普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
173 二回目の襲撃
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
バジリスクについて調べた日から明くる日。俺達三人は朝食の前にハグリッドの小屋に行き、〝最近ニワトリが襲われてないか〟と尋ねたところ、ハグリッドは驚いた顔をしながら肯定した。
―確かに最近ニワトリがよぅ殺されちょる。……で、なんでお前さんらがそんな事知っとるんだ?―
そんなハグリッドの疑問は誤魔化して、その後は居ないよりは居た方がマクゴナガル先生へと話を通しやすいだろうとハグリッドを引き連れて副校長室へ。……ちなみに、こちらから頼んでいる手前、ハグリッドの都合に合わせるのも忘れずに。
……ハグリッドは気が良かったのか──はたまたニワトリ殺しに頭を悩ませていたのか、その日の内について来てくれた。
「……と云うわけで──以上の点からアーガス・フィルチ管理人の猫を襲ったのはバジリスクであると予想出来ます」
ちなみに、マクゴナガル先生へと説明してみせた根拠は…
〝バジリスクの即死の魔眼は不完全に作用した場合対象が石化してしまう事〟
〝アニーが〝蛇語遣い(パーセルタング)〟だという事〟
〝ニワトリが惨殺されている事〟
以上の三点で、図書室で写したバジリスクの生態と小屋で撮したニワトリの惨状をマクゴナガル先生へと提出して、アニーが〝蛇舌〟だと云う証拠はマクゴナガル先生に蛇を魔法で呼び出してもらい、アニーと実際に会話させて補填した。
「マクゴナガル先生、確かにこの三人の言う通り、数日前に小屋のニワトリが惨殺されてますだ」
「……ハグリッド…。……判りました。いくら状況証拠と云えど、ここまで論理的に説明されたら頭ごなし否定するわけにはいきませんね」
ハグリッドを連れて来た甲斐があったもので、マクゴナガル先生俺、アニー、ハーマイオニーの三人が思っていたよりも、早く納得してくれた。……思わず顔を見合わせてしまったのも仕方のないことだろう。
「で、貴方達三人は私にどうしろと?」
しかしマクゴナガル先生は頭ごなしに否定しないだけで、まだ俺達の陳情を信じきってはいないようだ。〝話半分〟とはよく云われているが、今のマクゴナガル先生の感じは不信3割としたところの〝話三割〟と云った感じだ。
「ミセス・ノリス──フィルチ管理人の猫が石になっていた当時の現場の足元は、誰のイタズラかは分かりませんが水浸しになっていました。それで水面に写ったバジリスクの眼を見て猫は石化した可能性が高いでしょう」
「……そういう可能性もありましょう」
「丁度良いタイミングと云うべきか、不幸中の幸いと云うべきか、今はダンブルドア先生も仰っていたように、スプラウト先生が〝解呪の薬〟のもととなるマンドレイクを飼育なさっています。……ですので、最悪石になっても取り返し(リカバリー)はききます」
まず俺が意見を述べれば、マクゴナガル先生は〝可能性の一つ〟として受け入れ、アニーが俺の言葉を継いだ。……そして矢継ぎ早に、次はハーマイオニーが口を開く。
「……つまり私達は、マクゴナガル先生には、この──〝バジリスクのレポートの配布〟と、〝ホグワーツの曲がり角に鏡を設置〟。それから、〝手鏡を肌身離さず携行するように〟と、周知して欲しいのです」
「……判りました。ではその様に周知しておきましょう」
マクゴナガル先生はハーマイオニーからのそんな提言に数秒時間をおき鷹揚に頷く。時間が空いたのは、恐らくだがリスクやら手間やら何やらを天秤にかけたからだろう。
(……暫くはこれで良いか…)
〝とりあえず〟マクゴナガル先生から聞きたかった言葉が聞けたので、俺達四人はいそいそとマクゴナガル先生の部屋から退室した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
誰もバジリスクに襲われる事なく時は過ぎて11月の上旬となる。かかりきりだった〝疑似不老薬〟も、予定していたより多少の遅れはあれど、無事に納得出来るボーダーラインにまでもっていけた。
……〝疑似不老薬〟をハーマイオニーとアニーに御披露目した時にハーマイオニーから「これ〝命の水〟じゃない! こんなもの開発したのがバレたら~~」──と大層驚かれたが、今のところは俺、アニー、ハーマイオニーの三人で飲み回すつもりしかないので、ハーマイオニーの諫言はハーマイオニーには悪いが馬耳東風とさせてもらったり。
閑話休題。
その情報がもたらされたのは〝グリフィンドールVSスリザリン〟と云う試合を同寮の生徒とヘソを噛む様な思いをした──フリをしながら観戦した翌日の事だった。
その朝のグリフィンドール寮の談話室は、数日ほど貼られていた一年生に対するクィディッチの案内以上に騒がしくて。起き抜けの地味に働いていない頭だったので〝何事か?〟と思ったが、そんな疑問も直ぐに氷解する。
……珍しい事に、マクゴナガル先生がいたのだ。
「……おはようございます。どうやら全員揃ったようですね」
