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ブルーラブ

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第五章

「それで子供の頃からよく知ってるの」
「何か縁ね」
「世界って広いようで狭いから」
 それ故にというのだ。
「こうしたこともあるのよ」
「まさか彼が千夏の従弟さんだったなんて」
「奇遇でしょ、けれどこれも縁だから」
「まさかと思うけれど」
 今度のまさかは先程のまさかとは別の意味でのまさかだった。
「私と秋田川さんと」
「界人のこと嫌いじゃないでしょ」
「というかまだ何も知らないし」
「恋愛にはなの」
「まだね」
 どうにもという返事だった。
「何もないわ」
「そうなの」
「だから何も言えないわ」
「そうなのね」
「ただ、悪い人じゃないって感じはするわね」
「実際にいい子よ」
 従姉としての言葉だ、肉親として長い付き合いのある。
「あの子は」
「千夏がそう言うのならね」
「ええ、ただよね」
「そう、私はね」
 どうにもとだ、愛衣は言ったのだった。
「まだ彼のことを何も知らないから」
「そうなの」
「よく知ってからよ、だから今はね」
「毎日図書館に行くのね」
「お昼にね、そうするわ」
 こう言ったのだった、そのうえで。 
 愛衣はこの日も次の日も図書館に行って彼と会った、そして勤務している博物館では千夏から彼のことを詳しく聞いた。
 千夏から聞いた彼の話は図書館で自分で見ているものと同じだった、温厚で礼儀正しく真面目だ。好人物だった。
「ただ、外見はいいけれどね」
「それでもなのね」
「あの子結構どん臭いから」
 千夏は愛衣に彼のそうした一面も話した。
「運動神経は鈍いのよ」
「そうなの」
「もの静かでね」
 それでというのだ。
「昔からスポーツはしないから」
「だからなのね」
「そこは愛衣と同じね」
「インドア派ってことね」
「そうよ、それとね」
「それと?」
「読書と音楽鑑賞が趣味だから」 
 愛衣と同じくだ。
「海外文学が好きなのもね」
「ハヤカワ文庫の」
「そう、それはわかったわよね」
「ええ、図書館で最初に会った時からね」
「あの子のことはよく知ってるつもりだから」
 それでというのだ。
「いいことも悪いこともね」
「両方なの」
「知ってるから話すわね」
 彼の長所も短所もというのだ。
「愛衣が必要なら」
「私が教えて欲しいって言ったら」
「そうするわ、後ね」
「後?」
「彼彼女いないから」
 このこともだ、愛衣に話したのだった。 
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