世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
Fate/stay night ~Encounter/morning call~
冬木市、衛宮邸
今この家の広い中庭にそうそうたる顔触れが集まっていた。
まずこの家の家主、衛宮士郎にそのサーヴァント、セイバー。
士郎の友人、遠坂凜にそのサーヴァント、アーチャー
さらには後輩の間桐桜、ライダーまでいる。
中庭で彼らが集まっている中心には一人の男がぶっ倒れている。
もうお分かりだろう。
蒔風である。
白目を向いて倒れている蒔風、一体何があったのか。
時は10分程前に遡る。
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「で、桜に叩き起こされて来てみたけど・・・何よこれ」
凜が言っているモノ。
この家の土蔵に集まった先程のメンバーがその一つの異常に視線を向けている。
それは蒔風がいつも使っているゲートだ。
だが開いているだけで変化がない。
「朝食を作ってたら歪みを感じ取ったんだよ。で、桜に呼びに行ってもらってオレはセイバーとこっち見に来たんだ」
「その時には(グー)もうこれがありました。凜、(じゅるり)これは一体なんなのですか?(ぐるぐる)」
凜が呆れ眼でセイバーを見、士郎に問い掛けた。
「・・・・・士郎、朝ごはんは?」
「あ?いや、まだだけど」
「はぁ・・・・・セイバーは食べてきていいわよ・・・・」
「!本当ですか凜?いえ決して士郎よりもご飯というわけではないのですが、ほら!腹が減っては戦は出来ぬというように・・・・」
そこまで一気にまくし立てたセイバーの肩をガッ、と掴みライダーがセイバーの至近距離で短く言った。
「行きなさい」
「はい」
セイバーが即答し、大人しくターン、猛ダッシュで食卓に向かう。
そのあとを桜がついていき、この場には四人が残される。
「それで凜。これは一体なんなんですか?」
ライダーがゲートを指差して凜に聞く。
「・・・・・なるほどね。士郎の感覚に引っ掛かるわけだわ・・・・結論から言うわね。これ、他の世界に繋がっているわよ」
「「「・・・・・・は?」」」
三人は耳を疑う。
異世界への移動はもはや魔術ではなく魔法の、第二魔法の領域だ。
しかも通じているのはパラレルではなく確実に違う世界だ。
そんなものがどうしてこんなところに開いたのか。
「んなもん私にもわからないわよ。でも、気をつけるに越したことはないわ。なにが出てくるかわかったもんじゃないし」
そこまで凜が説明したところで、壁にもたれて黙っていたアーチャーが口を開いた。
「ふむ、それはさておきマスター。来るようだぞ?」
「え?」
アーチャーが壁から離れ、凛の前に出る。
そしてゲートが輝き、そこからひとりの男が出てきた。
「ふぁ・・・・みなさん・・・・おはよぉございまふい・・・・・・」
眠気に満ちた瞳がトロンとして、半睡半覚状態の蒔風が出てきた。
茶色いカバーの抱き枕を腕に抱え、パジャマ姿でのそのそと出てきた。
その姿にあっけにとられる一同だが、ここで凛が甲高い声で蒔風に訊いた。
「あんた何者よ・・・・こんなところに現れて何するつもり!?」
「ふぃ?・・・ああ・・・ちょっと待って・・・・ここ冷たくて気持ちいー・・・・・」
そう言って土蔵の地面に横になってしまう蒔風。
凛がその蒔風にギャイノギャイノとまくし立てる。
「ちょっと!!寝てないで答えなさい!!!それから!!こんなとこで寝るな!!!聞こえてんでしょ?「ふぁい」じゃないわよ!!こっちは朝っぱらから叩き起こされてイライラしてんだからいい加減にしないとブッ飛ばすわよ!?」
「そんなに知りたきゃギャーギャー騒いでんじゃねえよこの野郎」
さっきまでの眠そうな声から一変、蒔風の声が唸った。
その声に全員が身じろぎ、ゾクリと何かを感じた。
「寝起き弱えのはこっちも同じだってのに無理やり叩きだされた俺の気持ちを考えろや・・・・消し炭にすんぞゴラ。ッたく死ねよもう・・・世界なんか腐って死んでしまえばいいんだ・・・・・・だからうっせえって言ってんだろうがぁ!!!!!!」
バゴウ!!!!
蒔風が跳ね上がって凛に向けて蹴りを放つ。
とっさにアーチャーがそれを弾き、凛を後ろに下げる。
「どうやら君の声が彼の癪に障ったようだぞ・・・・どうしてくれるんだ全く」
「知らないわよ!!ってかそんなこと私に言うなーーー!!!」
ウガー!!とアーチャーにまで当たる凛。
どうやら彼女もまだ眠かったらしく、ライダーが部屋まで連れて行くことになった。
残されたのは士朗とアーチャー。
目の前には寝起きで機嫌を損ねた蒔風
「・・・・・」
「・・・・・」
「「お前にまかす!!!!(ドカァ!!)なにすんだお前!!!」」
二人が同時に相手を突き出し、二人同時にスッ転んだ。
そうやってグチャグチャしている間に二人に影が降りる。
「こちとら低血なんだよ・・・そんなオレが寝起きいじられてどんだけイラついてっかわかるかてめえら!?」
「「知るか!!!」」
「しらねえだ?知っとけよゴラ!!!!知らねえとはてめえら何様のつもりだぶっ殺すぞぁ!!??」
ドッ、バフン!!!!
