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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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出し抜く術

 
前書き
妖精たちのクリスマスでの人型シャルルの髪色が思ったよりピンク系統だった。完全に真っ白かな?と思っていただけに思わず二度見。 

 
「「「あぁ~!!」」」

互いを指さし声をあげる。見覚えのあるその男は、以前も使用していた不思議な形の武器を片手に俺たちと同様のポーズをしている。

「お前らこの間の・・・」

つい数日ほど前の出来事であるため、お互いに鮮明に記憶が残っている。あの時は不意討ちに押されてしまったけど、今回はそうはいかないぞ。

「ははぁ、なるほど。次はお前らが雇われた兵隊ってわけか」
「そんなところかな」

兵隊と言われると語弊がある気もするけど、雇われている身であるから間違ってはいないのかな?いや、それはそれでどこか腑に落ちないところがあるけど。

「村の人たちが言ってた遅れてきた五人目って・・・」
「こいつのことか~」

目の前の男・・・カラスだったっけ?この人はアイーアの町にいたのだから合流が遅れていたのだろう。ここを最初に乗っ取った四人は二週間前からいたって話だったし。

「しかし、こんなところでまた会えるとは・・・飛んで地に落ちる夏の虫だぜ」
「うん、ちょっと違うね」

それを言うなら飛んで火に入る夏の虫だと思う。地に落ちるって寿命を迎えて勝手に力尽きた虫じゃないのかな?

「どっちでもいいよ!!」

間違いを指摘されて怒ったカラスは鎖で繋がれた二本の棒の武器を振り回す。

「さぁ!!俺に会ったのが天狗の納め時だと諦めな!!」
「「年貢!!」」

よくわかってもいないのに難しい言葉ばっかり使いやがって・・・使い方は間違っていないだけに、非常に頭の悪さが浮き彫りになっている。

「どうする?」
「戦うしかないよね~?」

念のためセシリーにも確認しておくが、やはりここでの行動は一拓か。偵察だけのつもりだったから信号弾も持ってないし、俺たちだけでやるしかない。

「セシリー、耳貸して」
「ん~?」

だが、一応の事態を想定してセシリーに一つだけ作戦を伝えておく。やらなくて済むといいんだけど、いざピンチの時に何も策がありませんじゃ話がないからね。

「ゴニョゴニョゴニョ」
「うんうん。わかった~」

俺の案に賛同してすんなりとうなずいてくれるセシリー。これで下準備はOK。後はこいつを倒すだけだ。

「いつまでおしゃべり・・・」

打ち合わせが終わり、敵に向き合おうとした時、太陽の光が遮られ人の影が重なってくる。それに気付いて上空を見上げると、そこには武器を振り上げて飛んでくる男の姿があった。

「してんだ!!」
「わぁ!!」

左右に散って何とか回避する。しかし、カラスの攻撃は地面を大きく打ち砕き、砂や石が周囲に飛んでいく。

「くっ!!」
「いたた!!」

全身に飛んできたそれに思わず目を閉じる。偶然散ったものだからダメージこそはないけど、おかげでこっちは無防備な姿になっている。

「オラァッ!!」
「ぐっ!!」

やたらデカイ声と共に腹部に大きな衝撃が走る。そのなんと大きいことか、人形でも投げたのではないかと言うほどに速い速度で飛ばされてしまい、木々を薙ぎ倒して地面を擦る。

「シリル!!」
「大丈夫!!」

パワーは凄まじかったけど、運良く予め進んでいる方向に飛ばされたことでダメージは見た目ほどでもない。ただ、それでもこれだけ飛ばされるとかなりのダメージを受けていることには変わりないから、まずいと言えばまずいと言えなくもないけど。

