さて…………そうだな。次は味方ごと相手を撃て。バスターライフルの威力なら、誤射で味方ごと撃つことも可能だ。それなら、最悪相手を撃ち落としてもいい。ただし、味方ごとだ』
「────っ!ざけんなっ!!そんなこと───」
『出来ないと?別に構わない。彼女がどうなっても知らないがな』
「ぐっ────! 」
『では、健闘を祈る』
コンソールを握る手に力が入り、小刻みに震えてもいる。
「はあ………はあ………! 」
息を荒げながら前を見ると、ティグリスガンダムとブラウドライツガンダムが、三機対して戦っていた。人数的不利もあるのか、攻めきれずにいるようだ。
今なら…………この混戦の中だったら……………間違って当たることもあるよな?
ゆっくりとバスターライフル改を構えようとすると、ヴァサルティスガンダムの手が肩に置かれた。
「カグラ。あんま気負うっつーの。サクラ先輩の言う通り、ひとまず下がってろ。んで、落ち着いたら戻ってこいよ?だから、それまでは俺達に任せろ! 」
「…………うるせえよ」
「へ? 」
「うるせえよ。俺なら大丈夫だ。行くぜヒメラギ」
手を払いのけ、そのまま二機の元へと向かってブーストを全開にする。
「ちょっ!?カグラ!…………たくっ。しゃーねー。アキザワ先輩。どうすればいーッスか? 」
「…………アークエンジェルもそろそろ戦闘区域に入るし、ヒメラギも前線に出て。それと、カグラのサポートをよろしく」
「りょーかいッス」
こちらもバーニアを全開にし、アルケオニスガンダムのあとを追う。
「…………あんま無茶すんじゃねーぞ、カグラ」
ーーー--
「ダブルオーが厄介だな……」
ヤークトアルケーガンダムとカバカーリーは、セシリアちゃんが来たことによりやや優勢にはなった。しかし、遠くから砲撃してくるダブルオーライザーにより、攻めきれずにいる。
「カグラ レイは使い物にならんしな。ヒメラギ トウヤなら、少しは時間を稼げるかもしれん」
となると、奴が来るまで現状を維持するか。
「セシリアちゃん。ヒメラギ トウヤが合流次第、一気に攻める。奴なら多少なりともこの二機を抑える事が出来るだろう」
「トーヤヒトリでダイジョウブ? 」
「奴がやられる前に、私達が先に倒せば大丈夫だ」
「………ワカッタ」
ブラウドライツガンダムはGNバスターキャノンを折り畳み、両腕からビームサーベルを発生させてカバカーリーに接近する。
ティグリスガンダムも両手にビームサーベルを構え、ヤークトアルケーガンダムに接近する。相手もGNバスターソードを二刀を構え、距離を詰めてきた。
そしてお互いの間合いに入った直後、後方からアラート音が鳴り響いた。
「 !? 」
互いの武器を振り下ろした直後だったため、回避行動を取る以前に、後方を確認することが出来なかった。
すると、ヤークトアルケーガンダムの胴体を除いた左半分がビームに呑み込まれる。ただし、こちらの右腕と左足を巻き込む形でだ。
「────カグラ レイっ!!!ふざけているのかっ!!? 」
砲撃元を見ると、アルケオニスガンダムがバスターライフル改を構えていた。
「………………」
しかし、何も言わずバスターライフル改の引き金を引き、第二射を放ってきた。今度はこちらもヤークトアルケーガンダムも距離を大きく取り、砲撃を回避する。
「貴様ぁっ!!! 」
ビームサーベルを構え、アルケオニスガンダムに詰め寄る。
「っ───! 」
バスターライフル改からビームサーベルを発生させ、すぐにティグリスガンダムと距離を取る。
ーーー--
「アイツら何やってるんだよ………」
「ケンカ…………にしては、様子がおかしいわね」
「ちょっと止めに行ってくるね~」
「お前が止めに行ったら即負けだろバーロー」
いつの間にか観客席の出口に立っていたトウイを留まらせる。
「いいからここで待ってろ。今は……な」
そう言い、再び試合へと視線を向ける。
もしかしたら、この調子だと昨日の二の舞になるぞ…………カグラ。
ーーー--
「ぐっ──! 」
ティグリスガンダムのビームサーベルを、バスターライフル改のビームサーベルで受け止める。つばぜり合いをしていると、機体を半身にさせて尻尾となっているレギルスキャノンで横から叩きつけられた。
「っ──! 」
機体は廃ビルの中へと激突すると、追い討ちをかけるようにビームサーベルを突き出しながら突進してきた。
「やめろ二人共っ!! 」
二機の間にヴァサルティスガンダムが割り込み、シールドでティグリスガンダムのビームサーベルを防ぐ。
「今はこんなことしてる場合じゃねーだろ!頭を冷やせ! 」
「黙れ!コイツは私ごと撃ってきたのだぞ!?それを許せというのか!? 」
「許せとは言わねーよ。けど、今は忘れてくれ。カグラも、ちゃんとあとで事情を話せ」
「………………」
「とにかく、今は試合中だ。その話はあとでしよーぜ」
「…………もう知らん。勝手にするがいい」
ティグリスガンダムは押しつけていたビームサーベルをシールドから離し、再び戦闘区域へと戻っていった。