土蔵の扉から土煙が噴き出し、そこから志郎とアーチャーが飛び出、蒔風がそれを追う。
ギン!!ガガガン!!!ガギンガギン!!!!
アーチャーも士朗も投影魔術で木刀を出して応戦する。
相手の素性もわからないのにいきなり真剣で斬りかかるわけにもいかない。
だが蒔風はそんな二人に怒涛の猛攻を仕掛けて行く。
居間にて
「??桜、何処かで乱闘の音がするのですが?」
「(先輩とアーチャーがいれば何とかなるよね?)だ、大丈夫ですよセイバーさん」
「そうですか。桜、おかわりを」
「はいはい」
凛の部屋にて
「凛、落ち着きましたか?」
「うう・・・ありがとライダー・・・我ながら取り乱したわ」
「朝は大変ですからね」
「あいつもそんなんだったなら悪いことしたわね・・・」
「外で士朗とアーチャーが交戦しているみたいですが、どうしますか?」
「あいつらに任せれば大抵のことはどうにかなるでしょ」
バキバキ!!!ドカァ!!!
「むぅ・・・どうやら我々は丸投げされたようだ!!!!」
「はっは!!あんたも人望ねえな!!!」
「貴様はそれが自分に言ってることだとわかっているのか?」
「あんたと違って俺には信頼できるサーヴァントがいるからな!!!」
「そのセイバーはたった今十二杯めのおかわりをしているぞ」
「セイバーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「ん?何か聞こえ?」
「セイバーさん、ハイおかわり」
「おお、ありがとうございます桜。いやただの白米でもやはりおいしい」
「完全に見捨てられたな」
「なんでさーーーーーー!!!!」
「こっちも不本意だが、協力するしかあるまい!!」
「ちっ、しょうがない、今だけだかんな!!!!」
「ひょおおおおおおおおおおお!!!!!あれ?なんで暴れてんだっけ?」
だんだんと目が覚めてきた蒔風に、士朗とアーチャーが同時にその腕をとり、ブン投げようとする。
しかし
「ふんっ!!!」「せやあ!!!」
二人は壊滅的にタイミングをはずし、見当違いの方に蒔風の身体が飛んでいく。
そちらには衛宮邸、さらに言うなら障子がある。
そしてもっと言うならそこはセイバーが朝食をとっている居間だ!!!
ドガシャア!!!
そこに蒔風が突っ込む。
机の上に仰向けになっている蒔風の目がパチクリと開かれ、起き上がって全身の筋を伸ばした。
「あぁーーーー。寝起きは最悪だったけど、まあそれなりにすっきりしたな。さて、ここはど・・・・こ・・・・・」
蒔風が振り返った先にはセイバーがいた。
茶碗を持ち、今まさに箸でそれを掴もうとしている姿のまま固まっているセイバー。
しかし左手に茶碗は無く、前髪に双眸を隠して少し俯いてなんかのオーラを出しているセイバー。
頭にひっくり返った茶碗を乗せているセイバーが、蒔風に叫んだ。
「三人まとめて消え失せろッ!!!!よくも朝御飯を!!!!!!!!」
「ちょ、ま!!!」
「俺たちも!?」
「アイアス・・・間に合わん!?」
「最後の一杯をぉーーーッ!!!!!!!」
「「「だああああああああああああああああああ!!!!?????」」」
ゴゴォウ!!!!!
士朗とアーチャー、そして蒔風が黄金の光に吹き飛ばされる。
何か間違った一撃だったためか、吹き飛ばすだけでたいした威力は無かった。
それでも蒔風は庭の真ん中まで吹っ飛ばされて気絶してるし、士朗とアーチャーは茂みに頭を突っ込んでバタバタと暴れていた。
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そうして冒頭に戻る。
「どうしようか?」
「と、とりあえず中に運びます?」
「そうしよっか・・・・」
「セイバーは?」
「髪に付いた米を洗い落としに行ってる」
「そう・・・・・」
そしてみんなが綺麗な朝日を見、同時に想った。
『なんでさ・・・・ってかほんとに誰こいつ!?』
to be continued
後書き
アリス
「時系列とか、どのルートのラストですか?」
それは明確にはしません。
でも、聖杯戦争は終わってます。
ステイナイトとホロウアタラクシアの関係みたいな感じにみてください。
アリス
「じゃあサーヴァントはみんないるんですか?」
そうなりますね。
アヴェンジャーとハサンの方のアサシンはいませんよ。
アリス
「次回、目覚めて説明ゴー」
ではまた次回
別にあれを倒してしまってもかまわんのだろう?
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