提督はBarにいる。
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訓練の様子
前書き
作中に艦娘のレベルが出てきますが、作品を初投稿した当時のレベルです。悪しからず。
航空機の運用についての概要を説明し終え、俺達は再び外に。赤城と加賀、鳳翔以外の空母艦娘達が勢揃いしている。
「では、実際に部隊の錬度をご覧にいれたいと思います。」
まずはニ航戦の二人がそれぞれ自慢の艦爆・艦攻隊による複合攻撃。普段は食いしん坊&飲兵衛というダメな部分が目立つ二人だが、腐っても鯛と言うべきか、その錬度は侮れない。標的は洋上に浮かべてある老朽化した護衛艦。そこに猛然と襲いかかる友永隊長・江草隊長率いる艦載機の群れ。上空と水面スレスレからの三次元的な攻撃こそ空母の最大の強みだろう。
巨大な水柱が上がり、双眼鏡で確認すると護衛艦の喫水線には巨大な穴が空き、艦橋構造物は軒並み黒煙を吐いている。深海棲艦はアレよりも小型で特殊な装甲を有している為、あそこまでボロボロになる事は少ないが、それでも大破位までは追い込めるだけの火力だろう。
「流石は“神様”と呼ばれた方が率いる航空隊ですね。錬度が違う。」
「そうですね、私の持つ村田隊も、もっと錬度を上げないと……」
相馬中将と翔鶴さんは興味深そうに双眼鏡を覗いている。やはり航空機の運用に関心が強いらしい。続いて、烈風・零戦による模擬空戦が始まる。
普段瑞鶴が運用している零戦五三型甲の部隊が、加賀の運用している烈風改の部隊を追いかけ回している。しかし妖精さんの技術でペーパープランに終わった烈風改の飛ぶ姿が見られるとは、マニアにとっては感慨深い物だろう。
そもそも、烈風改と呼ばれた航空機のペーパープランは3通りがあり、
・『誉』エンジンをハ43型に換装した仮称烈風一二型
・烈風の武装を翼内30mm機銃×4、斜め銃30mm機銃×2を装備した高高度局地戦闘機
・仮称烈風一二型にターボチャージャーを取り付けた型
の3通りの内、妖精さんの再現したのは3つ目のターボチャージャー装備型だった。しかし烈風一二型の時点で機械式の3速過給器が装備されており、更にターボチャージャーを付ける事で発生する重量増を補って余りある性能アップが見込めなかった為に、ペーパープランに終わった悲運の機体。それを妖精さんの技術力で復活させ、艦載機に改造したのだ。※烈風一二型は元々局地戦闘機としてのプランだった
零戦よりも長大な機体を、大馬力のエンジンが唸りを上げて引っ張り上げる。小回りは小柄な零戦には多少劣るかも知れんが、その他最高速等は圧倒的に上。総合的な性能差で零戦五三型を引き剥がしにかかる。
対する零戦五三型も零戦の名を冠してはいるが、性能・搭乗員共に烈風改に勝るとも劣らない。率いている小隊長が有名人なのだ。翔鶴・瑞鶴に改ニが実装された際、艦載機のパイロット妖精の中に、『零戦虎徹』と呼ばれた岩本徹三氏の生まれ変わりが発見された。艦載機のパイロット妖精は先の大戦のパイロットの英霊の生まれ変わりだという説が有力で、その証拠に江草隊長・友永隊長の両名のように、他にも何人かの有名なパイロットの生まれ変わりが見つかる事がある。今回もそのパターンで、零戦虎徹が発見された。
それを聞いた工廠妖精に明石、夕張が大ハリキリ。零戦五ニ型を改造し、五三型を造り上げてしまった。五ニ型のエンジンを水メタノール噴射装置付きの栄三一型エンジンに換装し、弱点とされていた燃料タンクの防弾を強化した機体だ。一般的な零戦二一型に比べて武装を強化した五ニ型に、エンジンの燃焼効率を高めて性能をアップした事で運動性能を損なわずに速度や航続距離を伸ばした事で、烈風改に食らい付く。格闘戦となればその小回りは顕在であり、烈風の背後を取って得意の巴戦に持ち込んでいる。やはり指揮官の教えが良いと、部下の腕前も上がってくるものらしい。次々と烈風がペイント弾を被弾し、飛行場に降りてくる。最後に残った烈風の小隊長は岩本徹三妖精自らが追いかけ、熟練ならではの芸当『燕返し』で一瞬にして背後を取り、トドメを刺した。
「やったぁ!特訓の成果が漸く……!」
岩本小隊を預かっている瑞鶴が嬉しそうに飛び跳ねている。対する加賀は少し不満そうだ。俺の側に控えていたが、ツカツカと近寄っていき、
「他の鎮守府の提督の前よ、はしたない真似は止めなさい。」
と、鋭い眼光で諌めた。明らかにシュンとして見える瑞鶴。
「…けれど、艦戦の腕前は見事だったわ。よく頑張ったわね、瑞鶴。」
そう言って頭を撫でている。撫でられている瑞鶴も、嬉しそうにエヘヘと笑っている。相馬中将の翔鶴さんは有り得ない物でも見るかのように驚いているが、まぁ珍しいよな。一航戦と五航戦……特に、加賀と瑞鶴は仲の悪さで有名だ。ウチの二人は仲違いした時期もあったが、今では良い先輩後輩といった仲だ。ただ、こんなに褒めてやるのは珍しいが。俺がニヤニヤしながら加賀を出迎えると、尻をつねられた。止めて下さい、痛いんですけど。
その後もドイツ製の艦載機の模範飛行や、艦娘による一斉発艦など、様々な状況を想定した訓練を視察してもらった。
「視察としてはこんな物かな。少しは参考になればよかったが。」
「いえいえ、とても有意義でした。ありがとうございます。」
気付けば時刻は夕暮れ時。熱心に視察しているモンだから、昼食も取らずに続行していたが、そろそろ空腹も限界だろう。
「…さて、と。そろそろ良い時間だし、ささやかながら君達をもてなしたいと思うんだが……どうかな?」
「えぇ、是非。」
そのやり取りを聞いてざわつく空母達。勘弁してくれ、お前ら全員に奢ってたらウチの財政が……。
「でも、私達だけと言うのは申し訳ないですし、良ければ皆さんと語らいながら食べたいのですが……如何でしょうか?」
相馬中将の奥さん(翔鶴さん)、その優しさが眩しいよ。眩しいけど……俺の心が痛い。
「解りました、……おいお前ら、中将の厚意に感謝しろよ?」
「「「「「は~い♪」」」」」
おいお前ら、目が雄弁に物語りすぎだぞ、
『提督、ゴチになります(笑)』
って。はぁ……、財布の大破は確定か(涙)
「提督、私もお手伝いしますから。」
優しいのは鳳翔さんだけかよ(号泣)
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