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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  168 セストラル


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

今日の日付は1992年9月1日。……俺、アニー、フレッド、ジョージ、パーシーの新学期が開始される日である同時にジニーのホグワーツへの入学日である。

現在は【隠れ穴】から【キングズ・クロス駅】への道中だがフレッド、ジョージ、ジニーが交互に順々に忘れ物をするので、時間はギリギリ。……他の皆のフラストレーションもそろそろ溜まり始めていた。

(……ちょっくら考えでも詰めようか…)

車(フォード・アングリア)には〝検知不可能拡大呪文〟が掛かっているとは云え、手持ち無沙汰なのも確か。……暇潰し代わりに脳内で〝ホグワーツに着いたら何をするか〟を纏めながら、色々と想起していく。

対外的に〝有名人(アニー・ポッター)〟が存在していない【ダイアゴン横丁】での買い物は、おおよそ(つつが)無く終わった。……母さんにアニーの事を説明したりするのに労力を掛けたがそれもご愛敬。

……しかし、やはりと云うべきか、【フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店】のロックハートのサイン会ではマルフォイ家の親子に絡まれたり、ルシウス・マルフォイがジニーの荷物に〝日記〟を紛れ込ませたり──と、色々あった。

〝おおよそ〟とな不穏当な言葉(ワード)が付いている理由は、そこに起因している。

確かに【ダイアゴン横丁】での買い物とロックハートのサイン会は問題無く終わったが、ルシウス・マルフォイはちゃっかりしっかりと、ジニーに〝日記(ことしのそうどうのもと)〟を托卵していったのである。

(……やっぱり、〝流れ(げんさく)〟に身を任せるしかないかな…)

ヴォルデモートの──と云うか、〝分霊箱(ホークラックス)〟を破壊するためにも、〝バジリスクの牙〟か、バジリスクの毒を吸わせた“ゴドリック・グリフィンドールの剣”が必要だ。

……ジニーでなければならない必要も無いが、ルシウス・マルフォイは手ずからジニーに托卵しているので、敢えてルシウス・マルフォイの奸計(かんけい)に乗るのもアリだと思っている。

(……ん…? ……待てよ…?)

そこでふと〝とある事〟を思い出す。

(……そういや、〝マグル保護法〟を制定したのは父さんだったな──いや、さすがに〝それ〟は無いか)

〝さすがに〝それ〟は無い〟──とは思いたい。……しかし、改めて考えてみれば、〝可能性の一つ〟として頭の片隅に置いておくには充分な推論だった。

……〝〝マグル保護法〟を制定した人間の娘であるジニーがほぼ会敵時ほぼ即死確定レベルの怪物をマグル生まれにけしかける〟──なんて状況が、〝ほぼ確定された未来〟として想像出来る。……〝知識〟的な意味で。

(……成る程、笑えんな)

そんな状況になったら、父さんとルシウス・マルフォイの関係性を(かんが)みるに、ルシウス・マルフォイは喜んで突っついてくるだろう。

高速に乗る直前、急いでジニーの〝日記〟を【隠れ穴】へと取りに帰る事になり──やっと皆の荷物は完璧となったが、時間はすでに(いた)逼迫(ひっぱく)している。

……父さんは時計と母さんを交互に見ては…

「なぁ、モリー母さん。……ここらでちょっとした提案が有るのだが…」

「アーサー、飛ばしちゃだめよ」

「雲の上に出るまではこの透明になれるボタン──〝透明ブースター〟を使う。空路を往けば10分もあれば到着する。……大丈夫、マグルは気付かないさ」

母さんもこのままでは間に合わないを気付いているのか、(やが)て父さんの説得に折れた。……フォード・アングリアが空中を舞う事になる数分前の事だった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

フォード・アングリアが空中に上がってから十分程度で【キングズ・クロス駅】に到着した。……大体善意で動いてくれているドビーには悪いが、柵への仕掛けはドライグの能力で〝透り〟抜けさせてもらった。

先に柵を越えたフレッドとジョージは、とっくにリー・ジョーダンと合流していることだろう。

「……あー、空席は見当たらないな」

「だね…」

「ごめんなさい、私が〝日記〟を無理に取りに帰ったりしなければ」

「それは言いっこ無しだよ、ジニー」

「……〝後から母さんにふくろう便で送ってもらう〟──そんな、簡単な選択肢も思い浮かばなかった俺達も同罪だよ」

落ち込むジニーを、アニーと俺で何とか励ます。……時間が時間だったので、一通り見た感じ──列車の(コンパートメント)には空きが無くて途方に暮れているのが現状だ。

(……この気配は…)

ここまできて今から散り散りになるのもアレだったのもあり、どうにか三人分入れてくれそうなコンパートメントを探す為に列車内を練り歩いていると、ふと、〝覚えのある気配が在る〟コンパートメントの前に辿り着く。

中から感じられる気配は〝2つ〟。……それらの気配は俺のイタイ思い込みでなければ、友好的な人間だ。

「「……?」」

アニーとジニーはいきなりコンパートメントの前で立ち止まる俺を(いぶか)るが気にせずノック。

――「どうぞ」

「……そういうことか」

コンパートメントの中から聞こえた声にアニーも覚えがあったのか、ぽつり、と溢す。……コンパートメントと通路を区切っているドアを開ければ、そこには覚えのある人物──ハーマイオニー・グレンジャーとネビル・ロングボトムが居た。