「可愛いのに意外とタフだな。後四年してから出会いたかった」
「年数減ってる!?」

以前遭遇した時は確か五年と言っていたはず。年数が減っていて少し恐怖を覚えたのは言うまでもない。

「でも今日が()()の日って言ってたし、逃がすわけには行かねぇんだよな」

小声でブツブツと不満げに何かを呟いているカラス。俺には聞こえないように言っていたようなので、彼が何を言っているのかは聞き取れなかった。

「まぁ、いいや」

ガンッ

「!!」

思考の時間が終わったらしく、こちらを見据えた青年。しかし、その直後右肩に痛みを感じうずくまる。

「四年も待ってらんねぇし、殺しちまうか」

いつの間にか放たれていた攻撃。鎖で俺の肩を叩き抜いた棒を引き戻し、二本の棒を脇に抱える。

「シリル!!大丈夫!?」

すぐさま心配して俺の隣へとやって来るセシリー。彼女は肩を押さえてうずくまる俺の顔を覗き込むように膝を地面につける。

「さて、次はそっちの嬢ちゃんを・・・あれ?」

セシリーを攻撃しようと武器を構えた男は、俺の方を見て一旦その構えを解く。

「あれ?生きてたんだ?てっきり仕留めたもんかと思ってたぜ」

手応えがあったらしく俺を仕留めたと思っていたらしい。今のはほとんど反応できていなかったけど、反射的に体が避けようと仰け反ったことでダメージを緩和できたみたいだな。それでも、この威力は半端じゃないけど。

「スピードもパワーもエルザさんくらいかな?」
「スピードはもう少しあるかも~」

血は出ているけど、傷口は深いわけではない。軽く止血して止まってから立ち上がる。

(俺の目で完全には捉えられなかった。久しぶりだな、この感じ)

近頃はどんな戦いでも目で追えないことはなかった。今のは油断していたことを差し引いても、相手の速度が上回っていたことは事実。

(でも、負ける気はしないかな?)

スピードがある分パワーは若干劣るところがある。付け入る隙は、十分にあるだろう。




















レオンside

「はくしゅん!!」
「大丈夫か?」

雪だるまになるんじゃないかと言うほど着こんで寒さ対策をしているラウルが手で口元を押さえくしゃみする。寒くて震えるということはないけど、体のすべてを覆えるわけではないから、露出しやすい顔が冷えるらしく赤くなってきている。

「うぅ・・・こたつで丸くなりたい」
「猫かよ」
「猫だよ!!」

雪が降るとよく犬は外を喜んで走り回り、猫はこたつで丸くなるって言うけど、あれ実際は犬も寒くて走り回っているだけらしいよな。犬もこたつで丸くなりたいだろうに、猫のせいで追い出されちゃったんだよな。

「ラウルのせいでなぁ」
「え!?ラウ何かした!?」

一人言を呟くと彼は耳がよかったようで驚いてこちらをじっと見てくる。別にラウルのせいじゃないけど、ただ思い付いたから口に出しただけなんだよ。

「しかしどこにも見当たらないな」
「話反らした!!話反らしたよね!?」

いまだに食い付き迫ってくるラウルを押し退けながら、目的の物を探して遠くを見渡す。誰が求めているのかはわからないけど、そんなお宝っぽいものなら何かしらの洞穴や遺跡にあるものだと思っていたけどそんなものどこにも見当たらない。まさか雪の中に埋もれているとか?

「山頂にならあるんじゃないかな?」
「もうすぐその山頂に着いちまうけどな」

どこを目指せばいいのかわからなかったので、とにかく前に前にと歩を進めていった俺たち。もっと探し回るべきなんだろうけど、当てもなくさ迷っていたらそれこそ遭難しかねない。ラウルがいればいつでも飛んで逃げれるけど、彼が動けなくなったら走って降らなければならず時間がかかってしまう。なるべく迅速に行動していかないと。

ゴゴゴゴゴォッ

「ん?何か言った?」
「ラウは何もいってないよ」

なんか音が聞こえたような気がして足を止めたけど、気のせいだったようだ。なので改めて歩き出そうとした時、先程よりも大きな音・・・さらに今度は震動まで起き思わず周辺を見回す。