厳めしいマクゴナガル先生の口調に、マクゴナガル先生の口から〝これから語られるであろう内容〟を予感したのか、グリフィンドール──いっそホグワーツ一のお調子者と名高いフレッドとジョージですら口を閉じる。
そしてマクゴナガル先生は静かになったのを確認すると、徐に手に持っていた巻物を開き、それに書かれているであろう内容を訥々と口にしていく。
「昨晩ハッフルパフ寮の4年生が〝バジリスクと思わしき怪物〟に襲われました」
「「「「「っ!!」」」」」
マクゴナガル先生からの言葉が紡がれて、直ぐに皆の顔に戦慄がはしりジニーを始めとした一年生の面々──と、ネビルなどの生来からしつ気が強くない生徒はその顏を土気色に染める。
……と、そこでマグル生まれだと云う襲われた生徒と同じ、4年生のアニエス・ウィッシュアートがおずおずと口を開いた。……その表情はまるで当たって欲しくない宝くじの当選結果待っている人の様だ。
「……先生、ハッフルパフの誰が襲われたんですか?」
「襲われたのはクェーサー・ジムシーです」
「ああ…」
マクゴナガル先生が「……ミス・ウィッシュアートにはお辛いでしょうが」と付け足す前にその生徒と仲が良かったらしいアニエスはその場に崩れ落ちる。……しかし、俺はアニエスには悪いがある種の安堵感と──矛盾しているがある種の焦燥感とある種罪悪感があった。
(……その内クェィサー・ジムシー某には迷惑料として何か贈っておこう。何を贈るかは、アニエスに訊けば良いしな──)
思考を一旦切り替えようとした時、マクゴナガル先生は自然に固まっていた、俺達いつものメンバー──俺、アニー、ハーマイオニーの三人を目配せをしてから談話室から退室していった。
………。
……。
…。
マクゴナガル先生が談話室から退室してからは、やはりと云うべきか談話室はあれやそれやと喧騒に包まれ、俺達三人も大きな輪から外れたソファーで膝を寄せあっていた。
……ちなみにある程度立ち直ったアニエスにクェィサー・ジムシーが喜びそうなお見舞いを〝間接的にだけど助けてもらった事がある〟──等と嘯きながら訊ねたところ、どうにもクェィサー・ジムシーはカエルチョコのオマケのカードに目がないらしいので、カエルチョコを1ダースほどプレゼントしておくことに。
閑話休題。
「……結局、〝継承者〟って誰なのかしら? ……家柄だけならマルフォイなんだろうけど…」
「マルフォイって〝蛇語遣い(パーセルマウス)〟かな?」
開口一番にハーマイオニー。しかしその言葉には疑念が込められていて、ハーマイオニーもまたマルフォイがバジリスクを操れるとは思っていないのだろう。
「……魔法で蛇を呼び出してけしかけさせれば一発で判るんだけどな──」
(あれ? ……ちょっと待て)
「ロン?」
「……悪い、アニー。ちょっくら──えーと、そこらに蛇を呼び出してくれないか?」
……そこで〝ある可能性〟を思い立つ。それを検証するためにソファーから立ち上がり、アニーに軽く開けた場所を指定して、アニーとハーマイオニーの胡乱な目線をスルーしつつ杖を抜きながら向かう。
「……? 別に良いけど…」
――“蛇出でよ(サーペンソーティア)”
「いきなりアニーに蛇なんか出させてどうしたの?」
「いや、ちょっとした考察の検証だよ」
そんな風にハーマイオニーの疑問に取りあいながら、アニーに呼び出してもらった蛇に、更に──場所が場所だし使う呪文が使う呪文なので無言で魔法を掛ける。
――“服従せよ(インペリオ)”
俺が蛇へと掛けたのは〝服従の呪文〟。すると俺に牙を剥いていた蛇は丸められたホースの様な体をとったのを確認すると、とある命令をする。
「〝アニーの言うことを聞くな。〟……アニー、この蛇に何か命令してくれ」
「……ああ、そういうことね。判ったよ──」
アニーは俺のしたかったことが判ったようだ。蛇に──やはり場所が場所だし、理由が理由なので小声で、相変わらずのしゅーしゅー声で話しかける。
……アニーが蛇へなんと話しかけたかは判らないが、蛇はうんともすんとも云わずに丸まったまま大人しくしている。
――“消えよ(エバネスコ)”
「……ボクの予想が間違っていなきゃだけど、今のって〝服従の呪文〟だよね」
俺が蛇を消すと、見計らっていたかのようなタイミングアニーがそう溢す。
「まぁな。……これで〝蛇語遣い(パーセルタング)〟じゃなくてもバジリスクが操れる可能性が高いことが判明されたわけだ」
「……ちょっと待って、〝服従の呪文〟って凄く高度な呪文だったはずよ。それが二年生になんか使えるのかしら」
「……現にここに三人居るわけだが」
「私とアニーは例外よ。だってロンに──とっても優れた魔法使いに指導してもらえている上に、〝別荘〟と云うとてつもなく大きなアドバンテージがあるもの」
「……地味に恥ずかしいからやめてくれ」
地味にこっぱずかしい事を言ってくれるハーマイオニーに悪態を着きながらそう断るが、どうしても格好はつかない。
「……ロンの意外な一面が見れたわね」
「ふふっ、それにしても──マルフォイに蛇をけしかけられるタイミングが有ればいいね」
そんな誰に投げ掛けたでもないアニーの呟きが実現されたのはそう遠くない未来だった。
SIDE END
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