提督はBarにいる。
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提督の麻雀教室・その1
那珂と川内に麻雀を教える事になった。ようやく置物になってた雀卓が意味を成す時が来たらしい。
「とりあえず適当に腰かけてくれ。」
「提督、ルールはどうします?アリアリで?」
「ん~、ベーシックな打ち回しを覚えさせるならナシナシの方がいいだろう。」
麻雀のルールの解らない人の為に解説すると、今由良と交わしたアリアリ・ナシナシという言葉は、鳴き(副露)の後に役牌と呼ばれる牌を3つ揃えて役を付ける「後付け」、鳴いて作るタンヤオと呼ばれる「喰いタン」を認めるかどうかという会話だ。当然ながら、全くのド素人の那珂と川内はきょとんとしている。まぁ今回はナシナシルールでやる事にした。
「それじゃあゲームスタート……っと。初回は俺が親でいいな。」
俺はそう言いながら自動卓の中央にある賽子を回すボタンを押す。カラカラと回る2つの賽子に合わせるように、綺麗に積まれた牌が卓の下からせり上がって来る。この牌の積む作業が無いだけ、手積みよりもかなり楽だよな。
「賽子の出目は6。俺から反時計回りに数えて6だから……、取り始める山は那珂の前にある山からだな。那珂、もう一回賽子回してくれ。」
一度目の賽子は4つある山から4人の手牌を取り始める山を決める為の賽子。取り始める山が決まったらその目の前にいるプレイヤーが再び賽子を振り、横に17牌ずつ積んである山のどこから取り始めるかを決める。
「提督、賽子は7だよ。」
「よし、それじゃあ那珂の目の前の山を右側から数えて7番目の所から4つずつ、俺から時計回りに取っていく。」
取り始める位置が決まったら、そこから縦2段の山を横に2つ分、4つずつ順番に自分の手牌として取っていく。全員に12牌ずつ行き渡ったら、親である俺以外のプレイヤーが1牌、俺が2牌取る。これが配牌。そして俺が不用な牌を1牌捨ててゲームがスタートする。
「1局目はルールを説明しながら勝負度外視で行くから、それぞれ牌を倒して相手に見えるようにしてくれ。」
俺の指示に従って、牌を倒して晒す3人。
「麻雀のルールは複雑なようでシンプルだ。3枚1組の面子を4つ、2枚1組の雀頭を合わせた14牌を揃えた奴の勝ちだ。」
だが、その中で相手との駆け引きや読み合いが生じてくる。
「でもね、ただ揃えればいいんじゃないの。…ホラ、隼鷹さんとかがよくトランプでポーカーやってるでしょ?」
「あ、ポーカーならアタシわかるよ!隼鷹さんとかに教わったから。」
なら、覚えは多少は早そうだ。ポーカー同様、麻雀にも揃える基本形に『役』がある。その難易度や組み合わせによってそれぞれ点数が割り振られている。
「その役を作りながら、牌を揃えていけばいいんだね。」
なんだ、アホの娘かと思ったら意外と賢いな艦隊のアイドル。
「面子の揃える形も2種類ある。同じ図柄を3つ揃える刻子(コウツ)と、数字の連番で揃える順子(シュンツ)だ。」
「へぇ~、色んな絵柄があるんだね。」
「うんうん、見てるだけでも飽きないかも。」
1~9の漢数字に萬という感じが彫ってある物をマンズ(またはワンズ)と言い、竹が複数本彫られた物が索子(ソウズ)、円形の図形が彫られた物を筒子(ピンズ)と呼び、それぞれ1~9までの数字が4牌ずつある。
「ねぇねぇ、東とか北とか書いてあるのは?」
「それは字牌だ。数牌とは少し違う扱いだから、後で説明する。…さて、基本的な流れとしてはゲームがスタートしたら俺が切ったら反時計回りの次……つまり那珂が山から牌を1つ持ってくる。」
「どこから取ってもいいの?」
「いや。配牌で取った続きからだな。その半端になってるトコから1つ取るんだ。」
那珂のツモった牌は七萬。手牌には六萬と八萬があった為、これで一面子完成。そして不要な牌を1つ捨てる。
「那珂ちゃんが牌を捨てた時(ホントは提督が捨てた時でもいいんだけど)、自分の手牌に那珂ちゃんが捨てた牌で面子が出来る人は『鳴く』事が出来ます。」
刻子が出来る場合はポン、順子が出来る場合はチーを宣言して鳴く。もう1つ特殊な鳴きもあるが、ここでは説明を省く。
「あ、じゃあその四筒ポン!」
鳴いたのは那珂の向かいにいる川内。鳴いた牌は自分の右側に寄せておく。川内が捨てた所で、鳴いた際のルールを説明。
「鳴いた奴がいた場合、そいつの次の人間にツモ番が回る。……つまり、由良のツモ番が回らずに俺に回ってくるって事だ。」
「え~!?何それズルくない!?」
真っ先に反応したのは那珂。仕方ねぇだろうが、そういうルールなんだから。それに、上級者の中には相手のツモを妨害する為に多少自分の手を安くしても鳴いてツモを飛ばす、なんてテクニックを使う人もいる。こういうルールが存在する事によって、麻雀は様々な場面で幾重にも読み合い、駆け引きが生まれるのだ。
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