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真田十勇士

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巻ノ六十七 関白秀次その七

「武士として死ぬことが出来ます」
「そうか、ではな」
「武士としてですな」
「最後まで生きて死にたい」
 こう幸村に答えた。
「是非な」
「ではその様にです」
「励めばよいな」
「はい、それとなのですが」
 ここでだ、幸村は秀次にこうも言った。
「関白様は大坂には」
「あちらにはか」
「行かれることは」
「今はまだだがな」
「それでもですか」
「やはりよく、じゃな」
「行かれるべきと存じます」
 秀次に意見したのだった。
「やはり」
「そして太閤様とじゃな」
「よく会われてです」
「お話をすべきか」
「そう思います」
「政もじゃな」
「そうして太閤様と話をされて」
 政をというのだ。
「されるべきです」
「太閤様に意見をすることもか」
「時には必要かと」
「よいのか」
 幸村の今の言葉にだ、秀次は眉も目も鋭くさせた。そしてそのうえで幸村に対してあえて問い返したのであった。
「そうしても」
「そう思いますが」
「わしが太閤様に意見をしても」
「治部殿と刑部殿がおられます」
 石田と大谷、この二人がというのだ。
「この方々がです」
「そうじゃな、信頼出来る」
 この二人についてはむしろ幸村よりも秀次の方がよく知っていた。それですぐに答えることが出来たのである。
「あの者達はな」
「心からですな」
「では二人と話をしてじゃな」
「はい、太閤様ともです」
「お話をすべきじゃな」
「天下のことは」
「そうじゃな、あの者達がおった」
 石田と大谷、二人のことを思い出して言った秀次だった。
「天下には。それにわしの家臣達もじゃな」
「頼りにされてです」
「天下の政をすればよいな」
「そう思いまする」
「わし一人で太閤様に申し上げるのではなく」
「はい」
 まさにというのだ。
「治部殿、刑部殿もおられますので」
「二人の力も借りて」
「進められればよいかと」
「そうであるな、そして戦の時もか」
 武士として次の天下人としてだ、秀次はさらに言った。
「助けを借りるべきじゃな」
「お二人は戦でも頼りになります」
「それじゃ、よく治部は戦下手というが」
「忍城でのことからですな」
「あれは敵が強過ぎた」
 こう幸村に言うのだった。
「むしろな」
「はい、それがしもそう思いまする」
「そうじゃな」
「治部殿は優れた方です」
 戦の場においてもというのだ。
「ですから」
「戦の場でもじゃな」
「関白様のお力になります」
「刑部と共にじゃな」
「そう思いまする」
「わかった、では戦の時もあの二人と家臣達を頼り」
 ここでだ、秀次は。 
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