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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  172 ≪毒蛇の王≫


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

ミセス・ノリスが襲われて数日。ホグワーツの図書館からは大方レイブンクローの生徒だと思うが──〝【秘密の部屋】に関する記述が有りそうな本〟は片っ端から借りに出されていた。

……が、しかし、俺達にはそんな事はものとしなくても良い〝大きなアドバンテージ〟が有る。

「……〝在ったり無かったり部屋〟って普通にバランスブレイカーだよな…」

「どうしたの、ロン?」

「……なんでも無いよ」

俺の煤けた呟きはアニーには聞こえなかったようで。

当然(?)の如くハーマイオニーは〝在ったり無かったり部屋〟の応用を思い付き、図書館で本を借り出されるの諦めた俺達は〝【秘密の部屋】について記述されている本がある部屋〟にハーマイオニーを先導に入った。

「……【秘密の部屋】【秘密の部屋】──あったあった、これだわ」

ハーマイオニーは一番近くにある本を取り上げると一心不乱に読み耽っていく。

するとどうだろうか、ハーマイオニーの探し方が巧かったのか、本の冒頭の方に記載されていたかは定かではないが、5分もしない【秘密の部屋】に関する記述を見つけた様だ。

そして、俺とアニーと情報を共有したかったのか本に記載されている情報をつらつらと読み上げていく。

「んっん! ……[彼のサラザール・スリザリンとゴドリック・グリフィンドールの間には〝マグル生まれの処遇について〟の確執があった]」

「へむへむ」

「ふむふむ」

俺とアニーは、朗読をするハーマイオニーに相槌を打っては続きを促す。……とは云っても、俺からしたら〝〝知識〟の再確認〟に過ぎないが…。

「この辺は省略するとして、次はここら辺ね。……えーと──[(やが)てサラザール・スリザリンは他のゴドリック・グリフィンドールを除く──ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクローとも(たもと)別つ事となった]」

「ほむほむ」

「ふむふむ」

ハーマイオニーは蛇足に思ったであろうページを飛ばしては、更に記述を読みあげていく。

「次で最後ね。……[サラザール・スリザリンは「いずれ私の遺志を継ぐ者が〝私の部屋〟に隠されし脅威を奮うだろう」ホグワーツを出る直前にそう言い残した]──だそうよ」

読み上げたハーマイオニーはどこか得意気に本を閉じる。……一番最初に声──と定義するには小さすぎる呟きを漏らしたのはアニーだった。

「……〝スリザリン〟〝ボクにだけ聴こえる(こえ)〟〝どでかい蛇〟──そして〝石化〟…」

「……アニー…?」

(……もう辿り着けるか?)

いきなりぶつぶつ、と呟き出したアニーを(いぶか)るハーマイオニー。……それくらい現状のアニーは不気味で、そんなハーマイオニーの心配そうな声が聞こえなかったのか、アニーはまだ思考に没頭していく。

……そして〝あーでもない〟〝こーでもない〟と頭を悩ませていたアニー。……そして数秒して喉の奥に引っ掛かっていた魚の小骨が取れた時の様な表情で〝その答え〟を口にする。

「……≪毒蛇の王≫──バジリスク」

(サブカル知識持ちもやっぱりバランスブレイカーだよな…)

昨年の“賢者の石”についてもそうだったのを思い出す。……それに加え、去年フラッフィーと遭遇してからケルベロスのギリシャの怪物について色々浚(さら)っていたので、それも関係しているのかもしれない。

「ハーマイオニー、ロン、バジリスクだよ多分。……二人の意見も聞きたい。それに確信も欲しいから図書室に行こう」

「……どういう事か説明してくれるのよね?」

「ハーマイオニーは確かボクが〝蛇舌(パーセル・タング)〟だって事は知ってたよね」

「……ええ。……とっても驚いたもの。覚えてるわ」

在りし日に魔法で出した蛇といきなり会話しだしたアニーを思い出したのか、ハーマイオニーはアニーの確認に神妙な顔で頷く。

「……あ、なるほど。……そういえば、ロンも確か〝大きくて長いモノ〟がホグワーツを這いずり廻っているって言ってたし」

「……まぁ、な。範囲が範囲だから、がっつり眠るには〝別荘〟に行かなきゃならんのは考えものだけどな」

〝気配察知〟の範囲内を、俺自身が〝敵性生物〟と認識している生き物が──敢えて表現するなら、〝ぞりぞり〟、と動いているのが察知出来てしまうので、その嫌悪感たるや相当のものだ。

「やっぱり二人とも凄いわ」

ハーマイオニーはアニーの説明で得心がいったのか、また更に頷く。……ハーマイオニーは俺が〝気〟をよむことが出来る事までは──〝仙術〟について説明するのが難しいから、話していないが、俺が〝色々な気配〟に敏い事は知ってるので、全部が全部を改めて説明する必要はない。

「そう。だから図書室に行こうって話」

「じゃ、行こうか」

「ええ、行きましょう」

俺達三人は意気揚々と図書室に向かった。……〝在ったり無かったり部屋〟を出た瞬間、態々(わざわざ)図書館に足を運ぶまでも無い事に気付くのだが、それはご愛敬だろう。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

〝バジリスクについて記述されている本がある部屋〟に入って今度は手分けをして探す事に。またもや直ぐに──とは、いかなかったが、アニーの持ち寄った本で漸くバジリスクについて詳細な記述を見つける。


