提督はBarにいる。
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トマトと女殺し・2
早々にホワイト・ルシアンを飲み干した不知火。まだまだ余裕だろう。次のドリンクはどうしたものか……。
「司令、次はオレンジジュースを頂きたいのですが。」
茹で玉子のサルササラダをつつきながら、不知火がドリンクの催促。オレンジジュースか。…なら、アレで行くか。脳内でメニューを決定した俺は、早速準備に移る。
氷の入ったタンブラーに、まずはウォッカを45ml。そこにオレンジジュースを75ml足してやる。これだけで『スクリュー・ドライバー』になるのだが、カクテルだと気付かれにくくするために一工夫。ここにイタリアのリキュール・ガリアーノをティースプーン2杯。ガリアーノはオレンジとすみれの香りがとても強い、変わったリキュールだ。仕上げにステアしてスライスしたオレンジとチェリーを浮かべたら完成。
これが『ハーベイ・ウォールバンガー』ってカクテルなんだ。後は不知火が気付くかどうか。刺してやったストローで啜っている不知火。
「あら?何だか花の香りが……。」
「気付いたか?普通のオレンジジュースじゃつまらんと思ってな。すみれのエキスを混ぜてみた。」
「フフ、司令も中々洒落た事をしますね。」
どうやら気に入ってくれたらしい。じゃあ俺は次の料理を作るとしますかね。スープ、サラダと来たから次は海鮮と行こうか。
まずは海老。大体10匹くらいかな?殻を外して背開きにして背ワタを取り、片栗粉を軽くまぶして水洗い。こうすると片栗粉が汚れを吸着してくれて身が綺麗になるんだよ。片栗粉を念入りに落としたら塩・胡椒で下味を付けてから片栗粉を揉み込んでおく。
フライパンを2つ出し、片方では卵を溶いて軽く塩をしてふわふわの炒り卵を作っておく。もう片方のフライパンで生姜とにんにくのみじん切りを小さじ1ずつ、豆板醤を小さじ1/2炒めて香りを出したら海老を加える。海老に焼き色が付いたらここでカットトマト缶を1/2加えて、そこにオイスターソース小さじ1/2、顆粒の鶏ガラスープ小さじ1、塩・胡椒を適量加えて味付け。仕上げに炒り卵を入れて軽く混ぜたら完成。
「お待ちどう、『たまトマエビチリ』だ。辛味は控えめにしてあるよ。」
「ありがとうございます。……卵とトマトって合うんですね、はじめて知りました。」
「いやいや、オムライスなんか卵とトマトの組み合わせの最たる例じゃねぇか?」
不知火がエビチリを食べながらそんな感想を述べている。俺が反論すると不知火は少し考えている。
「……言われてみればそうですね。」
意外と天然なのか?不知火。
お次はちょっとボリュームあるメニューといこう。使うのは骨付きのラム。いわゆるラムチョップって奴だね……ドンと2本行こうか。塩・胡椒で下味付けたらオリーブオイルで焼いていく。焼き目が付いたら一旦取り出して、玉ねぎ半分とにんにくのみじん切り大さじ1/2、塩少々を振って炒める。
ここにホールトマト。トマトソースを作る時はカットトマトよりも味が出やすいので、ホールトマト。これを潰しながら強火で加熱して酸味を飛ばす。ここにラムチョップを戻したら塩と、同量くらいの砂糖。砂糖入れないとコクが出ないからな、砂糖は重要だ。味付け終わったら蓋をして中弱火で10分煮込む。その間に付け合わせのクスクスを茹でておこうかな?
クスクスってのはパスタなんかに使われるデュラム小麦の粗挽き粉に水を含ませ、1mm位の粒にしてそぼろ状態にした物だ。国によっては主食にもなっている。ブイヨンで煮たり肉料理の付け合わせなどに使われたりもする。味は米粒サイズのパスタ、って感じだな。
「さぁできたぞ、『ラムチョップのトマト煮込み』だ。」
ラムは大人のマトンに比べてクセが少ない。肉も柔らかいし食べやすいだろう。
「ラムは初体験ですが……さほど臭くないんですね。トマトソースとの相性も素晴らしいです。」
ラムに酒が進むらしい、ハーベイ・ウォールバンガーをゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいる。
「っぷはぁ。しれい、お代わりもらえますか?」
ん?少し口調が砕けてきたな。もう少し……か?
「おぅ、ちょっと待ってな。」
よし、酔って少しは味覚も鈍ってきているだろう。ここいらでウォッカ以外のベースのカクテルも飲ませるか。
用意したのはゴールドラム。その名の通り、熟成中に金色に変化したラム酒だ。まずはこれを30ml。クラッシュアイスを入れたオールド・ファッションド・グラスに注ぎ、更にピーチリキュールを25ml。仕上げにフレッシュライムジュースを加えてカットライムを飾り、太めのストローを刺したら完成。
横浜老舗のバーが発祥のカクテル、『ジャック・ター』。ピーチとライムの爽やかで甘い口当たりが心地よく、飲みやすい。しかしアルコール度数は高め。飲みすぎには注意しよう。…まぁ、今夜は酔わせるのが目的だからな。ケケケケケ!
「ハイよ、桃とライムのミックスジュース。フローズンドリンク風だから、氷と一緒に飲むと良いぞ?」
太めのストローでズルズルとすすり上げる不知火。少し頬にも赤みが差してきたな。効いてきてるな?
「……しれい?よければ、こちらで一緒に飲みませんかぁ?」
おっと、思わぬ発言。これに乗らない手はないだろう。俺はグラスと自分のボトルを持って、不知火の横に腰掛けた。
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