「アニー、ロン──」

「ロン、アニー──」

「「……と、誰?」」

ハーマイオニーがアニー、俺の──ネビルが俺、アニーの順に姿を各々に確認すると、ほぼ同時に二人の視線はジニーへ向かう。

「ジネブラ・ウィーズリー。妹だ。……ほらジニー、話しを聞かせたことがあるだろう? 女子の方がハーマイオニー・グレンジャーで──男子の方がネビル・ロングボトムだ」

「はじめましてミス・グレンジャーにミスター・ロングボトム。……ジニーって呼んでね」

「よろしくね、ジニー。ハーマイオニー・グレンジャーよ、ロンとは仲良くさせてもらってるわ。……私もフランクに〝ハーマイオニー〟って、呼んでちょうだい」

「僕はネビル・ロングボトム。……去年、君のお兄さんのロンにはお世話になったよ。……だからと云う訳でもないんだけど、僕のことも普通に〝ネビル〟って、呼んでね」

「ネビル、ハーマイオニー──二人ともよろしく」

………。

……。

…。

楽しい時間が早く過ぎる現象を何と云ったかは定かではないが、五人で和やかに過ごせたコンパートメントでの時間はあっという間に経過して、プラットホームに着いた時には夜の(とばり)はもう降りきっていてもう真っ暗だった。

ジニーは他の新一年生と同様──去年の俺達同様、ハグリッドに(ひき)いられて違うルートでホグワーツに向かった。……この──〝馬車っぽい乗り物〟を見る限り、上級生は陸路を行くことになっているようだ。

〝独りでに動く馬車っぽい乗り物〟なんて魔法界では普通な事だと割りきっているのか──マグル生まれの二年生ですら〝馬車っぽい乗り物〟に意識を割いていないが、〝〝馬車っぽい乗り物〟を()いている生物〟は俺には見えている。

【幻の動物とその生息地】にも記述が在った、〝〝死〟を見て、本当の意味で〝(えいえんのわかれ)〟を理解しなければ見えない〟生物──セストラルだ。……種類は灰色な色合いからして──俊足のグレニアンだと予想出来る。

……俺は〝〝馬車っぽい乗り物〟を()いている生物〟──セストラルをできるだけ見ない様にしていると、くいくい、と横を歩いていたアニーから袖口を引かれる。

「ロン、〝あれ〟ってもしかして…」

「アニーにも見えているのか」

(……そういや、アニーはクィレルを殺した時意識があったか…)

小声で話すアニー。……そこでアニーはクィレルの〝死に様〟を見ていたのを思い出した。

「……もしかして、〝見えてない〟方が良い感じ?」

「かもな」

アニーは周囲のリアクションから、身の振り方を決めたようで、俺も賛成する。……〝セストラル〟が見えると云うことの重要性が判ってしまったらしい。

アニーは目立つし、俺には上の兄弟がいる。……なので、〝セストラルなんて見えていない〟と云う方が色々と無難だろう。

……しかし、そこで意外な人物が──ネビルがセストラルを見て、近くにいた俺、アニー、ハーマイオニーに疑問を投げ掛ける。

「……ねぇ、この──馬車を牽いている生き物って何だと思う?」

「「……っ」」

「ネビル、正気? 馬車は多分だけで魔法で動いてるの。……〝馬車を牽いている生物〟なんて居ないわ」

ネビルからの意外な疑問に、俺とアニーは息を詰まらせる。大層な驚きを見せたネビルのその反応からして──間違いなくネビルにもセストラルが見えているらしい。

……ハーマイオニーの辛辣な言葉に「嘘じゃない。僕、嘘吐()いてない」──と、実際に見えているのだろうが、ネビルは意固地になっている。……さすがに新学期早々から険悪なムードになるのもアレだったので、微力ながらネビルを援護する事に。

「……なぁネビル、〝その生き物〟の外見的特徴を教えてくれないか?」

「外見? えっと──まず色は灰色で、馬に近くて大きい翼が有るよ。あとは…」

「〝翼〟〝馬〟──と云う事はおそらく〝天馬〟ね。……それに〝灰色〟──ちょっと待って〝灰色〟って、もしかして、セストラルの〝グレニアン種〟…?」

〝さすがハーマイオニー〟と云うべきか、ネビルに見えている生物の正体に辿り着く。

「ごめんなさい、ネビル。……ネビルは嘘つきなんかじゃなかったわ」

ハーマイオニーはネビルを(あざけ)った事を素直に謝罪する。……そして、謝罪代わりなのかネビルに対して言いにくそうに〝セストラル〟について、簡単ながら講義する。

「……その馬──みたいな生物は、天馬の一種で〝セストラル〟と呼ばれているの。……で、そのセストラルなんだけどね──」

「この生き物──セストラルがどうしたの?」

「セストラルは〝〝死〟を見てなおかつ〝死〟を理解している者〟にしか見えないと云われているの。……ネビルに覚えは無い?」

「……そういえば、じいちゃんの最期を──もちろんばあちゃんも一緒だったけど、看取った事がある」

思い付いたようにネビルは答えるが、いつの間にやらしんみりとした雰囲気が俺達4人に到来する。……そこで口火を切ったのはアニーだった。

「……まぁ、ちょっと暗いムードになっちゃったけど、馬車に乗り込もう」

そんなこんなでセストラルが牽く馬車に乗り込み、ホグワーツへ向かう。……しんみりとした空気は、アニーのお陰で大分払拭されていた。

SIDE END 
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