――――――――――――――


M.O.M分類 XXXXX

≪毒蛇の王≫という別名を持つ緑色の大蛇(雄は頭部に赤い羽毛が生えている)。体長は最長で15メートルにもなる。

バジリスクの最大の特徴は黄色の眼であり、この眼を直視した者は即死、間接的に目を見た者は石化してしまう。

記録に残る最初のバジリスクはギリシャの闇の魔法使いでパーセルマウスの≪腐ったハーポ≫に飼育された。ハーポが実験を重ねた結果、ヒキガエルの下で孵化した鶏の卵から、異常なまでに強力な力を持つ巨大な蛇が生まれる事を発見した。

バジリスクを創り出すことは中世には禁じられたが、バジリスクは非常に長命なので、創り出すことが禁じられた後も長くこの世に存在し続けていたと思われる。

〝最初のバジリスク〟、または〝最古のバジリスク〟だとされている≪腐ったハーポ≫のバジリスクは900年生きたとの記録がある。

また、目撃例のデータとしてはバジリスクは400年間イギリス国内で目撃されていない。

蜘蛛はバジリスクを天敵とし一目散に逃げ出す。また、その一方で雄鶏が時をつくる(こえ)を大層嫌う。


――――――――――――――

「……ほとんど確定ね」

「弱点──と云うより、苦手なのは〝雄鶏の〝時をつくる聲〟〟…ね。……これ、多分朝一番のニワトリの鳴き声だよね」

「多分そうだろうな。……それにしてもバジリスクか…。ヤバいな」

何しろ蛇には〝ピット器官〟が──云うなればサーモグラフィよろしく〝温度〟で標的の位置を探せる器官備わっている。……バジリスクにだけピット気管が備わっていないなんてことは考えにくい。

……しかしそこで、フォークス──ダンブルドアが飼育している不死鳥に、バジリスクが即死の魔眼を潰された後を思い出す。

(……でもそういや、リドルは〝〝熱〟で見つけろ〟なんて言ってなかったよな…)

リドルはアニーと同じく〝蛇舌(パーセル・マウス)〟だ。……そうなれば、トムが蛇について調べてないと思えないので、当然の事ながら〝ピット器官〟についての知識もあっただろう。

……そうなると、希望的観測にもなってしまうが──仮説が立つ。

(……もしかしてバジリスクには〝ピット器官〟が無い…?)

「……ロン、どうしたの?」

「……いや、バジリスクに〝ピット器官〟があったらかなり厄介だなぁ、と思っただけだよ」

どうにも考えこみ過ぎていたようでハーマイオニーに心配される。

しかし俺の根拠の無い希望的観測で二人の思考を決定付けたくなかったので、適当にはぐらかす。……そして〝ピット器官〟の事が抜け落ちていたらしいアニーと、そもそも〝ピット器官〟の存在すら知らなかったらしいハーマイオニーはそれぞれまちまちなリアクションを見せる。

「あちゃー、そういや蛇には〝それ〟が有ったか…」

「〝ピット器官〟?」

「〝ピット器官〟。……ハーマイオニーにも判りやすく云えばサーモグラフィみたいなものかな」

「……更に厄介な事に、よしんば〝ピット器官〟に対処出来たとしても、蛇は嗅覚が鋭い」

「………」

「………」

俺がトドメを刺す様に言えば二人は黙りこくってしまう。……数秒ほど重い雰囲気が流れて、ハーマイオニーがさも〝お手上げだ〟と云った表情で口を開く。

「……ねぇ、二人とも、これもう私達の手には負えないわ。……先生方にお伺いたてましょう」

「……それが良さそうだね」

「……それがベターな選択だろうな──その前にハグリッドのところに顔を出してニワトリの無事を確かめる必要もあるけどな」

重い口調でのハーマイオニーからの提案は間違いなくベターなものだった。……そもそも、結果論であるが──バジリスクがのさばる校内で死傷者ゼロで解決出来た【ハリー・ポッターと秘密】の幸運さの度合いがおかしい。

普通は、彼の≪嘆きのマートル≫──マートル・エリザベス・ウォーレンの様に命を散らしてしまうのが普通なのだと、バジリスクについて調べれば調べるほど痛感してしまう。

(やっぱこうなると、“有言実行(ネクストオネスト)”で〝テコ入れ〟しておいて正解だったか──いや、まだまだ〝テコ入れ〟する必要があるな)

―今年の【ホグワーツ魔法魔術学校】では死者は出ない―

……などと今年に起こるだろう事件に干渉しているが、それは結果論的にだからであって――そのまた胡座(あぐら)をかいていてその未来に辿り着けるとは思っていない。まだまだ介入する余地はある。

(……アニーを〝頭〟に、注意を喚起させる必要があるな)

更に忘れてはいけないのが、俺は──ロナルド・ランスロー・ウィーズリーは表立って動いてはいけないのだ。俺が下手に動けばジニーが〝日記〟に色々と(つまび)らかに書いて、リドルに報告してしまうだろう。

そこでアニーは思い出した様にその疑問を口にする。

「……でもどうやってバジリスクはホグワーツ中を這っているのか──あ、パイプが有ったか」

「それよ!」

アニーの自問自答のハーマイオニーもが反応する。今まで足りていなかったピースが嵌まった様な表情だ。

(……至急コンタクトレンズ型のマジックアイテムを作って配らせる必要があるな)

〝疑似不老薬〟の開発が遅れてしまうが、〝疑似不老薬〟は火急の案件ではないため、ホグワーツの安寧選ぶ。

その後は、今度こそ〝在ったり無かったり部屋〟から出てグリフィンドール寮へと帰った。

SIDE END 
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