真田十勇士
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巻ノ六十八 義父の病その六
「それに惑わされ溺れてじゃ」
「身を滅ぼしますか」
「そうしたものじゃ」
それが欲だというのだ。
「だから人は欲を知りな」
「多くのそれは求めぬ」
「そうあるべきじゃ」
「だからですか」
「天下なぞとんでもない」
それこそというのだ。
「わしはそう思う」
「左様ですか」
「関白様がおられる」
家康もこう言うのだった。
「だからな」
「殿は今でよいですか」
「そう思っておる」
「左様ですか、しかし」
「江戸はか」
「実によい場所なので」
「あの地におってか」
家康もこのことについては応えた。
「そのうえで」
「治められることはいいことです」
「そのことはわかった」
家康もこう返した。
「ではな」
「はい、江戸におられて下さい」
「まさかあの地がそこまでよいとはな」
「思いも寄りませんでしたか」
「実際にそうじゃった」
「そうですか、しかしです」
江戸はというのだ。
「守りでも風水でもです」
「よくてか」
「大きな町も築け」
「田畑もか」
「よいものが周りに出来まする」
「御主の言葉確かに聞いた」
家康は右手に持っていた扇子を動かした、それを空海に向けて言った。
「このこと江戸にいる者達にすぐに知らせる」
「それでは」
「わしは大坂、都から離れられぬ」
家康自身はというのだ。
「政があるからな」
「天下の政が」
「それ故に離れられぬが」
「それでもですな」
「城と町は築いていこう」
「田畑も」
「そうしようぞ」
こう天海に約束するのだった。
そしてだ、天海にこうしたことも言った。
「しかし御主はな」
「何でしょうか」
「崇伝とはまた違うのう」
家康が数年前に召抱えた南禅寺の住職であった彼とはだ。
「崇伝は政では謀を好むが」
「拙僧は、ですか」
「学問を好むのう」
風水やそうしたことをというのだ。
「内の政を」
「内がしかとまとまってこそです」
「政だからか」
「そう考えていますので」
それ故にというのだ。
「拙僧はです」
「まずは内か」
「風水にしろ城にしろです」
「町や田畑もか」
「そうしたものから治めてです」
「国が成るか」
「そして戦もです」
それもというのだ。
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