「レオン!!上!!」

音と震動の正体が何なのか、それに気が付いたラウルが上空を指さすのでそちらを見上げる。

「ドラゴン?」

そこにいたのは黒い翼を持った巨大なモンスター。ドラゴンだった。




















シリルside

「オラァッ!!」

両手に両端の棒を持ち、そのうちの片方を投じてくるカラス。俺はそれを頭を下げて交わし、彼の武器は空を切った。

「水竜の・・・」

攻撃を放ったところで無防備な彼に接近し、拳に魔力を込める。

「鉄拳!!」

片足を踏み込み一直線に拳を振るう。その攻撃に対しカラスは手に持っていた方の棒であっさりと防いでくる。

「どうしたどうした?一撃も届いてないぞ?」
「くっ・・・」

片側の棒で遠距離攻撃を放ち、もう片方で防いで近距離の攻撃へも対応してくる。おまけに・・・

「ハァッ!!」

体を反転させて先程放たれた棒を弾き飛ばす。鎖で棒と棒とをくくりつけているから一定の範囲にまでしか飛ばず、引き寄せれば戻ってくる。それはわかるんだけど、相手の動きには一切引き戻そうとしている様子がない。しかも、それなりに距離を開ければ届かないと思って下がると、鎖が伸びてきて確実に捉えてくる。

「パーンチ!!」
「ぐほっ!!」

弾かれた棒を引き戻そうと視線を向けているカラスに後ろから拳を叩き込むセシリー。後ろからの攻撃には対応できないらしくちょいちょい当たるんだけど、正面の攻撃は全然届かない。すごい反応速度だ。

「いててて。いくら女の子でも二人は卑怯だろ」
「女の子じゃない!!」

前後を挟むように退治している俺とセシリーに、殴られた箇所を擦りながら愚痴をこぼす。それには俺も同意だけど、こちらはここで戦闘をするつもりがなかったので、準備を一切整えていない。これくらいは多目に見てほしいものだ。

「ま、ダメージは全然ねぇけどな!!」

ほとんどノーモーションで攻撃を仕掛けてくる。それを見てセシリーは(エーラ)を出しジャンプで避けようとするが、あろうことか放たれた武器の軌道が変化し、飛び上がったセシリーに直撃する。

「わぁぁぁぁぁ!!」
「セシリー!!」

打ち落とされて地面に叩き付けられるセシリー。彼女に向かってカラスは歩み寄ろうとしていたので、後ろで両手の中央に魔力を集める。

「雲竜水!!」
「!!」

振り向き様に持っている武器で攻撃を防ごうとするが、威力に負けて名前もわからぬ不思議な形状の武器は後方へと弾かれていた。

「わっ!!やべっ!!」

慌てて武器に向かって走っていくカラス。丸腰の彼を狙い打とうかとも考えたが、今は守りを固めるべきだと考えてセシリーの元へとかけていく。

「立てる?」
「ありがと~」

手を差し出して彼女を立たせる。その間に相手も武器を拾い上げたようで、状況は元通りといったところか。

「動きが早いね~」
「うん。あの武器もなかなかだよね」

アイーアの村での話だと、彼は魔導士ってことだったから、たぶんあの武器は魔力で操っているんだろう。軌道や鎖の長さ、それらを持っている手から流し込む魔力でコントロールしているはず。