「セシリアちゃんにはなんとしてでも時間を稼いでくれって言ったからな。ちゃんとあとで礼を言っとけよ? 」
「………………」
「本っっ当。今日のオメーは無口だな。ヒイロかっての?それより、俺達も行こーぜカグラ。今度こそサポートは任せろ。誤射しそうになったらなんとしてでも止めてやんよ」
「………………もう、いい……」
「へ?もうって…………なにがだよ? 」
「うるせえっ!!いいからあっち行ってろっ!!もう俺に構ってくんなっ!!! 」
バスターライフル改を構え、発生させたビームサーベルでヴァサルティスガンダムに斬りつける。シールドで防がれてしまったが、即座に蹴りを入れて吹き飛ばす。
「…………もういいんだよ。もう…………」
残った左翼の翼を広げ、逃げるかのように飛び立つ。
「カグラっ! 」
ーーー--
『話は済んだようだな。だが、いったいどこに向かおうとしている? 』
「…………フィールドアウトすんだよ」
『それは認めん。すぐに戦闘に戻れ』
「…………………くれ」
『なんだ?もう一度言え』
「頼む…………もう、やめてくれ…………もう、充分だろうが」
『それを判断するのは私だ。先程の攻撃も、被害は相手の方が大きい。君は戦闘区域に戻り、戦ってくるがいい。それに……………ここまでやったんだ。失うものなどないだろう? 』
その言葉を聞くと、思わず足を止めてしまう。
『仲間を救うために、仲間を傷付けた。それに、歩み寄ってくる者もだ。これ以上失うものなどあるはずがない』
「っ………………!」
『昨日の事もあり、もう君には仲間などいないんだ。大人しく言うことを聞くがいい』
次々と言われる言葉には、鋭利のナイフで貫かれたかのような鋭さを持っており、心に突き刺さる。そのせいか、男が途中から何を言っていたのか分からない。
ただ…………気づいたら、俺は戦闘区域に戻っていた。上空ではトランザムを発動しているブラウドライツガンダムとヴァサルティスガンダム。ヤークトアルケーガンダムとカバカーリーが戦闘を繰り広げていた。
奥にはティグリスガンダムがセラフィムガンダムの改造機とダブルオーライザーの改造機と戦っていた。
「………………」
バスターライフル改を静かに構え、ティグリスガンダムとダブルオーライザーの改造機に標準を合わせる。二機が重なった瞬間を狙い引き金を引くと、セラフィムガンダムの改造機が、巨大なハンマーで砲撃を弾いた。
『やはり来たか!お主は我が倒そう! 』
『え?それじゃあティグリスガンダムは私が相手するんですか? 』
『ガッハッハッ!時間を稼いでくれ! 』
『酷いですよカザマ先輩~』
『踏ん張れサイオンジ!では行ってくる! 』
砲撃を弾いたセラフィムガンダムの改造機は、そのままこちらへと接近してきた。それに対し、バスターライフル改からビームサーベルを発生させ、歩いて向かう。
『ゆくぞ!引導を渡してくれる! 』
ハンマーを大きく振りかぶり、目の前まで接近すると同時に振り下ろしてきた。横に飛んで回避するも、機体ごとハンマーを捻り、横に振り払ってきた。
シールドでハンマーを受けると、ホームランでも打つのかと言わんばかりの衝撃で吹き飛ばされ、シールドも砕け散り、バスターライフル改も折れた。
建物を三つ程貫通していったところで勢いは弱まり、四つ目の建物で止まる。
『ふむ……………お主!やる気が感じられぬぞ!それでもファイターか!?それとも、試合を放棄しているのか!? 』
ハンマーを地面に立て、腕を組んで言われた。
ああ…………そうだよ。けど、放棄できるなら放棄してぇよ。
『何があったが知らぬが、本気を出してくるがいい!その本気を、我が打ち砕こう! 』
何も知らねぇ?この試合に負けろって言ってやがったから、てっきり知ってるのかと思い込んでいた。
………………いや。どうでもいいか。倒すなら早く倒してくれよ。
そう願っていると、イヤホンからまた男の声が聞こえる。
『どうせ今の君は倒してくれと思っているのだろう?別に構わない』
?もう充分って事なのか…………?
『ただし、味方の誰かを撃ち落としてからだ。それをしてからでなければ認めん。狙うのは、もちろん最初に巻き込んだ機体以外でだ』
──────っ!?
『出来なければそれでもいい。代わりに、彼女がどうなるかは分からないがね』
まだ、やれってことなのかよ?
『立ち上がるがいい!このアルデオガンダムを満足させてみよ! 』
頼む…………これ以上………………勘弁してくれ。
『うぅ…………』
「 !? 」
どこからか呻き声が聞こえ、声の方向を見ると、アマネが映っている映像からだった。
『カグラ……君…………』
「!っうあああああぁぁああぁあああぁぁぁぁっ!!!! 」
もう耐えることは出来ず、獣の咆哮のように叫んだ。すると、まるでそれが合図だと言わんばかりに、俺の意識も一瞬にして遠くなった。
【お疲れ様、レイ】
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