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ピンクのサウスポー

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第二章

「水原か」
「まさかな」
「他は何処も指名していないな」
 十一球団全てだ。
「他の指名も全員阪神以外って言ってたしな」
「それで指名出来たが」
「しかしな」
「水原はな」
「どうなんだ」
「一位だしな」
「獲得出来るのか?」
「背番号はどうなるんだ」
 とかく議論が尽きなかった、この阪神の指名には。
 まず水原自身がどうするかだったが。
 水原は面長で高い鼻を持つ顔であった、睫毛は長く目は大きい二重だ。唇はピンク色で小さく黒髪は長く試合の時は後ろで団子にしている。背は一六八と日本女性では高身長で細い身体をしている。左のアンダースローでセットポジションから投げる。
 その水原の返事が注目された。
「大学行くんじゃないのか?」
「八条大学にな」
「成績もいいらしいからな」
「推薦貰える位だっていうし」
 それならというのだ。
「やっぱりな」
「大学行くだろ」
「いきなりプロとかな」
「やっぱり冒険だしな」
「果たしてどうなるか」
「行かないんじゃないか?」
 こうした予想も多かった、今回は流石に。
 そしてその水原の返事は。
「お願いします」
 つまり入団するということだった。
「必死に頑張ります」
 阪神に行く、水原は言った。これにだった。
 誰もがだ、唸った。
「入団するか」
「凄いことになったな」
「史上初の女性選手か」
「それか」
「そして背番号は」
 それはというと。
 阪神のフロントはまさにこれはという背番号を選んだ、それはまさにだった。
「まさにやな」
「サウスポーやし」
「その背番号か」
「それでいったか」
「二十八」
「江夏豊やな」
 阪神時代の彼が背負っていた背番号だ。
「十や十一は無理でもな」
「二十八か」
「ええ背番号やな」
「そしてその背番号背負ってか」
「やってくんやな」
「それだけ期待してるんやな」
 阪神側もとだ、ファン達も言う。
「水原にな」
「ほな水原はどうなるか」
「見ものやな」
「阪神はピッチャーはええ」
 伝統的にだ、ドラフトの上位指名はおろか下位指名もトレード加入も助っ人も活躍するチームである。如何に悪い時でも大抵はそうだった。
「ほな水原もな」
「やってくれるか」
「ストッパーとしての起用らしいけど」
「やってくれる」
「フロントも首脳陣も期待してるんやな」
 ファン達にはそれがわかった、水原は江冬達と共に入団会見を行って阪神に入団した、大学進学の話を蹴ってだ。
 キャンプに参加した、だが女性しかもうら若き十代なのでだ。
 寮ではなく自宅から通いキャンプでは一人だけ別のホテルに泊まっていた。とかくプライベートには気を使われていた。 
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