「使い方さえわかっちゃえば大丈夫かな?セシリー!!」
「うん~?」

攻撃の方法は理解できた。それならと相棒に視線を向けてアイコンタクトを送る。それを受けた彼女も何をするのか理解したらしく、コクッと一度うなずいた。

「おっ?何か策があるのか?」

片足を後ろに引き、いつでも動き出せるようにしてある青年。さすがは少数で攻めてくる実力者、隙が全くない。

「水竜の・・・咆哮!!」

胸一杯に吸い込んだ空気を吐き出すようにブレスを放す。地面に目掛けて。

「はっ!?」

地面に攻撃が直撃したことで周囲に砂煙が上がる。それにより向こうはこちらの姿を見失ったらしく、あたふたしていた。

「悪いけど一旦下がって体制整えるよ」
「じゃあね~!!」
「何!?」

これは目潰しとしての煙幕を模して起こした煙。これさえあれば向こうはこちらの居場所を探れない。

「おい!!ちょっと待て!!」

大声で俺たちを逃がすまいと叫ぶ男。それに釣られて声を出すと思ってるのかな?シカトするよシカト。

「くそっ、逃がしたら何言われるかわかんねぇぞ」

村に近づくものは全員殺せとでも言われてるのかな?焦りで思考がグチャグチャになっている様子。ここで・・・

ガサガサ

「そこか!!」

草むらの鳴る音が聞こえ、獲物目掛けて攻撃を繰り出そうとした青年。その後ろから・・・

「こっちだ」
「うおっ!!」

飛び蹴りで奇襲をしてみたりする。

「テメェ・・・逃げたんじゃなかったのか?」

顔から地面に倒れたことで鼻血を出しながらこちらを睨んでくる。こいつ結構騙されやすいな、勝てそうな気がしてきたわ。

「お前みたいな厄介な相手、見過ごすわけないだろ」
「へへっ。そうこなきゃ・・・!?」

逃げなかったことで好機と感じた彼は嬉しそうな笑みを浮かべて俺と正体したが、ここであることに気が付いた。

「あれ!?もう一人は!?」

全方向を見渡しセシリーの居場所を探す。それからしばらくして彼は彼女を見つけたが、それはもう攻撃も届かぬ上空の先へといなくなってからのことだった。

「さっきの半分は本当かな。セシリーだけは逃げるように指示しておいたから」

ピンチになった時も勝利を確信した時も、敵対していることをいち早く味方に伝えておかなければならない。人数は五分五分みたいなものだから、援護にこれれば助かるし向こうも遅くて心配して無防備に出てくることがなくなる。

「コノヤロウ・・・」

怒りで目が血走ってきている男。だが、こちらもそれに臆することなどなく睨み返す。

「一対一なら負けねぇ!!」
「その言葉、そっくりそのまま返してやる」

武器の仕組みはわかった。体も戦うための状態に近付いてきた。ここからは力と力でぶつかるだけ。



















第三者side

「遅いねぇ、シリルたち」
「そうね」

シリルたちが戦闘している頃、そんなこと知りもしないウェンディたちは心配そうに彼らが駆けていった方角を見ていた。

「旦那が心配?」
「ラブラブですね!!」
「え!?そういうのじゃなくて!!」

この状況下でも普段と変わることなく茶化してくるシェリアとサクラに顔を赤くして反論するウェンディ。三人が戯れているのを母のような眼差しで見ていたシャルルは、視線を戻すとあることに気が付いた。

「ねぇ、あれ見て」
「「「え?」」」

シャルルに並び彼女の視線の先を眺める。すると、遠くで黒い煙が上がっていることに気が付いた。

「あれって・・・」
「山火事!?」

サッと顔から血の気が引いていくのが誰の目からも明らかだった。四人は状況を把握すると大慌てでここに避難している村人たちに危険を知らせにいった。


















ボワッ

赤い魔水晶(ラクリマ)から現れた炎が木へも移り、大きく燃え上がっていく。

「エーメの話じゃこの辺に村人たちがいるって話だったんだ。んで、今日部隊が到着する前に皆殺しにしてこいよと」

ポケットに入っている火の魔水晶(ラクリマ)を次々に投下して林を燃やしていく坊主頭の男。その隣には、100kgは軽くあるであろうカマを携えた大男がドシドシと歩いてくる。

「でも、一々探すのは面倒だよな」
「あぁ。だから・・・
















森に火をつけて出てきたところを狩る。害虫狩りの始まりってことだ」

少女たちに迫り来る黒煙。それは、彼女たちに危険を知らせるサインであった。











 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
今回やってみたい取り組みは同時に多数のバトルを進行するということ!!
シリル、レオン、ウェンディ、シェリア、それぞれのバトルを一度にやってみたいと考えてストーリーを進行させています。
次は他のバトルにも入っていく予定です。どうなることやら・・・ 
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