普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
166 ウィーズリー家に訪問
SIDE アニー・リリー・ポッター
「そろそろ来るはずなんだけどねぇ…」
あのホームパーティ(笑)の日から数日が経過していた。
ドビーの悪戯の尻拭いをした方法は、ホイップクリームまみれになったリビングを〝払拭〟の呪文で綺麗にして、ホイップクリームとスミレの砂糖漬けは〝修復〟の魔法で直し、魔法を使ったのを見られたメイソン某やダーズリー一家には〝忘却魔法〟を掛けて、それでお仕舞いだ。
ちなみにボクの〝忘却呪文〟の後遺症で記憶があやふやだったメイソン某と商談の取り付けに成功したダーズリー一家は、現在マジョルカ島へと飛んでいる。……ボクを置いてだ。
更にちなみに、ここ数日の食事はフィッグさんのところで摂る事になっている。
……マジョルカ島に付いていって腫れ物を触れる様な扱い方をされるよりは、フィッグさんのところで猫談義をしている方が幾分か気楽だったので、皮肉をたっぷり込めた笑顔でボクを置いて行った三人には悪いが──寧ろボクからしたらそちらの方が都合が良かった。
――チリーンチリーン
「……来たっ!」
ここ数日間の事をつらつらと思い出していると、玄関のベルが鳴る。……一昨日、また夢で会ったロンが言っていた時間帯なので──恐らくだが、ウィーズリー家の人がボクを迎えに来てくれたのだろう。
「ロン!」
「久しぶり、アニー」
急ぎ足で一階まで降り、玄関のドアを開ける。……玄関の向こうには待ちわびていた存在が──ロンと、ロンの父親と思しき男性が居た。
「君がアニー・ポッター。……ロンから君の話は聞いているよ」
「はい、ウィーズリーさん。……で良いんですよね?」
「ああ、確かに私はアーサー・ウィーズリー──このロンの父をやっているよ」
ロンの父親──アーサー・ウィーズリー氏は、ボクよりずっと高いロンの頭をくしゃくしゃに撫でようとする手をロンに避けられながら、ボクの確信に近かった確認を肯定する。
「ボクもロンからミスター・ウィーズリーの話をいくらか窺っています。……なんでも、魔法省に勤めているとか…」
「ケチな職業だがね。……それと、〝ミスター〟なんてまだるっこしい敬称を聞くのは職場で充分だから気軽にウィーズリーおじさんとでも呼んでくれ──私もアニーと呼ばせてもらうからね」
「はい、ウィーズリーおじさん」
その後はフィッグおばさんの家にウィーズリーおじさんを連れ立って挨拶に向かった後は、用具と服の一式が入っているロンから昨年のクリスマスプレゼントで貰った──〝検知不可能拡大呪文〟が掛けられたバッグを持ち、ウィーズリーの空を飛べるらしい車(フォード・アングリア)に乗り込む。
……もちろんながら、アルビオンを解放する事と、ダーズリー一家相手に[この夏の間、大変お世話になりました。また来年にお会いしましょう]と云う──皮肉を込めたメモを残して行くのも忘れずに。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
日が沈むまで陸路を往ってから空を飛ぶ事となったウィーズリー邸への〝長距離飛行〟だが、車内には〝検知不可能拡大呪文〟が掛かっていたおかげか、過不足無い〝長距離飛行〟だったと云える。
……ウィーズリーおじさんはどうやら大層な〝マグルフリーク〟な様で、魔法界であまり使われていない電話などの話をすると、その度に大きなリアクションを見せてはそれをロンが宥めたりと云うシーンも有ったり…。
「お、見えてきた」
ところどころ、昼食などで休憩しつつ何時間も車に乗っていると、牧歌的な村の外れでフォード・アングリアは着地する。フロントガラスの向こうには、やはり牧歌的な──アルプスの山にでも在りそうな家があった。
ウィーズリー宅の前でフォード・アングリアが止まり、二人に倣う様に車外に出れば、牧草の香りが鼻孔を突き抜ける。……まずダーズリー一家は気に入らないだろう香りだ。
「ここは【隠れ穴】──私達の家さ」
〝継ぎ足し〟だらけなその家はホグワーツのお城みたいに豪奢は無けれど──ホグワーツのお城みたいな暖かさは感じられる。
……知らず知らずのうちに頬が弛みそうになっていたのを、ダーズリー一家で鍛えられた表情筋で堪えていると、ウィーズリー宅──【隠れ穴】から、恰幅の良い──まるで〝肝っ玉母さん〟みたいな様相の女性が出て来る。
去年【キングズ・クロス駅】で〝さわり〟程度だが会話したことがある。ウィーズリー夫人──ウィーズリーおばさんだ。
――「アーサー、〝どうだった〟──かなんて、聞くまでも無いわね」
「おお、モリー母さんや。アニーの話では、保護者のマグルの連中は、マジョルカ島にバカンスに行っているみたいだから、アニーは簡単に連れ出せたよ」
「まぁ、それはそれは…」
ウィーズリーおばさんは、ウィーズリーおじさんから目を外してボクを見ると、しかめられていた眉根を解きほぐす。
「こんばんは、長旅ご苦労様アニー」
「ウィーズリーおばさんとは改めて始めましてですね、夏休みの間この家でお世話になるアニー・ポッターです」
「まぁまぁ、礼儀正しい娘さんね。……でもそんなに固くならなくて結構よ? 狭い家かもしれないけれど、自分の家の様に過ごして結構だから」
自分の家──もといダーズリー家での過ごし方なら、他人の目を気にする蛇蝎の様な過ごし方をしなければならないのだろうが、ウィーズリーおばさんが言葉に悪意や皮肉はなく、純然たる善意だった。
〝知識〟としてボクのダーズリー家での待遇を知っているらしいロンは、苦笑しながらウィーズリーおばさんの言葉を、ボクが受け取りやすい様に言い換えてくれる。
「……まあ、難しく考えず〝田舎のお祖母ちゃんの家に来た〟──程度の感覚で過ごしてくれればいいさ」
「ロンの言う通り、何も無いところだけど、ゆっくりしていてちょうだい。……さぁ、入った入った夕御飯はもう出来ているから」
「モリー助かるよ、お腹がぺこぺこだったんだ」
車庫にひとりでに入っていくフォード・アングリアを見ながら、三人に続いて【隠れ穴】へと入った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ロンの妹のジネブラ──ジニーと友誼を結んだり、パーシーとロンとボクの三人で〝魔法使いの起源〟について討論したり、フレッドやジョージと箒に乗る練習をしたりしている内に瞬く間に数日が経過する。
【隠れ穴】でのここ数日間の生活は、大変すばらしいものだった。
……ちなみにハーマイオニーから届いた手紙には、ハーマイオニーは既に来期の勉強を始めている旨が認められていて、それをロン一緒に〝ハーマイオニーらしい〟と笑い合ったりもした。
閑話休題。
そんなある日、暫定的にボクが使える様に設えてもらっていたビル──ウィーズリー一家長男が使っていた部屋から階下に降りると、見覚えのある茶封筒を見掛ける。
「ほら、ダンブルドアは君がここに居る事もお見通しだったみたいだね」
ウィーズリーおじさんから渡されたのは、宛名の欄にボクの名前が緑色のインクで記入されているホグワーツからの手紙で、前年同様に〝9月1日に【キングズ・クロス駅】より出発〟する事と、必要な教材が記されていた。
……どうやらダンブルドア校長はウィーズリーおじさんの言うように、全て──かは判らないが、少なくともプリベット通りからオッタリー・セント・キャッチポール村にボクが来ていることくらいは、疾うの昔に知っていたらしい。
「どれどれ、今年の教材は…?」
ボクたちは5人は、一斉に手紙を開いていく。
――――――――――――――
【基本呪文集(二年生用)】ミランダ・ゴズホーク著
【泣き妖怪バンシーとのナウな休日】ギルデロイ・ロックハート著
【グールなお化けとのクールな散策】ギルデロイ・ロックハート著
【鬼婆とのオツな休暇】ギルデロイ・ロックハート著
【トロールのとろい旅】ギルデロイ・ロックハート著
【バンパイアとバッチリ船旅】ギルデロイ・ロックハート著
【狼男との大いなる山歩き】ギルデロイ・ロックハート著
【雪男とゆっくり一年】ギルデロイ・ロックハート著
――――――――――――――
「うわぁ…」
教材を見れば、その八割方がギルデロイ・ロックハート──同じ人物なので、思わず変な息を漏らしてしまう。
……ウィーズリーおばさんとジニー以外のウィーズリー家の面々の反応を見る限り、どうやらボクのリアクションは間違っていないようである。
どうにも、今年クィレルの代わりに入ってくる教師は大層なギルデロイ・ロック某著者マニアなようだ。……ロックハートの見てくれはそこそこハンサムなので、ちょっとしたファンらしいウィーズリーおばさんとジニーの頬が綻んでいるのを、隠しきれていないのを皆で生暖かく見守ったり。
「ロックハートの本は割高なんだよな…」
「なに、3セットもありゃあ全員分使い回せるさ」
「全部が全部を新品で買う必要も無いし──中古なら、なお安くすませられるしね」
ロン、フレッド、ジョージは今からでも買い物が億劫な様で、見るからにテンションを下げている。そんな三人をウィーズリーおじさんは同意したそうにしているが、ウィーズリーおばさんとジニーから胡乱気に見られているので頷くに頷けないのが現状だ。
……ちなみボクは〝ギルデロイ・ロックハート〟について思うところは無い。……〝特典〟の1つや2つ割いてまで追ってきているので、今更、殊更に云うまでもないが、いつもボクの心の奥底に居座っているのは〝升田 真人〟であり──〝ロナルド・ランスロー・ウィーズリー〟なのだ。
閑話休題。
ホグワーツからの手紙の他に、ハーマイオニーから〝水曜日、一緒に本を買いに行かない?〟と云う旨の手紙も来ていて、ウィーズリーおばさんがそれに便乗したのか、様に買い物をする日を水曜日に決定する。
ボクとロンは、ハーマイオニーの勉強の進捗状況を聞いて、〝やっぱりハーマイオニーらしい〟とお互い笑い合うのだった。
SIDE END
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